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経営とは、マーケティング(顧客を深く理解すること)とイノベーション(新しい価値を創ること)を通じて、あらたなファンを創造し続ける活動です。ドラッカーは、企業の目的を「顧客の創造」であると定義しました。売上や利益は、その顧客創造がうまくいった結果として、後からついてくるものにすぎません。
この原理原則は、社長や一部の幹部だけが分かっていればよいものではありません。すべての社員が理解し、日々の業務のなかで「自分はいま、誰のどんな満足を創り出しているのか」を意識することで、はじめて組織全体が顧客創造へ向かって動き出します。
この記事でまとめたこと
なぜ今、全社員に「起業家精神」が必要なのか
細分化されたパーツの中の作業だけをこなすのではなく、経営全体を自分の仕事のなかに意識する。それができたとき、人は起業家的な思考を持つようになります。
昔のように、企業のある一部で、細分化された仕事だけをおこなって人生を終える人は、少なくなりました。情報化社会となった今、世界にはパソコン一台でも起業できる、あらゆるチャンスが転がっています。すべての人が、組織からリーダーシップを取り戻し、起業家的に生きる時代が、すぐそこまできています。
そのときに身につけておくと効果的なのは、管理職としての管理スキルではありません。一からビジネスを立ち上げられる起業家スキルこそ、組織のなかにいても、そして万一、組織から離れて一人になったときにも、あなたを支える最強の学問になります。
起業家とは、明日、組織がなくなってしまったとしても、一からビジネスを創造できる、創造性に富んだ生き物です。マーケティングとイノベーションを使いこなし、ファンである顧客を創造し続けられる人のことを指します。
「これからの管理職は、管理的であってはならない、起業家的でなくてはならない」。ドラッカーはそう言いました。組織を管理するだけでは、一銭の利益も生まれません。起業家的にマーケティングとイノベーションで事業機会を追求するからこそ、組織に大きな利益がもたらされるのです。
顧客創造とは何か ― マーケティングとイノベーションの二つの機能
ドラッカーは、企業には二つの基本的な機能しかないと述べました。マーケティングとイノベーションです。この二つだけが成果を生み、それ以外の活動はすべてコスト(費用)にすぎない、という考え方です。
マーケティング ― 顧客を理解し、売り込みを不要にする
マーケティングとは、広告や販促のテクニックのことではありません。顧客を深く理解し、その顧客に本当に合った商品・サービスを用意することで、「売り込まなくても自然に売れる」状態をつくることです。顧客が何に困り、何を求め、何を価値と感じているのか。そこを起点に考える姿勢そのものが、マーケティングの本質です。
全社員がこの視点を持てば、経理も、製造も、事務も、それぞれの仕事の先にいる顧客が見えてきます。「この作業は、最終的にどの顧客のどんな満足につながるのか」を問い続けることが、部門を越えた顧客創造の第一歩になります。
イノベーション ― 新しい満足を生み出す
イノベーションとは、必ずしも大発明を意味しません。既存の商品の使い方を変える、提供の仕方を工夫する、これまで見過ごされてきた小さな不満を解消する。そうした地道な改善の積み重ねも、立派なイノベーションです。現場の社員が日々感じている「ここが不便だ」「もっとこうできたら」という気づきこそ、イノベーションの源泉になります。
全社員に起業家精神を宿すための実務ステップ
理念だけでは、組織は変わりません。中小企業が「顧客創造の起業家精神」を全社に根づかせるには、日々の運用に落とし込むことが欠かせません。ここでは、明日から着手できる具体的な手順を挙げます。
1. 全員に「わが社の顧客は誰か」を言語化させる
まず、自社の顧客が誰なのかを、社員一人ひとりの言葉で書き出してもらいます。答えがバラバラであっても構いません。むしろ、そのズレを共有することが出発点です。顧客像を共通言語にできれば、日々の判断の軸がそろっていきます。
2. 自分の仕事と顧客のつながりを描かせる
「自分の担当業務が、最終的にどの顧客のどんな満足に結びついているか」を、各人に一枚の紙で描いてもらいます。直接お客様と接しない部署ほど、この作業に意味があります。自分の仕事の意味が顧客につながった瞬間、人は指示待ちから機会追求へと変わっていきます。
3. 現場の「気づき」を吸い上げる仕組みをつくる
イノベーションは現場から生まれます。日報や週次ミーティングのなかに、「顧客のこんな声を聞いた」「ここに不便があった」を報告する枠を一つ設けるだけでも十分です。大切なのは、出てきた気づきを経営が真剣に受け止め、小さくても実行に移すことです。実行された経験が、社員の当事者意識を育てます。
4. 小さな裁量を委ねる
起業家精神は、責任と裁量のあるところに育ちます。予算や判断の一部を現場に委ね、失敗を責めない。この土壌があってはじめて、社員は自分の頭で顧客創造を考えるようになります。
管理型思考から起業家型思考への転換
組織のなかで働き方が自由になり、副業も広く認められるようになった今、組織人がもっとも身につけるべき学問は、起業家学、すなわちドラッカーが説いた事業創造とイノベーションの体系です。
ご自身の考えを、管理職という組織への依存・守りの姿勢から、事業を自ら構築できる起業家へと進化させていってください。ビジネスで最強の、起業家的なビジネスパーソンとして、機会追求を日々のビジネスで心がけてみてください。
そのとき、あなたの前に広がるビジネスフィールドは、大きくパラダイムシフト(視野の転換)を起こすでしょう。見えるものすべてが事業機会となり、あなたは使命に満ちた、力強い起業家へと進化していきます。
今、この瞬間から、組織のなかにいながら、起業家として生きてください。そして組織のリーダーは、すべてのメンバーに、起業家としての思考と、顧客創造の経営、その土台となるドラッカーを習得させてください。あなたの組織は、より攻撃的に、より機会志向に進化していきます。起業家的であることこそ、現代社会における最強のビジネスのスタンスなのです。
まとめ
顧客創造の起業家精神とは、一部の経営者だけのものではなく、全社員が日々の仕事のなかで宿すべき姿勢です。経営の本質は、マーケティングで顧客を理解し、イノベーションで新しい満足を生み出し、あらたなファンを創造し続けること。この原理原則を、社員一人ひとりが「自分ごと」として捉えたとき、組織は指示待ちの集団から、機会を追求する起業家集団へと変わります。まずは「わが社の顧客は誰か」を全員で言語化するところから、始めてみてください。
顧客創造・起業家精神に関するよくある質問
顧客創造とは、具体的にどういう意味ですか。
ドラッカーが「企業の目的」と定義した言葉で、あらたな顧客・ファンを生み出し続けることを指します。単に新規客を獲得することではなく、マーケティングで顧客を理解し、イノベーションで新しい価値を提供することによって、これまで満たされていなかった需要を掘り起こし、顧客を「創り出す」という考え方です。
なぜ管理職にも起業家精神が必要なのですか。
ドラッカーは「これからの管理職は、管理的であってはならない、起業家的でなくてはならない」と述べました。組織を管理するだけでは利益は生まれず、マーケティングとイノベーションで事業機会を追求してはじめて、組織に利益がもたらされるからです。守りの管理から、攻めの機会追求へと発想を変えることが求められます。
中小企業でも全社員に起業家精神を根づかせられますか。
可能です。むしろ社員数が限られる中小企業のほうが、一人ひとりの仕事と顧客のつながりが見えやすく、浸透させやすい面があります。「わが社の顧客は誰か」の言語化、現場の気づきを吸い上げる仕組みづくり、小さな裁量の委譲といった手順を、日々の運用に組み込むことから始められます。
マーケティングとイノベーションは、どう違うのですか。
マーケティングは「顧客を深く理解し、売り込まなくても売れる状態をつくること」、イノベーションは「新しい満足・価値を生み出すこと」です。前者が既存の顧客理解を深める働きだとすれば、後者は新しい需要を創り出す働きです。ドラッカーは、この二つだけが成果を生む機能であり、それ以外はすべてコストだと述べています。
起業家精神を高めるために、まず何から始めればよいですか。
自分の担当業務が、最終的にどの顧客のどんな満足につながっているのかを書き出すことをおすすめします。日々の作業を顧客の満足という視点から捉え直すだけで、指示待ちの姿勢から、自ら機会を探す起業家的な姿勢へと、思考が切り替わっていきます。
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