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エンゲージメントを高めるために、社長が語るべきもの
エンゲージメントが高い組織は、管理が行き届いている組織とは限らない。
人が「やらされている」のではなく、「意味を感じて動いている」状態。
その土台にあるのが、リーダーのあり方だ。
ドラッカーは一貫して、マネジメントの本質を「人」に置いてきた。
そして、リーダーにしかできない役割を、極めて明確に示している。
リーダーシップとは、権力ではなく責任である
ドラッカーはこう語る。
リーダーシップとは、人を支配する権力ではない。
人に成果を上げさせる責任である。
社長になったから偉いわけではない。
役職があるから人の上に立つわけでもない。
人を生かし、組織として成果を出させる責任を引き受けている存在。
それがリーダーだ。
そのもとで、人が生き生きと働き、
自分の仕事の存在意義や大義を感じながら、
日々やりがいをもって働ける状態をつくる。
それが、リーダーの存在意義だ。
弱みを直すのではなく、強みを生かす
ドラッカーは、人材についてこう言う。
人の弱みは、平凡にすることさえ難しい。
強みから卓越させよ。
人の弱みを指摘し、是正し続けても、
組織は強くならない。
強みを爆発させ、弱みを補い合う仕組みをつくること。
それがリーダーの仕事だ。
人のエネルギーが生きる組織は、
管理ではなく、構造と意味によって動き始める。
リーダーの仕事は「働く人の視点を高めること」
ドラッカーは、リーダーシップをこう定義している。
リーダーシップとは、働く人の視点を高め、人格を磨き、制約を超えさせることである。
リーダーは、山で言えば山頂に立つ存在だ。
誰よりも遠くの景色が見える。
一方で、現場で働く人は、
日々の売上や業務で精一杯だ。
だからこそ、リーダーが語る必要がある。
この仕事が、誰に、どんな価値を届けているのか。
このビジネスが、社会にどんな意味を持っているのか。
それを、高い視座から言葉にして伝える。
働く人の魂を鼓舞できるのは、リーダーしかいない。
管理はAIでもできるが、鼓舞は人にしかできない
戦略を立てる。
計画をつくる。
PDCAを回す。
それらは確かに大切だ。
しかし、それだけならAIでもできる。
ドラッカーは言う。
すべてを整えたあと、最後にリーダーがやることは、働く人を鼓舞することである。
社長の存在や言葉が、
働く人の視点を高め、
「この会社で面白いことができそうだ」
と思わせているか。
そこが、エンゲージメントの分かれ道になる。
人は、論理ではなく感動で動く
人の心が動く瞬間には、共通点がある。
それは、語る本人が本当に感動していることだ。
リーダー自身が感動していない言葉では、社員の心は動かない。
これは音楽も、仕事も同じだ。
形だけ整えた言葉より、
多少つたなくても、魂から出た言葉の方が伝わる。
ドラッカーが重視したのが、「真摯さ」だ。
真摯さとは、
単なる真面目さではない。
自分の魂に対して誠実であること。
世間の正解や他人の評価よりも、
自分が心から信じていることを信じる。
それが、リーダーの言葉に力を与える。
事業の原体験を語れるのは、社長しかいない
なぜ、この事業をやっているのか。
この仕事で、
一番うれしかった瞬間は何だったのか。
誰に喜んでもらえたとき、
心が震えたのか。
その原体験に、事業の使命がある。
理屈や戦略ではなく、
体験から生まれた言葉は、人を動かす。
鉄道清掃の仕事を「人を送り出すおもてなし」と再定義した企業のように、
仕事に意味を与えることで、人の姿勢は一変する。
それを言語化し、伝えられるのは、
社長という立場の人間だけだ。
エンゲージメントの源泉は、人間中心の経営にある
ドラッカーは、
マネジメントとは人の尊厳のことであると考えた。
戦略も、計画も、制度も、
すべては人を生かすための手段にすぎない。
最終的に問われるのは、
「あのリーダーのもとで働けてよかった」と思われるかどうか。
それが、人を中心に据えた経営の到達点だ。
今回まとめ(人を活かすドラッカー研修のポイント)
- 【1】 社長自身の「事業の原体験」を言葉にし、社員に語る
- 【2】 管理や正論だけでなく、感動や使命を自分の言葉で伝える
- 【3】 働く人の視点を高める視座から、仕事の意味と価値を示す










