企業研修はどの階層から始めるべきか|ドラッカーに学ぶ成果を生む人材育成・研修のやり方

この記事でまとめたこと

企業研修はどの階層から始めるべきか|ドラッカーに学ぶ「経営層から」の理由

最終更新:2026年9月

「人材育成に本腰を入れたい。でも、経営幹部・部長・課長・係長・新人……いったいどこから手をつければいいのか」――。
そう迷っていらっしゃるとしたら、そのお気持ち、とてもよく分かります。

私がご相談をお受けする社長さんにも、本当に多いお悩みなんです。
「今いちばんやる気があるのは30代半ばの中堅層。でも、上の幹部はどうも頭が固い。さて、どこから始めよう」。
そんな声を、これまで何度もうかがってきました。でも、大丈夫です。順番さえ間違えなければ、組織は必ず動き始めます。

まず、結論からお伝えします。
企業研修・人材育成は、経営層(トップマネジメント)から始めるのが正解です。
そして、同じ階層の中では「変化に情熱を持つ人」から火をつける。この二段構えが、遠回りのようでいちばんの近道なんです。

なぜ、やる気のある中堅からではなく、トップからなのか。
その理由は、ドラッカーが説く「経営とは意思決定である」という原則にあります。順番に、一緒に見ていきましょう。


そもそも階層別研修とは? ―― 5つの階層

本題に入る前に、言葉を整理しておきます。
階層別研修とは、社員を役割・職位ごとの階層に分け、それぞれに必要な役割認識とスキルを学んでもらう研修のこと。
一般的には、次の5つの階層で考えます。

  • 新入社員(社会人・自社の基礎)
  • 若手社員(担当業務の遂行力)
  • 中堅社員(後輩指導・チームへの貢献)
  • 管理職(課長・部長=チームの成果と部下育成)
  • 経営層・経営幹部(役員=経営の意思決定と戦略)

どの階層にも、それぞれの役割があります。問題は、限られた時間と予算の中で、どの階層から着手するのが最も効果的かということ。ここで多くの経営者が判断を誤るのです。

なぜ「経営層から」なのか ―― トップから始めるべき3つの理由

組織改革や人材育成を始めるとき、着手すべきはトップからです。やる気のある中堅・若手から始めたくなりますが、それでは組織は変わりません。理由は次の3つです。

理由①:中堅から始めると、上が改革を潰してしまう

たとえば、やる気のある中堅の課長さんが研修で目を輝かせ、「古いやり方を見直して、新しいことに挑戦したい」と会議で提案したとします。
ところが、上の部長や役員がドラッカーの言う「イノベーション(古いものを計画的に廃棄し、新しい取り組みへ挑む)」をきちんと学んでいなかったら、どうなるでしょう。

「今までのやり方と違うじゃないか」「勝手なことを言うな」――。
こうして、せっかくの改革の芽は上から摘み取られてしまいます。下から火をつけても、上が消してしまうのです。

理由②:最終的な意思決定は、経営層が握っている

どれだけ現場が知識やスキルを身につけても、方針を決め、資源を配分する最終決定権は経営層にあります。
上層部が変化の必要性を理解していなければ、現場の学びは実行に移されません。
だからこそ、まず経営幹部がしっかり学び、そこから部長・課長・係長・主任・中堅・新人へと、上手に上から下へオーソライズ(承認・共有)していくのが正しい順番なのです。

理由③:経営そのものを、組織に「インストール」する必要がある

ここが、最も本質的な理由です。
ドラッカーは、経営(マネジメント)という体系を初めて世に示した人物です。
研修の目的は、単発の知識を配ることではなく、経営という考え方の型そのものを組織にインストールし、社長と一緒に経営を語れるマネジメントチームをつくることにあります。

その土台をつくれるのは、トップをおいて他にありません。
今の30代半ばの中堅が、10年後にその中枢を担う可能性は十分にあります。けれど、最初にインストールする相手は、やはり今の経営幹部層なのです。

ドラッカーが説く本質「経営とは、意思決定である」

なぜトップから始めるのか。その根っこにあるのは、私のコンサルティングの基本でもある一つの考え方です。
経営とは、経営に関する意思決定力である。

ドラッカーの原則にもとづく戦略的な意思決定――これは、グーグルやアップル、ユニクロ、セブン-イレブンといった一流企業が実際に経営へ取り入れてきたものです。
この意思決定の型を組織に根づかせれば、貴社もまた、戦略的な意思決定のできる企業になれます。

ただし、それはトップから整えていかないかぎり実現しません。
だから、経営幹部からスタートし、そこから下へ落としていく。研修の順序をこう考えると、すべての筋が通るのです。

着手するのは「どの人」から? ―― 262(2:6:2)の法則

階層(どの役職から)の話に続いて、もう一つ大切な視点があります。
それは、同じ階層の中で「どの人」から着手するかです。ここを外すと、どんなに順番が正しくても組織は動きません。

どんな組織にも、262(2:6:2)の比率があると言われます。

  • 上位の2割:言えばすぐ変わろうとし、自らやり方を革新し、新しいことに挑む層
  • 中間の6割:特に理由なく、上に言われたから・みんながやっているから、となんとなく動く層
  • 下位の2割:言ってもなかなか変わらず、最後は辞めるか、仕方なくついてくる層

では、どこから手をつけるか。答えは、圧倒的に上位の2割からです。
100人いれば20人。いえ、正直5名でも10名でもいい。そこが変わり始めると、その部下たちがまた影響を受けて変わり、やがて中間の6割が動き出します。

逆に、多くの経営者がやりがちなのが、下位の2割に目を向けてしまうこと。
「この人たちをどうにかできないか」とそこに力を注いでも、残念ながら成果は出ません。
組織を変革しようとするとき、いちばん弱いところに力を奪われてしまうと、かえって組織全体の力が衰えていくのです。
私自身、20名ほどの研修でも、常にトップの層に照準を合わせるようにしています。

誤解しないでほしいこと ―― 「人を活かす」との両立

ここで、一つだけ誤解を解いておきたいのです。
「上位2割から」というのは、下の人を切り捨てるという意味では決してありません。

ドラッカーの「人を活かす経営」の根っこには、すべての人に等しく尊厳があり、成果に挑戦する公平な機会があるという考えがあります。
それは、揺るがない前提です。
ただ、その仕事に情熱を持って取り組むかどうかは、人によって違う。だからこそ、着手の順番として、変わりやすい情熱ある層から火をつけていく。
これは人間性の優劣ではなく、あくまで「変化への情熱」の話なのです。

今日から実践できる、研修導入の4ステップ

では、実際にどう進めればいいのか。着手の順番を踏まえた、4つのステップをお伝えします。

①経営課題を明確にし、経営層の学びから始める

まず「自社は何を変えたいのか」という経営課題をはっきりさせる。
そのうえで、最初に学ぶのは経営幹部層です。ここで経営の意思決定の型を共有し、変化の方向をトップでそろえる。ここが揺らぐと、下がいくら学んでも実を結びません。

②上位2割の「変わる人」から巻き込む

全員をいっぺんに変えようとしないこと。
各階層で、変化に前向きな上位2割――5名でも10名でもかまいません――を先に巻き込み、成功体験をつくる。
彼らが変われば、その熱は自然と周囲へ伝わっていきます。

③上から下へ、順にオーソライズして落としていく

経営幹部→部長→課長→係長・主任→中堅→新人。
学んだ内容を、上の階層が承認しながら順に下へ落としていく。
この「上が理解している」という状態があってはじめて、下の階層の挑戦が潰されずに実を結びます。

④単発で終わらせず、仕組みとして定着させる

研修は、一度やって終わりでは長続きしません。
学んだ原則を日々の業務に落とし込み、続けて振り返る仕組みをつくる。
そうやってはじめて、経営の型が組織に根づいていきます。

よくある質問

Q. やる気のある中堅・若手から始めてはいけないのですか?

熱意のある層を巻き込むこと自体は正解です。ただし「中堅だけ」から始めるのは危険です。
上の経営層が変化を理解していないと、中堅の改革提案が「今までと違う」と潰されてしまうからです。
まず経営幹部が学び、そのうえで各階層の上位2割を巻き込む――この順番が、遠回りのようでいちばん確実です。

Q. 中小企業です。5つの階層すべてを研修するのは大変です。どこから?

すべてを一度にやる必要はありません。まずは経営層(トップ)から。
そして、各階層の「変わる上位2割」に絞って着手してください。
5名10名でも、そこが変わり始めれば波及していきます。限られた予算でも、順番さえ間違えなければ組織は動きます。

Q. 下位2割の人たちは、放っておいてよいのですか?

放っておくのではありません。すべての人に、公平に挑戦する機会と尊厳が保障されるべきです。
ただ、組織変革の「着手点」として、そこに最初から力を注いでも成果は出にくい、ということです。
上位2割が変わり、中間6割が動き出すと、組織全体の空気が変わり、結果として下位層にも良い変化が及んでいきます。

Q. 経営層から始めた場合、どのくらいで現場が変わりますか?

一概には言えませんが、上位2割の管理職が変われば、そのチームは比較的早く反応します。
大切なのは、トップの学びを単発で終わらせず、上から下へ順に落とし込み、仕組みとして定着させること。
ビジョンと情熱をトップがきちんと示せば、組織を担う人材は必ず出てきます。これは、私がたくさんの現場で見てきたことです。

Q. 研修の順番を間違えると、どうなりますか?

いちばん多い失敗が、上を飛ばして現場だけを変えようとすることです。
現場が学んで前向きになっても、上が理解していなければ提案は却下され、やがて「やっぱり変わらない会社だ」という諦めが広がります。
順番を間違えると、せっかくの研修が逆効果になりかねないのです。

まとめ

人材育成・企業研修を「どの階層から」始めるか。その答えは、精神論でも、やる気のある人からでもありません。
まず経営層(トップ)から。そして各階層の中では、変化に情熱を持つ上位2割から火をつける。
上から下へ順にオーソライズして落とし込み、単発で終わらせず仕組みとして定着させる。
この順番こそが、組織を根っこから変える、いちばんの近道です。

このテーマに関する、ドラッカーからのヒントを動画でも解説しています。村瀬の情熱の講義でインプットしてみてください。


なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか

ここまでお伝えした「経営層から、上位2割から」という順番は、今日からでも意識できます。
ただ、正直にお伝えすると、階層別研修を順番どおりに並べただけでは、なかなか組織は変わりません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。

変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。

根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない

生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。

とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。

中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則

そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。

いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること
。
マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。

観点 一般的な管理職研修 村瀬式ドラッカー7つの原則研修
育てる人材 組織を管理する管理職 組織に変化を生むチェンジリーダー
分かりやすさ ドラッカーは難解で実践しにくい 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化
定着 一過性で終わりがち すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着
伝え方 知識を頭で理解させる 情熱を込め、心から腹落ちさせる
実績 ― 導入257社以上/受講1,520名以上

情熱が、組織に火をつける

多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。

これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。


ドラッカー7つの原則研修

「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。


著者:村瀬 弘介(むらせ こうすけ)/経営コンサルタント・著者

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した
「村瀬式ドラッカー・人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。
著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。
熱血の講義で、組織に火をつけ、管理職をチェンジリーダーに進化させる研修に定評がある。