この記事でまとめたこと
【採用・雇用はマーケティングである(ドラッカー)】
優れた組織は有能で働く意欲の高い社員を常に惹きつける努力が必要である。
これは消費者を惹きつけるマーケティングの努力と同様である。
働くものが、敬意を持って扱われ、生産的な仕事を生き生きと実現できる職場でなければ、
有能な社員は去り、組織文化は荒れていく・・そして組織の力は衰退することになる。
【参考:マネジメント(ダイヤモンド社)】
人材の流動性が高まり、また労働人口の減少とともに、現代の企業の採用、また優秀な人に働き続けてもらうよう雇用を維持することは非常に難しい時代を迎えています。
このような時代に、組織は、採用自身を自社を売り込む「マーケティング戦略」と同様に考え他社に差別化した明確な自社の魅力を伝えていかなければなりません。
ドラッカーは、今後の組織の採用・雇用についてはボランティアの精神が重要になると述べます。
ボランティアは、報酬をもらわなくても、仕事自体から最大のモチベーションと精神的報酬を得ます。
お金をもらう代わりに精神的充足・意義を得て、自らの血と汗と涙を差し出すのがボランティアなのです。
今後は営利組織でもこのような仕組を創らなければ、優秀な雇用を継続することは困難です。
ボランティアの精神・つまり仕事自体から満足を得てもらう組織をつくるためには、次の5点が重要になります。
【ドラッカーの人が生きる会社の5つの条件】
1仕事自身が生産的であること(意義のあるものである)
=仕事自体から最高のモチベーションを得られる
2職場で人間的敬意を持って遇せられること
3自らの成果をきっちりフィードバックでき、成長できる
4成果がきっちりと組織で評価される(正しい評価制度がある)
5プロフェッショナルとして成長できる教育支援がある
【※ドラッカー理論をもとに著者が作成】
自社の仕事においてこの5点が実現されているか、精査されてみて下さい。
組織は人でできています。
組織の成長とは、人の成長です。
いくら技術が発達しても、組織の最大の資源は「人」なのです。
ドラッカーを軸に、自社の人財・採用戦略を構築されて下さい。
■現場のアクションプラン
【1】「自社で働く魅力」を一つ、言葉にする
給料や休日といった条件だけでは、良い人材は惹きつけられません。この会社で働くと、どんな成長ができるのか。どんな仕事の意義があるのか。他社にはない魅力を、まず社長自身が一つ、はっきり言葉にしてみてください。それが採用の出発点です。
【2】今いる社員が、誇りを持って働けているか確かめる
新しい人を探す前に、今いる社員を大切にする。敬意を持って接し、成果を正しく認める。今いる人が生き生きと働いている会社には、良い人が自然と集まってきます。逆に社内が荒れていれば、どんな求人広告も効きません。
【3】採用を「選ぶ」から「選ばれる」へ切り替える
かつては企業が人を選ぶ時代でした。今は、働く人が会社を選ぶ時代です。面接の場も、こちらが見極める場であると同時に、自社が選ばれる場でもある。相手に敬意を持って向き合う姿勢が、そのまま自社の評判をつくります。
■成果につながる方法とそうでない方法
| 成果につながる方法 | 成果につながらない方法 |
|---|---|
| 自社ならではの働く魅力を伝える | 条件・待遇だけで人を集めようとする |
| 今いる社員を大切にし、定着を高める | 採用だけに力を入れ、離職を放置する |
| 仕事の意義を感じられる職場をつくる | ただ働きやすいだけの職場にする |
| 成果を正しく評価し、成長を支える | 評価があいまいで、成長機会がない |
| 応募者にも敬意を持って向き合う | 企業が選ぶ側だという姿勢で臨む |
■経営者へのメッセージ
人が採れない、採ってもすぐ辞めてしまう。今、多くの社長さんが同じ悩みを抱えています。求人にお金をかけ、条件を良くしても、なかなか思うようにいかない。その苦しさは、私もよく耳にします。
ドラッカーは、採用と雇用はマーケティングと同じだと言いました。お客様に選ばれるために自社の価値を磨くのと同じように、働く人に選ばれるためにも、自社の魅力を磨かなければならない。この視点の転換が、いま何より大切です。
そしてもう一つ。良い人を外から探すことばかりに気を取られがちですが、本当の勝負は、今いる社員をどれだけ大切にできるかにあります。今いる人が誇りを持って働いている会社には、良い人が自然と集まる。社員の一人ひとりが、そのまま自社の一番の求人広告になるのです。
すぐに大きく変わるものではないかもしれません。それでも、社員を大切にするその姿勢は、必ず伝わっていきます。人を大事にする会社が、最後に人に恵まれる。私はそう信じています。
■参考にしたい採用・人材に関する名言
「企業の目的は、顧客の創造である。したがって企業は、マーケティングとイノベーションという二つの基本的な機能をもつ。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』
「人こそ最大の資産である。組織の違いは、人がその力を発揮できるようにしているかどうかにある。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』
「事業の目的は人である。人が事業をなす。」
── 稲盛和夫
「企業は人なり。事業の成否は、そこで働く人によって決まる。」
── 松下幸之助
■クライアントの実践事例
そこで私がお願いしたのは、採用をマーケティングとして捉え直すことでした。まず、今いるベテラン社員に「なぜこの会社で働き続けているのか」を聞いてもらったのです。すると、「困ったとき社長が必ず助けてくれる」「家族の事情に配慮してもらえる」といった、社長自身が当たり前だと思っていた魅力が、いくつも出てきました。
その言葉を、そのまま求人の言葉に使いました。飾らず、実際に働いている人の声として伝えたのです。同時に、今いる社員一人ひとりの働きを、これまで以上に言葉にして認めるようにしました。
半年後、応募の数が少しずつ増え始めました。何より変わったのは、入った人が辞めなくなったことです。「この会社は人を大事にする」という評判が、社員の口を通じて静かに広がっていった。社長さんは「うちにも、ちゃんと魅力があったんですね」と、少し照れくさそうに話してくれました。
■採用・雇用に関してよくある質問と実践へのアドバイス
Q. 中小企業では、大企業のような条件を出せません。それでも人は採れますか。
A. 採れます。むしろ中小企業には、大企業にはない強みがあります。社長との距離が近い、若いうちから責任ある仕事を任せてもらえる、一人ひとりが大切にされる。こうした魅力は、待遇では測れない価値です。自社ならではの魅力を、堂々と伝えてください。
Q. せっかく採用しても、すぐ辞めてしまいます。
A. 入口だけを整えても、中が荒れていれば人は残りません。まず、今いる社員が本当に働きがいを感じているかを見つめ直してください。仕事に意義があるか、正しく評価されているか、成長できているか。この土台があってはじめて、人は根を張ります。
Q. ボランティアの精神と言われても、給料を払っている以上、限界があるのでは。
A. 給料をなくせという話ではありません。人は、お金だけでは動かないということです。同じ給料でも、仕事に意義を感じられる会社と、そうでない会社では、社員の姿がまるで違います。給料は土台として、その上に「働く意味」を重ねていく。そこに定着の鍵があります。
Q. 採用がマーケティングだというのが、いまひとつピンときません。
A. お客様に商品を選んでもらうために、自社の価値を磨き、伝えますね。採用もそれと同じです。働く人という「お客様」に選ばれるために、自社の魅力を磨き、伝える。売り込むのではなく、選ばれる会社になる。そう考えると、やるべきことが見えてきます。
なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか
ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。
変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。
難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に
とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。
そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。
「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修
知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。
管理職が育てば、組織そのものが変わっていく
一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。
ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。
貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。
ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介
中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。



