顧客創造の経営|景気に左右されないドラッカー式の事業成長の仕組みづくり

この記事でまとめたこと

顧客創造の経営とは|ドラッカーに学ぶ「景気に左右されない組織」の育て方

最終更新:2026年9月

「景気が悪いから、うちの業績も仕方がない」――。
社内で、こんな言葉が当たり前になっていないでしょうか。その感覚、よく分かります。

私がご相談をお受けする中小企業の社長さんや管理職の方にも、本当に多いんです。
でも、大丈夫です。同じ市場、同じ逆風の中でも、しっかり伸びていく組織を、私はこれまで何社も見てきました。

まず、結論からお伝えします。
顧客創造の経営とは、市場や景気を「なすがまま」に受け入れるのではなく、自社の創造性で新たな顧客と市場を自ら生み出していく経営のことです。
ドラッカーは「事業の目的は顧客の創造である」と言い切りました。その顧客を、環境まかせにせず、自分たちの手で創り出す。ここに、景気に左右されない強い組織の秘密があります。

そして、それを実現するのは、結局のところ「人」です。市場のせいにしない人材を、どう育てるか。順番に、一緒に見ていきましょう。


顧客創造の経営とは何か|「環境順応の経営」との決定的な違い

顧客創造の経営を理解するには、その反対にある「環境順応の経営」と並べて見るのが一番わかりやすい。私はいつも、この2つに分けてお話ししています。

環境順応の経営(環境なすがままの経営)

市場環境が悪ければ、自社の業績が悪いのも仕方がない。景気が下がれば、うちの売上も利益も下がっていく――。
この「市場になすがまま」の姿勢が、環境順応の経営です。悪気はありません。多くの組織が、無自覚のうちにここに立っています。

顧客創造の経営(人を活かす経営)

ドラッカーが説く経営は、これとは違います。市場が悪くても、景気が悪くても、自社は積極的に頭を使い、創造性を発揮して、新たな顧客を自ら創り出していく。
「事業によって、市場と顧客は新たに創り出すもの」――これが顧客創造の経営です。

一つ、動画でもお話しした例を挙げます。数年前に広がった「山ガール」という言葉。土日の登山電車が女性でいっぱいになる。あの光景は、七〜八年前にはまったく見られませんでした。
潜在的に「山に登りたい」という女性はいたのです。でも、おしゃれなウェアがない、山にトイレがない。だから登れなかった。そこにアウトドアメーカーが女性向けのファッショナブルなウェアを用意し、山側もトイレを整えた。すると、登りたくても登れなかった女性たちが登れるようになり、一気に新しい市場が生まれた。

これは「景気が良かったから」生まれた市場ではありません。誰かが、知恵を絞って創り出した市場なのです。顧客創造の経営とは、まさにこれを、意図してやり続けることです。

なぜ、守っているだけでは組織はじり貧になるのか

「今のお客様を大事にしていれば十分では」。そう思われるかもしれません。けれど、ここに落とし穴があります。

どんな会社でも、既存のお客様は毎年少しずつ減っていきます。引っ越し、廃業、嗜好の変化、競合への流出――。一般に、既存顧客の一定割合は毎年自然に離れていくと言われます。
つまり、新たな顧客を創り出す活動を止めた瞬間、組織は放っておいても目減りしていくのです。守りに徹することは、実は「静かに縮んでいくこと」と同じなんです。

かつての百貨店が、まさにそうでした。長年、自社に来てくれる中年層のお客様だけを見ていた。ところがその層が共働きで昼間に来られなくなると、売上はどんどん下がっていきました。
一方で、ルミネやパルコは、それまで来なかった上昇志向の若い層に目を向け、新しい市場を創り出して息を吹き返した。同じ逆風の中で、明暗を分けたのは「創ったか、待っていたか」の違いだったのです。

あなたの組織は大丈夫?「環境順応」に陥っているサイン

次のようなサインに、心当たりはないでしょうか。1つでも当てはまれば、組織が知らないうちに「環境なすがまま」に傾いているかもしれません。

  • 業績の話になると、まず「景気が」「市場が」「同業も苦しい」という言葉が出てくる
  • 会議の議題が、既存顧客の維持と目先の数字ばかりで、新しい顧客を創る話が出てこない
  • 「今のお客様でないけれど、買ってもおかしくない人」を、誰も具体的に思い浮かべられない
  • お客様が本当に求めている価値を、「たぶんこうだろう」で止め、確かめに行っていない
  • 去年と同じことを、去年と同じやり方で続けているのが、当たり前になっている

どれも、能力の問題ではありません。「環境は変えられないもの」と、いつのまにか思い込んでしまっているだけなんです。

顧客創造の鍵は「飛行客(非顧客)」にある

では、どこに顧客を創る種があるのか。ドラッカーは、はっきりと指し示しています。「飛行客(ひこうきゃく)」――今はまだお客様ではない人々です。

飛行客とは、読んで字のごとく、今はお客様でない人たち。もっと言えば、あなたの商品・サービスを買ってもおかしくないのに、なぜか買っていない人たちです。
山に登りたい女性はいた。でも、ウェアがない、トイレがない。その「登れない理由」を一つずつ取り除いてあげたとき、新しい顧客がどっと現れました。

私の書籍が参考にした『もしドラ』も同じです。ドラッカーはもともと、経営者やビジネスパーソンが読むもの。難しくて読めない、縁がないと思っていた女子高生や若い層――彼らこそ飛行客でした。
表紙をアニメの女子高生にし、物語で読めるようにした瞬間に、その飛行客が一気に顧客になった。
飛行客を顧客化したときに、事業に最大のレバレッジがもたらされる。これこそ、顧客創造の経営の醍醐味です。

ここで大事なのは、飛行客が「買わない理由」を、環境のせいにしないこと。「うちの商品に興味がないんだろう」で片づけた瞬間に、創造は止まります。
「なぜ買えないのか」「何が障害なのか」を具体的に見つけ、それを取り除く。冷蔵庫が氷点下の地域で「保冷」ではなく「保温(凍らせない)」の価値として売れたように、
お客様が本当に求めている価値を見誤らないこと。これが、飛行客を顧客に変える出発点です。

ドラッカーが説く、顧客創造の本質「事業の目的は顧客の創造」

少し立ち止まって、ドラッカーの言葉そのものを見てみましょう。

企業の目的として有効な定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。

利益でも、売上でもなく、「顧客を創造すること」。ここに、景気に左右されない経営の芯があります。
景気は自分では動かせません。けれど、顧客を創り出す創造性は、いつでも自分たちの手の中にあります。
だからこそ、外の環境がどうであれ、組織は自らの意志で伸びていける。

これは経営者だけの話ではありません。一人ひとりの管理職が、自分のチームの前に広がる飛行客を思い描けるか。現場が、市場のせいにする前に「では、うちは何を創れるか」と問えるか。
組織全体がこの発想に立ったとき、会社は環境順応から、顧客創造へと変わっていきます。

今日から組織で実践できる4つのアクションプラン

では、どうすればいいのか。明日から現場でできることを、4つお伝えします。

①「景気が」を禁句にし、「では、うちは何を創れるか」に言い換える

業績の話で「景気が」「市場が」という言葉が出たら、そこで思考を止めない。
「その中で、うちは新しくどんな顧客を創れるか」へ、必ず問いを一段ずらす。
管理職がこの問いを口ぐせにするだけで、チームの視線が、外の環境から自社の創造性へと移っていきます。

②チームで「飛行客リスト」を書き出す

「今はお客様ではないが、買ってもおかしくない人」を、チームで具体的に洗い出してみてください。
そのうえで、「なぜ、その人は買えていないのか(何が障害なのか)」を一つずつ書き出す。
山ガールの「ウェアがない・トイレがない」のように、障害が見えれば、そこに創造の余地が見えてきます。

③現場に「顧客の本当の価値」を確かめに行かせる

飛行客が求める価値を、机の上の想像で決めない。1on1や日々の対話で、部下に「お客様に直接、何に困っているかを聞いてきたか」を問う。
思い込みの価値ではなく、現場が確かめてきた価値。ここから、氷点下の冷蔵庫のような「見方の転換」が生まれます。

④「顧客を創る仕事」を評価の対象に組み込む

既存顧客を守る仕事だけを評価していると、人は守りに向かいます。
新しい顧客を創ろうとした挑戦や、飛行客の障害を取り除いた工夫を、たとえ小さくても評価に加える。
仕組みとして「創ること」を後押しすれば、環境順応型だった人材が、少しずつ顧客創造型へと育っていきます。

そして、ここまでの4つは「あれもこれも」と身構える必要はありません。
これらはすべて、村瀬式・ドラッカーの7つの原則の実践シートを日々書き込んでいくだけで、組織の「仕組み」として自然に身につき、定着していきます。
やることは一つずつ。村瀬にご相談いただき、言われたとおりに進めていただければ、難しく考えなくても、平易に、そして確実に根づいていきます。

よくある質問

Q. 顧客創造の経営と、ただの新規開拓・集客は何が違いますか?

新規開拓や集客は、多くの場合、すでにある需要の中でお客様を「取り合う」活動です。
顧客創造の経営は、これまで存在しなかった需要や市場そのものを「創り出す」こと。
山ガールのように、登れなかった人が登れるようにする。買えなかった人が買えるようにする。パイの奪い合いではなく、パイそのものを大きくする発想です。

Q. 景気が悪くても、本当に顧客は創れるのですか?

はい。むしろ逆風のときこそ、飛行客の「困りごと」がはっきり見えます。
かつての百貨店が沈む一方で、来なかった層に目を向けた店が伸びたように、環境が厳しいほど、そこに手を打った会社が差をつけます。
景気は動かせませんが、創造性はいつでも自分たちの手の中にある。ここが、環境順応の経営との決定的な違いです。

Q. 中小企業でも顧客創造はできますか?

できます。むしろ中小企業は、お客様の顔が見え、飛行客の困りごとに素早く手を打てる強みがあります。
大きな設備や広告費がなくても、「なぜ買えないのか」を一つ取り除くだけで、新しい顧客が生まれることは珍しくありません。規模ではなく、創造性の勝負なのです。

Q. 「市場のせいにする社員」を変えるには、何から始めればいいですか?

叱って直るものではありません。まずは管理職が、会議で「景気が」を「では、うちは何を創れるか」に言い換えて見せること。
そして、飛行客を書き出す時間を、チームの習慣にすること。発想の型を、日々の運用の中に埋め込んでいくのが、いちばんの近道です。

Q. 一度研修を受ければ、顧客創造型の組織になりますか?

正直に言うと、一度きりの研修では、学びは現場で長続きしません。
大切なのは、顧客創造の発想を「仕組み」として日々の運用に組み込み、続けて振り返ること。
だからこそ、ドラッカーの7つの原則研修では、研修後も実践シートで定着するところまで伴走します。

まとめ

顧客創造の経営とは、精神論でも、景気頼みでもありません。
市場のせいにせず、飛行客の困りごとを見つけ、自社の創造性で新たな顧客を生み出し続けること。
そして、その発想を一人ひとりの管理職と現場に根づかせ、組織の「仕組み」に変えること。それが、環境がどうであれ力強く伸びていく会社の、本当の近道です。

この顧客創造の経営について、ドラッカーからのヒントを動画でも解説しています。村瀬の情熱の講義でインプットしてみてください。


なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか

ここまでの「顧客創造の経営」の考え方は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。

変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。

根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない

生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。

とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。

中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則

そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。

いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること
。
マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。

観点 一般的な管理職研修 村瀬式ドラッカー7つの原則研修
育てる人材 組織を管理する管理職 組織に変化を生むチェンジリーダー
分かりやすさ ドラッカーは難解で実践しにくい 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化
定着 一過性で終わりがち すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着
伝え方 知識を頭で理解させる 情熱を込め、心から腹落ちさせる
実績 ― 導入257社以上/受講1,520名以上

情熱が、組織に火をつける

多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。

これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。


ドラッカー7つの原則研修

「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。


著者:村瀬 弘介(むらせ こうすけ)/経営コンサルタント・著者

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した
「村瀬式ドラッカー・人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。
著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。
熱血の講義で、組織に火をつけ、管理職をチェンジリーダーに進化させる研修に定評がある。