組織のマーケティング感性を高める

企業は、自社の商品よりも、顧客に最大の関心を持つべきです。

顧客に関心を持つことで、ビジネスに大きなパワーを得ることができます。

事業の勝敗を決めるのは、商品・競合ではありません。

事業の主人公は顧客です。顧客に対する感度(顧客を感じる能力)をマーケティング感性と言います。

組織のマーケティング感性を高める必要があります。

次のワークで行います。

マーケティング感性とは何か

マーケティング感性とは、ひとことで言えば、顧客を感じ取る力のことです。目の前のお客様が本当は何に困っていて、何を求め、どんな言葉に心を動かすのか。それを察知する感度の高さを指します。

ドラッカーは、事業の目的は「顧客の創造」であると述べました。そして、そのために企業が持つべき機能は、マーケティングとイノベーションの二つだけだとも言っています。つまり、マーケティングは営業部門だけの仕事ではなく、事業そのものの土台なのです。

ここで多くの経営者が誤解しがちなのは、マーケティングを「販売のテクニック」だと捉えてしまうことです。広告の打ち方、チラシの配り方、価格の付け方。もちろんそれらも大切ですが、それは枝葉にすぎません。根っこにあるのは、顧客のことをどれだけ深く感じられているか、という感性です。

同じ商品を扱っていても、売れる会社と売れない会社があります。同じ営業資料を渡しても、契約を取ってくる人と取れない人がいます。この差の多くは、才能ではなく、顧客への感度の差から生まれています。

マーケティング感性が高い組織の特徴

マーケティング感性が高い組織には、共通した空気があります。それは、社内の会話の中心に、いつも顧客がいるということです。

感性の低い組織では、会議の話題が「自社の都合」で埋め尽くされます。今月の数字が足りない、この作業は面倒だ、あの部署が動かない。主語がいつも自分たちです。

一方、感性の高い組織では、自然と「お客様はどう感じるか」という問いが出てきます。この納期でお客様は困らないか。この案内文でお客様は不安にならないか。主語が顧客に移っているのです。

中小企業にとって、この違いは決定的です。大企業のように潤沢な広告費を投じることができない分、一人ひとりの社員が持つ顧客への感度こそが、そのまま競争力になるからです。

なぜ中小企業ほどマーケティング感性が武器になるのか

規模の小さな会社は、大手と同じ土俵で戦えば不利に見えます。資金も人手も知名度も限られています。しかし、顧客との距離の近さという一点においては、中小企業のほうが圧倒的に有利です。

社長自身がお客様と直接話せる。現場の社員がお客様の表情を毎日見ている。この近さを活かせば、大企業が調査に何百万円もかけて得るような顧客理解を、日々の仕事の中で自然に積み上げられます。

問題は、その貴重な情報が組織の中で共有されず、個人の頭の中に眠ったまま消えていくことです。だからこそ、感性を「個人の勘」で終わらせず、「組織の力」に変える仕組みが必要になります。そのための第一歩が、次のワークです。

組織のマーケティング感性を高めるワーク

まずは自分の仕事にとって、顧客志向の具休的な行動を10分以内でできるだけ数多く付箋に粛いて張り出して下さい。

顧客志向の具体的な行動を書き出し、組織で共有することで、感性を高めることができます。

10分で5個しか書けない人もいれば30個も書ける人もいます。

この差が、マーケティング(顧客志向)感性の差なのです。

多く書ける人のビジネスがうまくいく可能性は高いのです。

なぜならば、常日頃、顧客に向けての感性の高い顧客志向の人だからです。

感性の高い人の感覚を共有し、組織全体の感性を高めるのです。

天才的な商人・マーケターと言われる人は、マーケティング感性を磨いているから、顧客に支持され、売れるビジネスが作れるのです。

例えば、松下幸之助氏は、接待時に、座布団の表裏の配置まで、細かく気を配ったそうです。

成功の裏には、顧客への圧倒的な気遣いがあるのです。

マーケティング感性(顧客への思い・関心)を高め続けることを目的にワークを定期的に実践し、組織の持つ感性を高め続けます。

ワークを効果的に進める手順

このワークは、ただ付箋を書かせるだけでは効果が半減します。組織の感性を本当に引き上げるには、進め方に少し工夫が必要です。実際の研修現場で成果の出ている流れを紹介します。

一つ目のステップは、個人で書き出す時間です。制限時間は10分。ここで大切なのは、正解を探させないことです。「顧客のためにできる小さな行動」を、質より量で、思いつくままに付箋へ書いてもらいます。電話を三コール以内で取る、見積書に一言添える、雨の日に傘を貸す。どんなに小さくても構いません。

二つ目のステップは、全員で張り出して眺める時間です。付箋をホワイトボードや壁に貼り、全員で見渡します。ここで「こんな視点があったのか」という気づきが生まれます。他人の付箋が、自分の中になかった顧客への視点を教えてくれるのです。

三つ目のステップは、似た行動をグループにまとめる時間です。集まった付箋を、「スピード」「気遣い」「情報提供」といった切り口で分類していきます。これによって、自社が顧客に対してどんな価値を提供できているか、逆に何が抜け落ちているかが一目で見えてきます。

四つ目のステップは、明日から実行することを一つ決める時間です。たくさん出たアイデアの中から、部署やチームとして「まずこれをやる」という行動を一つだけ選びます。多くを決めても続きません。一つに絞ることが、定着の秘訣です。

中小企業での実践例

ある地方の設備工事会社では、このワークを毎月の朝礼に組み込みました。最初は「顧客志向の行動」と言われても五個しか出てこなかった社員が、三か月後には二十個近く書けるようになったといいます。

変化はそれだけではありませんでした。現場の職人が、作業後に必ず床を掃除して帰るようになった。事務の担当者が、請求書に手書きの一言を添えるようになった。小さな行動の積み重ねが、やがて「あの会社は丁寧だ」という評判を生み、紹介による受注が増えていったのです。

大切なのは、一度きりのイベントで終わらせないことです。マーケティング感性は筋肉に似ています。使わなければ衰え、使い続ければ育ちます。月に一度でも定期的に実践することで、顧客を感じる力が組織の習慣として根づいていきます。

感性を鈍らせる落とし穴

せっかく高めた感性も、放っておくと簡単に鈍ります。とくに注意したいのは、社内の論理が優先され始めるときです。

繁忙期になると、人はどうしても効率を優先します。すると、いつのまにか会話の主語が顧客から自分たちに戻ってしまう。この作業のほうが楽だから、この手順のほうが早いから。そうした「自社の都合」が積み重なると、顧客への感度は静かに失われていきます。

もう一つの落とし穴は、成功体験に安住することです。かつてお客様に喜ばれたやり方が、いつまでも通用するとは限りません。顧客の求めるものは移り変わります。過去の正解にしがみついた瞬間、感性は止まります。だからこそ、感性を高めるワークは「継続」に意味があるのです。

まとめ

事業の主人公は、商品でも競合でもなく、顧客です。その顧客をどれだけ深く感じ取れるかという力が、マーケティング感性です。

マーケティング感性は、一部の天才だけが持つ特別な才能ではありません。顧客志向の具体的な行動を書き出し、組織で共有し、定期的に実践することで、誰もが、そして組織全体が高めていけるものです。

中小企業にとって、顧客との近さは最大の強みです。その強みを個人の勘で終わらせず、組織の習慣に変えたとき、会社は大手にはない独自の競争力を手に入れます。今日紹介したワークを、ぜひ自社の会議や朝礼に取り入れてみてください。

マーケティング感性に関するよくある質問

マーケティング感性は生まれつきの才能ですか

いいえ、後天的に高められる力です。マーケティング感性の正体は、顧客志向の具体的な行動をどれだけ思いつき、実践できるかという点にあります。行動を書き出し、他者と共有し、繰り返し実践することで、感度は着実に育っていきます。最初は五個しか書けなかった人が、続けるうちに何十個も書けるようになるのは珍しいことではありません。

マーケティング感性と全社マーケティングはどう違いますか

マーケティング感性は、一人ひとりが顧客を感じ取る力を指します。全社マーケティングは、その感性を営業部門だけでなく、製造・事務・経営を含む会社全体に広げて、組織ぐるみで顧客に向き合う考え方です。ドラッカーが「マーケティングは事業全体の機能である」と述べたように、感性を個人から全社へ広げることで、本当の意味での全社マーケティングが実現します。

ワークはどのくらいの頻度で行えばよいですか

月に一度を目安に、定期的に続けることをおすすめします。マーケティング感性は使わなければ鈍り、使い続ければ育つ性質があります。朝礼や月次会議の中に短時間でも組み込み、習慣として繰り返すことで、顧客を感じる力が組織に定着していきます。単発のイベントで終わらせないことが最大のポイントです。

少人数の会社でも効果はありますか

むしろ少人数の会社ほど効果が出やすいと言えます。社員が顧客と直接接する機会が多いため、現場のリアルな気づきがそのまま付箋に反映されます。全員の視点を張り出して共有すれば、一人では気づけなかった顧客への配慮が組織全体に広がります。規模が小さいほど、決めた行動を全員で実行に移しやすいという利点もあります。

効果が出ているかはどう判断すればよいですか

まずは、社員が書き出せる顧客志向の行動の数が増えているかを見てください。数が増えるほど、顧客への感度が高まっている証拠です。加えて、顧客からの感謝の言葉、リピートや紹介の増加、クレームの減少といった変化も、感性が組織に根づいてきたサインです。数字だけでなく、社内の会話の主語が「自分たち」から「お客様」へ移っているかにも注目してみてください。

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