顧客の価値としているものを理解する

「多くの企業が自社目線で、売りたい商品・サービスにばかり興味を取られている。

しかし、顧客の心の内(顧客が何を価値とするか?)を考え抜いている企業は少ない。」(ドラッカー)

顧客に商品を購入してもらおうと思ったら、顧客が何を重要な価値としているかについて考え抜かねばなりません。

顧客は商品を買うのではなく、「何らかの問題を解決する手段」として、商品を利用しています。

ポルシェを購入するお客様は、単に移動手段としての車を買うのではありません。

移動手段であれば、運転の難しい車を買う必要はありません。

顧客が本当に得たいものは、スポーツとしての走る楽しさや、ポルシェを保有するというプライド(社会的認知)です。
 

顧客は、商品ではなく、問題解決を買っている

「顧客は商品を買うのではない、商品は顧客の問題を解決する手段に過ぎない。」

高級レストランを利用されているお客様は、美味しい料理だけを求めているのではなく、くつろげる・ラグジュアリーな打ち合わせの場(空間)を買っています。

企業が売っていると思うものを、顧客が買っているとは限らないのです。

顧客が本当に価値としているものを深く理解し、最適なアプローチするものが商品なのです。

商品・サービスは顧客の抱える、何らかの課題(問題)を解決するために、存在しているのです。

顧客の価値としているものを、考え抜くことがマーケティングです。

【ポイント】

①顧客が自社の商品・サービスで、本当に価値を感じているものは何か?
(想像せずに、直接聞く)

②顧客の価値とするものを知るために、次の「6つの質問」を考えてみて下さい。
 


【顧客を深く理解するために考えるべき・6つの質問】

【1】われわれが売っている商品は何か?
 
【2】顧客が本当に買っているもの(解決したい課題)は何か?
 
【3】顧客が本当に価値を感じているのは、商品のいかなる部分なのか?
 
【4】商品の使用前・使用後で顧客にどのような変化があるのか? (苦痛・ストレス⇒快適)
 
【5】何と比較して、われわれの商品を選んでいるのか?
顧客が解決したい問題を解決するために、他の手段は考えられるか?
 
【6】顧客の視点からすれば、本当にわれわれが売っているモノは何なのか?


■現場のアクションプラン

【1】自社の商品を「顧客が解決したい問題」に言い換える

自社が何を売っているかではなく、その商品でお客様のどんな困りごとが片づくのかを、一行で書き出してみてください。ドリルを売っているのではなく「穴」を売っている。この視点に立つと、伝え方も改善の方向も変わってきます。

【2】お客様に「なぜ当社を選んだのか」を直接聞く

想像で決めつけず、実際に選んでくれたお客様に理由を尋ねてみる。多くの場合、社長が思っている売りと、お客様が価値を感じている点はずれています。そのずれの中にこそ、本当の強みが隠れています。

【3】上の「6つの質問」を幹部と一緒に埋める

一人で考えるより、営業・現場・製造の視点を持ち寄って埋めるほうが、答えは立体的になります。埋まらない欄が出たら、それが「お客様を理解できていない部分」です。次に確かめるべき宿題として持ち帰りましょう。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
顧客が解決したい問題から考える 自社が売りたい商品から考える
選ばれた理由を本人に直接聞く 社内の想像で価値を決めつける
商品を「問題解決の手段」と捉える 商品そのものの機能だけを訴える
使用前後の顧客の変化に注目する スペックや価格だけで勝負する
顧客の言葉で価値を語り直す 業界の専門用語のまま説明する

■経営者へのメッセージ

私たちは、つい「自分が何を売っているか」から物事を考えてしまいます。よい商品を作った、よいサービスを用意した。だから買ってもらえるはずだ、と。ところがお客様は、商品そのものが欲しいわけではありません。その商品を通じて、自分の困りごとを解決したい。ただそれだけなのです。

同じ車でも、走る楽しさを買う人もいれば、家族を安全に運ぶ安心を買う人もいます。売り手が思う価値と、お客様が感じる価値は、驚くほど食い違っていることがあります。その食い違いに気づけるかどうかが、選ばれ続ける会社と、そうでない会社の分かれ道です。

難しく考える必要はありません。まずは目の前のお客様に、「なぜ当社を選んでくださったのですか」と、一言たずねてみてください。その答えの中に、あなたの会社の本当の価値が眠っています。

お客様の心の内を知ろうとする姿勢そのものが、信頼を育てます。焦らず、一人のお客様を深く理解するところから始めれば、道はかならず開けていきます。

■参考にしたい顧客の価値に関する名言

「顧客が価値ありとし、購入し、価値あると認めるものこそが事業である。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「顧客にとっての関心は、その製品が自分に何をしてくれるかである。」
── ピーター・ドラッカー『創造する経営者』

「われわれの事業は何か。何であるべきか。それは、顧客を見、顧客に聞くことによってのみ答えられる。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』

「お客様が求めているのは、物ではなく、その物によって得られる満足である。」
── 松下幸之助『商売心得帖』

■クライアントの実践事例

私のお客様の、住宅設備業D社(社員18名)の社長さんは、「うちは品質も価格も他社に負けていないのに、なぜか受注が伸びない」と悩んでおられました。カタログのスペックを並べて説明しても、お客様の反応がいまひとつだったのです。

そこで私がお願いしたのは、成約したお客様に「なぜ当社を選んだのか」を直接うかがうことでした。返ってきた答えは、社長さんの予想と違いました。決め手は性能や価格ではなく、「担当者が家族の暮らし方まで聞いて提案してくれたから安心できた」というものが大半だったのです。

つまりD社が売っていたのは設備そのものではなく、「この会社なら任せられる」という安心でした。それに気づいてから、営業の会話も、チラシの言葉も、「暮らしの困りごとをどう解決するか」を軸に組み直しました。

半年後、問い合わせからの成約率が目に見えて上がりました。商品は何も変えていません。お客様が本当に買っていたものに、会社が気づいただけです。

■顧客の価値に関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. お客様に「なぜ選んだか」を聞くのは、失礼になりませんか。

A. むしろ喜ばれることがほとんどです。自分の話を真剣に聞いてくれる会社に、お客様は好意を持ちます。「今後の参考にさせてください」と一言添えれば、自然に本音を話してくださいます。聞くこと自体が、信頼を深める行為なのです。

Q. 自社の商品を「問題解決」に言い換えるのが難しいです。

A. 「この商品がないと、お客様は何に困りますか」と逆から考えてみてください。困りごとが見えれば、それを解決するのがあなたの商品の価値です。機能を語るのではなく、その機能で消える不便や不安を語る。それだけで伝わり方が変わります。

Q. お客様によって価値としている点がバラバラで、絞れません。

A. それはむしろ正常です。無理に一つへ絞らず、「どんなお客様が、どんな価値で選んでいるか」をいくつかの型に分けてみてください。型ごとに響く言葉は違います。相手に合わせて価値を語り分けられると、成約率は上がります。

Q. 六つの質問を、どこまで正確に答えれば十分ですか。

A. 最初から完璧を目指さなくて大丈夫です。埋まらない欄があるのは、そこがお客様を理解できていない部分だという発見です。空欄を宿題にして、次にお客様と話すときに一つずつ確かめていく。この積み重ねが、そのままマーケティングになります。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。

難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に

とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。

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「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。


ドラッカー7つの原則研修

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貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。

ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

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