全国経営者団体連合会の季刊誌『スクエア21・35周年号』に村瀬のドラッカー・セミナーの記事が掲載されました。

8月29日(水)@帝国ホテル・ゴールデンライオン
村瀬弘介(日本リーダーシップ・オブ・マネージメント株式会社代表取締役/ドラッカー学会会員)

 第九期の経営トレーニング講話もいよいよ最終回。『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版)を上梓したばかりの村瀬弘介氏が、“ドラッカー伝道師“として、日本でもっとも分かり易いドラッカー講義を披露してくださいました。

 この講義も最終回となりましたが、今回は皆さんにも読んで頂いたドラッカーの『マネジメント 基本と原則[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社)を中心にお話ししたいと思います。

 まずは起業家精神についてです。起業家の機能は二つ。ひとつがマーケティングであり、顧客を知り抜くということ。もうひとつがイノベーションで、未知の領域へ挑戦していくことです。

 ドラッカーはイノベーションを勇気であると言っています。そしてイノベーションの第一目標は「廃棄」であるといいます。「廃棄」とは何かと言いますと、組織の中で成果が上がらなくなり陳腐化したものを捨て去ること。企業を船に例えれば、船底には牡蠣殻のような航行を遅くするようなものがいっぱい付いているから、まず廃棄することを考えよ、と言います。

 経営は高い成果を上げ続ける事が重要です。そのために事業の効果性を定期的に見直すための「体系的廃棄」の仕組みを作ることが必要なのです。

 イノベーションの弊害となるのは業界の固定観念と過去の成功体験であり、それらを疑い抜かなくてはなりません。なぜイノベーションが必要かと言えば、市場・顧客は常に進化して止まないからです。

 外部環境が変化していくのに自社が変化できなければ、退化していることになります。
イノベーションを起こすためには、常に未来への視点で事業を創り変える必要があるのです。

※ここでアップルのCM『クレイジー・ワンズ(The Crazy Ones)』を鑑賞。

 アップルの映像に関連しますが、19世紀アメリカの思想家でラルフ・ウォルドー・エマソンという人がいます。『自己信頼』という本で有名ですが、自己啓発の祖といわれ、いかに自分自身を狂信的に信じられるかということを言った人で、次のような言葉を残しています。

「自分自身を最大に利用しなさい。あなたにとってあるのはそれだけなのです」

「たえずあなたを何ものかに変えようとする世界のなかで、自分らしくありつづけること、それがもっともすばらしい偉業である」

「誤解されるのはそんなに悪いことだろうか。ピタゴラスは誤解された。ソクラテス、イエス、ルター、コペルニクス、ガリレオ、そしてニュートンも誤解された。古今のあらゆる清純で賢明な魂も誤解を受けた。偉大であるということは誤解されるということだ」これらの言葉は、周囲に迎合せず、イノベーターであり続けなさいということです。

 また、いかに働く人に誇りを持ってもらうかという課題について、ドラッカーは言います。

「人は誇りあるものの一員たることを必要とする。人生と仕事に意味を必要とする。絆と心情の共有を必要とする」そしてドラッカーは「自己目標管理」の重要性について述べます。自己管理は強い動機付けをもたらすのです。

 従業員の方々に注意を促して欲しいのは、「管理」ではなく自分を改善し伸ばしていく、それは強い動機付けであり、目標に向けて自分の仕事を適正化して評価できることです。つまり「自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである」ということです。

ドラッカーは、リーダーシップとは一貫した価値観だと言いました。
ドラッカーとは、皆さんにとってひとつのインスピレーションなのです。

 ピーター・ドラッカーはホロコーストを目の当たりにしたユダヤ人であり、同胞が300万人、ナチスに殺されるという経験をしています。

 彼が『マネジメント』を書いた理由は、現代の企業経営者は自由民主主義の最後の担い手であり、皆さんが高い成果を上げることによってこそ、続く世代に平和な社会を残すことができる、そのために経営者を鼓舞するためでした。