← 32.【ドラッカー動画セミナー】なぜ目標設定が必要なのか?
(前回の続き)
この記事でまとめたこと
ドラッカーの「目標管理(MBO)」とは何か
目標を設定したら、上司と部下で少なくとも月に一度、目標管理面談を行います。
目標管理面談というと、いかにも上司が部下を管理して、その進捗を精査するような響きがあります。しかし、ドラッカーの言う目標管理は、それとはまったく違うものです。
目標管理という言葉をドラッカーが世に送り出したとき、その本来の意味は「MBO-S(Management by Objectives and Self-Control / マネジメント・バイ・オブジェクティブズ・アンド・セルフ・コントロール)」でした。
この Self-Control(自己統制)という部分こそが核心です。つまり、自らが立てた目標を、自らの意思でコントロールしていく――「自己目標による目標管理」だったのです。
日本に伝わる過程で抜け落ちた「自己統制」
ところが、この考え方が日本に入ってきたときに大きな誤解が生じました。もっとも大切な「Self-Control(自己統制による)」という部分が抜け落ちてしまったのです。
残ったのは Management by Objectives(目標による管理)という側面だけ。その結果、目標管理はまるで「上司の権力によって部下の達成度をチェックする道具」であるかのようなイメージが定着してしまいました。
多くの中小企業で、目標管理シートが「詰めるための資料」になってしまっているのは、この誤解の名残です。数字が未達だった理由を上司が問い詰め、部下は言い訳を用意する。この構図では、シートを書くこと自体が目的化し、本来の成果にはつながりません。
ドラッカーのマネジメントに「統制」の思想はない
ドラッカーのマネジメントは、彼が二つの世界大戦とホロコーストを経験したのちに、「人が自由で生産的に生きられる社会」を至上の目標として構想したものです。
その思想の根っこを理解すれば、マネジメントという言葉のなかに、権力・統制・支配といったイメージが入り込む余地はまったくないことがわかります。
だからこそ、部下を縛るための目標管理ではなく、自律的なマネジメント――自分の目標を自分で立て、自らその達成に向けて努力していく「自己目標による目標管理」こそが、ドラッカーの真意なのです。
なぜ「自己目標による管理」が成果を生むのか
なぜ目標を設定し、自己管理することが必要なのでしょうか。
前回の講義でも触れたとおり、目標を明確にすることで、人間は集中することができます。そして、集中すれば成果が出る――これがドラッカーの基本法則だからです。
自分でやると決めた目標には、当事者意識が宿ります。人から与えられただけの数字には、なかなか本気になれないものです。しかし「これは自分が選んだ目標だ」という感覚があると、達成に向けた工夫が自然に生まれてきます。
デミングの言葉が示す「振り返り」の意味
自己の目標を、上司との面談で定期的に振り返る。この行為の意義は、品質管理の大家であるW・エドワーズ・デミングの、次の言葉によく表れています。
「計測できるものはコントロールすることができる。」
「コントロールできるものは最適化することができる。」【W・E・デミング】
つまり、目標を立て、その実行具合を振り返って計測できるようになると、達成に向けた現在の行動を自分でコントロールし、最適化していける、という意味です。
振り返りがなければ、いま自分がとっている行動が効果的なのか、そうでないのかを知ることはできません。
自己目標と目標管理があってはじめて、人は自分の仕事を効果的に、成果に向けて改善し、着実に成果を上げていくことができる。ドラッカーはそう述べています。
ドラッカーは言います。
「自己目標による目標管理こそ、マネジメントの哲学である。」
中小企業で「自己目標管理」を実践する手順
理屈はわかっても、明日から現場でどう回せばよいのか。ここでは、社員数の限られた中小企業でも無理なく始められる進め方を、順を追って示します。
手順1:会社の目標を、社員に「翻訳」して共有する
まず、会社全体が今期どこを目指すのかを、社長の言葉で率直に共有します。「売上を伸ばす」といった抽象論ではなく、「なぜそれが必要で、達成できると何が変わるのか」まで語ることが大切です。全社の方向がわかってはじめて、社員は自分の目標を会社の目標に結びつけて考えられます。
手順2:目標は上司が与えるのではなく、本人に立ててもらう
ここが最大の分岐点です。上司が数字を割り振るのではなく、「あなたはこの半期で、何に貢献したいか」を本人に問いかけ、本人の言葉で目標を書いてもらいます。上司の役割は、その目標が会社の方向とずれていないか、高すぎず低すぎないかを一緒に確認することです。決めるのはあくまで本人。この一手間が、当事者意識を生みます。
手順3:月に一度、面談で「振り返り」を行う
月に一度、三十分でかまいません。面談では、達成度を問い詰めるのではなく、「どこがうまくいって、どこでつまずいているか」を本人に語ってもらいます。上司は聞き役に回り、必要な支援や、取り除くべき障害を一緒に探します。詰める場ではなく、前に進めるための場だと位置づけることが肝心です。
手順4:うまくいかない時こそ、原因を「仕組み」に求める
未達が続いたとき、本人の努力不足に原因を求めるのは簡単です。しかしデミングが説いたように、成果の多くは仕組みが決めています。「この目標を邪魔している段取りや環境はないか」を一緒に見直すほうが、はるかに建設的です。管理職研修でも、この視点の転換にもっとも時間を割く価値があります。
ありがちな失敗と、その避け方
現場でよく起きるのは、目標管理シートを提出させること自体が目的になってしまうケースです。書式を埋めれば終わり、では何も変わりません。もう一つは、面談が査定・評価の場になってしまい、本音が出なくなるケースです。評価の話と、成長を支援する面談は、できるだけ切り分けて運用するのがコツです。
「管理する」から「自律を支える」へ
ぜひ、部下を管理する道具としてではなく、メンバー自らが自律的に目標達成へと向かうのを支えるサポートとして、自己目標管理システムの本質を実践してみてください。
人は、管理されていやいや成果をあげるのではありません。本来は、自律的に成果を生み出す創造的な生き物なのです。
ドラッカーは、人間中心の経営を説きました。
ドラッカーは言います。
「人は、何か偉大なことを成し遂げたがる生き物である。」と。
この、人間に最大の期待をするドラッカー先生の思想に、私は惚れ込んでおります。
共に、なすべきことを成し遂げて生きましょう。
【セミナー動画:自己目標管理こそマネジメントの哲学である。】
まとめ
ドラッカーの目標管理(MBO)は、正しくは「Management by Objectives and Self-Control」――自己統制をともなう目標管理です。日本ではこの「自己統制」の部分が抜け落ち、上司が部下をチェックする道具のように誤解されてしまいました。
本来の目標管理は、社員が自分で目標を立て、月に一度の面談で自ら振り返り、行動を最適化していく仕組みです。人を縛るのではなく、自律を支えること。中小企業であっても、会社の方向を共有し、本人に目標を立ててもらい、詰めるのではなく支える面談を重ねれば、無理なく始められます。
目標管理を「管理」から「自律の支援」へと組み替えたとき、社員は本来もっている力を発揮し、成果へと向かいはじめます。それこそが、ドラッカーの言う「マネジメントの哲学」なのです。
目標管理(MBO)に関するよくある質問
Q. 目標管理(MBO)とノルマ管理は、何が違うのですか。
ノルマ管理は、会社が決めた数字を上から割り当て、その達成度で人を評価する仕組みです。一方でドラッカーの目標管理は、社員自身が目標を立て、自らの意思でコントロールしていく「自己統制」を前提とします。数字を与えられるのか、自分で選ぶのか。この当事者意識の有無が、両者の決定的な違いです。
Q. 「自己統制」といっても、社員に任せて成果が出るのか不安です。
任せることと、放任することは違います。会社の目標をきちんと共有し、本人が立てた目標が方向とずれていないかを一緒に確認し、月に一度は振り返りの面談を行う。この枠組みがあれば、社員は自由のなかで責任をもって動けます。むしろ、与えられた数字よりも本人が選んだ目標のほうが、達成への工夫は生まれやすいものです。
Q. 目標管理面談では、具体的に何を話せばよいのでしょうか。
達成度を問い詰めるのではなく、「どこがうまくいき、どこでつまずいているか」を本人に語ってもらうことが中心です。そのうえで、必要な支援や、取り除くべき障害を一緒に探します。上司は答えを出す人ではなく、聞き役・伴走者に徹する。三十分ほどでも、前に進めるための場になります。
Q. 中小企業でも、目標管理制度を導入できますか。
はい、むしろ人数が少ない中小企業のほうが、社長や上司の思いが一人ひとりに届きやすく、導入しやすい面があります。立派な制度書式は必要ありません。会社の方向を共有し、本人に目標を立ててもらい、月に一度話をする。この三つから始めれば十分です。
Q. 目標が未達だったとき、どう対応すればよいですか。
本人の努力不足を責める前に、まず「その目標の達成を邪魔している段取りや環境はなかったか」を一緒に見直してください。デミングが説いたように、成果の多くは仕組みが左右します。原因を仕組みに求める姿勢は、次の一手を建設的にし、社員の信頼も守ります。
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| 観点 | 一般的な管理職研修 | 村瀬式ドラッカー7つの原則研修 |
|---|---|---|
| 育てる人材 | 組織を管理する管理職 | 組織に変化を生むチェンジリーダー |
| 分かりやすさ | ドラッカーは難解で実践しにくい | 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化 |
| 定着 | 一過性で終わりがち | すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着 |
| 伝え方 | 知識を頭で理解させる | 情熱を込め、心から腹落ちさせる |
| 実績 | ― | 導入257社以上/受講1,520名以上 |
情熱が、組織に火をつける
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でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
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理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。
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