← 28.顧客への価値向上に集中せよ。【ドラッカー動画セミナー】
「うちは営業を強化しているのに、なぜか売上が伸びない」。中小企業の経営者から、こうした相談をよく受けます。多くの場合、その原因はセールスの技術ではなく、マーケティングとセールスの違いを社内で定義できていないことにあります。ここを混同したまま人を増やし、気合いで売ろうとすると、現場は疲弊し、数字だけが遠ざかっていきます。
ドラッカーは言います。
マーケティングとセールスは正反対であり、重なりあう部分さえない。
マーケティングが機能すれば、セールスは不要である。
この一節は、はじめて読むと極端に聞こえるかもしれません。しかし現場を丁寧に観察すると、これほど本質を突いた言葉はないと感じます。この記事では、マーケティングとセールスの違いをドラッカーの視点から整理し、中小企業が明日から何をどう変えればよいのかまで、順を追って解説していきます。
この記事でまとめたこと
マーケティングとセールスの違いとは何か
マーケティングとセールスについて、経営者は自社で定義できていなくてはなりません。言葉の定義が曖昧なままだと、社内で議論がかみ合わず、施策もぶれてしまうからです。
マーケティングとは英語で書くと、Market+ing、つまり市場の中、市場の中からという意味になります。市場の中という言葉の正反対は、会社の中・社長室の中・役員室・会議室の中からになります。私はこれをCompanyingとよんでいます。会議室の中だけで「これは売れるはずだ」と決めてしまうこと、それがCompanyingです。
マーケティングとセールスの違いは、一言で言えば目の問題です。企業の中からという内向き視点を一切排し、市場、顧客の目線で自社の商品・サービスを厳しく見直していくことをマーケティングと言います。
視点の向きが正反対である
セールスは、すでにある製品を「どう売るか」から出発します。マーケティングは、顧客が「何を求めているか」から出発します。出発点が逆なのです。だからこそドラッカーは、両者は重なりあう部分さえないと言い切りました。
お客様にとっては、企業目線、自社の都合など全く関係のないことです。お客様はあなたの会社、会社の売上、利益にはまったく興味がありません。お客様が興味があるのは、一体あなたの会社は自分にとって何をしてくれるのかという、お客様の視点のみなのです。
マーケティングは顧客からスタートする
マーケティングとは顧客からスタートするということは、企業の中からスタートしないということなのです。企業のすべての活動を顧客視点で価値向上・適正化していくことをマーケティングと言います。
そして、自社の都合からモノを売る人をセールスと言います。お客様の都合から考え、製品開発をし、販売する人をマーケターと言います。同じ「売る」という行為に見えても、どちらの目線から出発しているかで、まったく別物になるのです。
なぜ今マーケティングが重要なのか
現代のようなモノ余りの時代においては、マーケティング、顧客からみて顧客に選ばれる企業になることが重要なのです。モノが不足していた時代であれば、良いものを作れば黙っていても売れました。しかし今は、似たような商品が市場にあふれています。顧客は「どれを選んでも困らない」状態にいます。
この状況で選ばれ続けるには、顧客の側から見て「この会社でなければ困る」と思ってもらう理由が要ります。それを作り出すのがマーケティングです。値引きや押しの強い営業でその場をしのいでも、顧客視点の価値がなければ、次の取引は続きません。
セールスに頼りすぎる会社に起きること
マーケティングが弱いままセールスだけを強化すると、いくつかの症状が現れます。値引き合戦から抜け出せない。営業担当者が辞めると売上が一気に落ちる。新規顧客は取れてもリピートしない。これらはすべて、顧客視点の価値づくりを飛ばして「売る力」だけで戦っているサインです。ドラッカーが「マーケティングが機能すれば、セールスは不要である」と言ったのは、こういう構造を指しています。
全社員をマーケターにする
そして、企業の中の社員でお客様に関係のない人はいません。経営者は全社員をマーケターにする必要があるのです。
私は、全社員が顧客視点で顧客への提供価値の向上に燃える会社を、マーケティングカンパニーと定義しています。営業だけがお客様を見ているのではありません。製造も、経理も、配送も、電話に出る人も、すべてが顧客の体験を作っています。
考えてみて下さい。全社員が顧客の目線で、弛まぬ価値向上に燃えるとしたら、その組織はいかに市場で強力になっていくでしょうか。
経営者は全社員をマーケターとして教育し、自社をマーケティングカンパニーに進化させる必要があるのです。
中小企業が明日から始められる三つの手順
とはいえ、いきなり全社を変えることはできません。中小企業の現場で無理なく始められる順序を挙げておきます。
一つ目は、定義を紙に書くことです。自社にとってのマーケティングとセールスの違いを、経営者自身の言葉で一枚に書き出し、幹部と共有します。言葉が揃うと、日々の判断がぶれなくなります。
二つ目は、顧客の声を集める仕組みを作ることです。既存のお客様に「なぜうちを選んだのか」「何に困っていたのか」を直接聞きます。会議室での想像ではなく、市場の中からの事実を持ち帰ることが、Companyingから抜け出す第一歩です。
三つ目は、部門ごとに「自分の仕事は顧客のどんな価値につながっているか」を言語化させることです。経理でも配送でも構いません。全社員が自分の仕事と顧客をつなげて考え始めたとき、会社はマーケティングカンパニーへ進化していきます。
動画で学ぶ:マーケティングとセールスは正反対である
この考え方を、動画でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
動画【マーケティングとセールスは正反対である。】【ドラッカー・経営セミナー】
まとめ
マーケティングとセールスの違いは、技術の違いではなく、目の向きの違いです。セールスは自社の都合から売り、マーケティングは顧客の都合から価値を作ります。両者は正反対であり、マーケティングが十分に機能すれば、無理な売り込みは要らなくなる、というのがドラッカーの教えでした。
モノ余りの時代に選ばれ続けるには、会議室の中の理屈ではなく、市場の中からの視点で自社を見直すことが欠かせません。そして、その視点を営業任せにせず、全社員が持つこと。経営者が全社員をマーケターとして育て、自社をマーケティングカンパニーへと進化させること。ここに中小企業が生き残る道があります。まずは定義を一枚の紙に書くところから、始めてみてください。
マーケティングとセールスの違いに関するよくある質問
マーケティングとセールスは何が一番違うのですか
出発点の視点が正反対である点です。セールスはすでにある自社製品を「どう売るか」から出発し、マーケティングは顧客が「何を求めているか」から出発します。同じ「売る」に見えても、内向きか、市場の中からかで、まったく別の活動になります。
マーケティングが機能すればセールスは本当に不要になるのですか
実務ではセールスがゼロになるわけではありません。ドラッカーの言葉は、顧客視点で価値を作り込めば、押し売りや値引きに頼る必要がなくなる、という意味に理解するのが適切です。マーケティングが弱いほど、セールスの負担は重くなります。
中小企業でもマーケティングカンパニーになれますか
むしろ中小企業の方が適しています。社員数が少ないぶん、顧客の声が経営者まで届きやすく、全社で視点を揃えるのも早いからです。大企業のような大きな広告予算は不要です。顧客に直接聞き、全員で価値を高める文化があれば十分です。
何から手をつければよいですか
まず、自社にとってのマーケティングとセールスの違いを経営者の言葉で一枚に書き、幹部と共有してください。次に既存のお客様に選ばれた理由を直接聞きます。会議室の想像ではなく、市場の中からの事実を集めることが最初の一歩です。
営業部門だけがマーケティングを担えばよいのではないですか
いいえ。製造、経理、配送、電話対応まで、すべての社員が顧客の体験を作っています。企業の中で顧客に関係のない社員はいません。全社員が自分の仕事と顧客価値をつなげて考えることが、強い会社をつくります。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし、自社の経営や組織にドラッカーをどう活かせばよいか、少しでもお悩みでしたら、ここから先もぜひ読んでみてください。ドラッカーに関心をお持ちの経営者・管理職の方への、補足のご案内です。
なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか
ここまでの「強みを見る視点への切り替え」は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。
変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。
根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない
生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。
とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。
中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則
そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。
いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること。
マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。
| 観点 | 一般的な管理職研修 | 村瀬式ドラッカー7つの原則研修 |
|---|---|---|
| 育てる人材 | 組織を管理する管理職 | 組織に変化を生むチェンジリーダー |
| 分かりやすさ | ドラッカーは難解で実践しにくい | 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化 |
| 定着 | 一過性で終わりがち | すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着 |
| 伝え方 | 知識を頭で理解させる | 情熱を込め、心から腹落ちさせる |
| 実績 | ― | 導入257社以上/受講1,520名以上 |
情熱が、組織に火をつける
多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。
これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。
管理職が育てば、組織そのものが変わっていく
一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。
「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
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