「社員を正しくひっぱっていくために、リーダーとして気をつけることはありますか?」
―コンサルティングの中で、経営者から頂いたご質問です。

リーダーは「正しい質問」で、メンバー思考を活性化し、正しい行動に導きます。

質問が重要である

ドラッカーは、質問しかしないコンサルタントとして有名です。
その質問は次のようなものです。

使命は何か?
顧客は誰か?
顧客が価値としているものは何か?
組織はどんな時に成果をあげたと言えるのか?
行動計画は何か?

(経営者に贈る5つの質問・ダイヤモンド社)

クライアントに本質的な質問をぶつけて、思考を活性化して、成果へと導いたのです。

リーダーの正しい質問は、メンバーを、正しい行動に集中させます。
組織にとって正しい質問とは何か?を常に問いかけるようにして下さい。

正しい質問とは?

「どうしたら、もう一段上サービスを、お客様に提供できるだろうか?」
とメンバーに問いかければ、各自がお客様へのサービス向上に集中し、現場の行動を考え始めます。

「何のための会議なのか? 会議の目的は何か?」
と問いかければ、論点に集中し、時間も短く、効果的になります。

メンバーの意識を、正しい行動に集中させるものが、正しい質問です。
(正しい行動とは、成果を生み出す、具体的な行動のことです。)

誤った質問は投げかけてはいけない

ところが
「先の見えない景気の中、わが社はどうなってしまうのだろうか?」と問いかけると、
どうなるんでしょうね・・・と不安のみが生まれて、行動は起きません。

これは、脳に対する質問が悪いのです。具体的な行動につながる質問でなければいけません。
行動に結び付く、正しい質問を投げかけているか、常日頃、問いかけるようにして下さい。

ドラッカーは言います。
「答えよりも、それを導きだす質問の方がより重要である。」
組織を集中させ、成果を生み出すための質問はどんな質問でしょうか?

リーダーシップとは質問の力

リーダーは質問の力によって組織を導いていくのです。
リーダーシップとは「質問の力」です。質問力を鍛えて下さい。

天才物理学者アインシュタインも言います。
「危機的状況になって、あと60分しかないとしたら、55分を正しい質問を考える事に費やすだろう。」と。

質問力を磨いていきましょう。
あなたの投げかける質問がメンバーを、正しい行動に導くことをお祈りしてます。

■現場のアクションプラン

【1】指示を、質問に置き換えてみる

「これをやっておいて」と命じる代わりに、「どうすれば、これをもっと良くできると思う?」と尋ねてみてください。命じられた人は言われたことしかしませんが、問われた人は自分の頭で考え始めます。答えを渡すのをやめ、考える機会を渡すのです。

【2】「なぜ」より「どうすれば」で聞く

「なぜできなかったんだ」と過去を問うと、人は言い訳を探します。「どうすれば次はうまくいくだろう」と未来を問えば、人は解決策を探します。質問の向きを、過去の責任追及から、これからの行動へ切り替えてください。

【3】会議の冒頭で「今日の問い」を一つ決める

だらだらと長引く会議の多くは、問いがあいまいです。「今日の会議で答えを出したい問いは何か」を、はじめに一つに絞る。論点が定まれば、議論は集中し、時間も短くなります。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
問いを投げ、本人に考えさせる 答えを与え、その通りにやらせる
「どうすれば」と行動を引き出す 「なぜできない」と責め立てる
お客様や成果に目を向けさせる問い 不安をあおるだけの問い
会議の目的を一つの問いに絞る 目的があいまいなまま集まる
問いに答える時間を待ってあげる 沈黙に耐えられず自分で答える

■経営者へのメッセージ

多くの経営者は、答えを持っていることこそがリーダーの務めだと考えています。決断し、指示を出し、部下を引っ張る。もちろん、それも大切です。けれど、答えを与え続ける限り、部下はいつまでも自分の頭で考えません。指示待ちの組織は、こうして生まれます。

ドラッカーが「答えよりも問いのほうが重要だ」と言ったのは、良い問いには、人を動かす力があるからです。良い問いを投げかけられた人は、自分の中に答えを探しに行きます。その過程で、当事者意識が芽生え、自ら動く人へと変わっていきます。

問いには、向きがあります。過去の失敗を問えば言い訳が返り、未来の行動を問えば工夫が返る。不安を問えば足がすくみ、お客様への貢献を問えば足が前に出る。どちらを問うかは、リーダーの手の中にあります。

すぐに完璧な問いを立てる必要はありません。まずは、指示を一つ質問に置き換えてみる。それだけで、部下の表情が変わり始めます。あなたの問いが、社員一人ひとりの考える力を目覚めさせていくことを願っています。

■参考にしたい質問力に関する名言

「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。」
── ピーター・ドラッカー『経営者の条件』

「間違った問いに対する正しい答えほど、危険とは言えないまでも役に立たないものはない。」
── ピーター・ドラッカー『経営者の条件』

「大切なのは、質問をやめないことだ。好奇心は、それ自体に存在意義がある。」
── アルベルト・アインシュタイン

「之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かず。」
── 孔子『論語』

■クライアントの実践事例

私のお客様の、建設業E社(社員35名)の社長さんは、とても面倒見のよい方でした。現場で問題が起きるたびに駆けつけ、その場で答えを出す。頼りにされる一方で、「自分がいないと現場が止まる」「社員がなかなか育たない」と、疲れ切っておられました。

そこで私がお願いしたのは、たった一つの習慣でした。社員から相談を受けたとき、すぐに答えを言わず、まず「あなたなら、どうするのがいいと思う?」と聞き返してください、ということです。最初、社長さんは「じれったくて、つい自分で答えてしまう」とこぼしておられました。

それでも辛抱強く問い返すうちに、現場が変わってきました。社員たちは相談に来る前に、自分なりの案を用意してくるようになったのです。「こうしようと思うのですが、どうでしょう」と。答えを渡す関係から、考えを持ち寄る関係へと変わっていきました。

一年後、社長さんはこう言われました。「私が現場に行かなくても、みんなで考えて回るようになった。私は本来やるべき仕事に時間を使えるようになりました」と。良い問いは、人を育てるのだと実感した事例です。

■質問力に関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. 質問すると「わかりません」と返されて、話が進みません。

A. 最初はそうなりがちです。今まで答えをもらってきた人は、急に問われると戸惑います。「すぐに答えなくていいよ、明日までに考えてみて」と、考える時間を渡してあげてください。待つ姿勢を見せることも、大切な質問力の一つです。

Q. 忙しくて、いちいち質問している余裕がありません。

A. 短い目で見れば、答えを言うほうが速いのは確かです。ですが、答えを渡し続ける限り、部下は育たず、いつまでも社長の手を離れません。今、少しの時間を質問に投じることが、将来、自分の時間を取り戻すことにつながります。

Q. どんな質問が「良い質問」なのか、自信がありません。

A. 難しく考えなくて構いません。「お客様のために、どうすればもっと良くできるか」「この仕事の目的は何か」。この二つを軸に問えば、たいてい良い方向に議論が向かいます。人を不安にさせる問いだけは避ける、と覚えておいてください。

Q. 質問ばかりだと、頼りないリーダーだと思われませんか。

A. その心配はいりません。良い問いを投げられるリーダーは、むしろ深く尊敬されます。答えを押し付けるのではなく、部下の考えを引き出して信じて任せる。その姿勢こそ、成熟したリーダーの証です。ドラッカー自身、問いだけで世界の経営者を導きました。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。

難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に

とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。

そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。

「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。


ドラッカー7つの原則研修

ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。

貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。

ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。

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