ドラッカーはイノベーションを引き起こすためのポイントを、イノベーションの7つの機会として体系化しました。(ドラッカー著:イノベーションと企業家精神)
イノベーションの7つの機会とは次になります。
【ドラッカーのイノベーションの7つの機会】
1.予期せぬ成功
2.ギャップ
3.プロセスニーズ
4.産業構造の変化
5.人口構造の変化
6.認識の変化
7.新しい知識
今回は、1.予期せぬ成功と 2.ギャップについて解説します。
この記事でまとめたこと
■1.予期せぬ成功
予期せぬ成功とは、これまでになかったような注文があったり、今まで利用しなかった変なお客様や変な問い合わせがあった場合に注目することを言います。
予期せぬ成功は、企業が気づいておらず、既に市場にあるニーズを教えてくれるとドラッカーは言います。
例えば、常温販売のペットボトルを考えてみましょう。
コンビニ、飲料メーカーが考えて常温の売り方を考えたというよりは、健康番組を見たシニアの方や、冷たすぎる飲み物が苦手なお客様から、ペットボトルを常温のまま売って下さいという予期せぬ注文があり、それを商品の売り方としてイノベーションしたものではないでしょうか?
■2.ギャップ
ギャップとは企業の考えている現実とお客様の理想に差がある場合に、それを埋める形の新サービスができることを言います。
例えば、LCCの格安飛行機が出る前は、全ての飛行機はフルラインナップのサービスで、価格も高価で運行されていました。
しかしアメリカのグレイハウンドバス(遠距離バス)のように、飛行機をただの輸送手段として、サービス等はなくていいのでできるだけ安く移動したいと思う顧客が多くいました。
このギャップをついて出たのがLCCの飛行機なのです。
このように顧客のニーズと業界の提供しているサービスにギャップがある場合には、そのギャップ自身を縮めることでイノベーションを起こすことができます。
■現場のアクションプラン
【1】「変なお客様」の注文を、捨てずに記録する
想定外の問い合わせや、これまで相手にしてこなかったお客様からの注文は、つい例外として処理してしまいがちです。そこにこそ、まだ誰も気づいていない市場が隠れています。月に一度、営業と現場で「今月あった予期せぬ注文」を持ち寄る場を作ってみてください。
【2】お客様の「本当はこうしてほしい」を聞き取る
自社が当たり前だと思っている売り方や手続きの中に、お客様が我慢している不便が必ずあります。理想と現実のギャップは、お客様に直接聞かなければ見えてきません。買ってくれた理由より、買うのをためらった理由を聞くほうが、機会は見つかります。
【3】小さく試して、反応を見る
ギャップを埋める新しいやり方が見えたら、全社で一気に変えるのではなく、一部のお客様、一つの店舗、一つの商品で小さく試す。ドラッカーの言うイノベーションは、大発明ではなく、身近な変化への素早い対応から始まります。
■成果につながる方法とそうでない方法
| 成果につながる方法 | 成果につながらない方法 |
|---|---|
| 予期せぬ注文を機会の兆しとして拾う | 例外・イレギュラーとして処理して忘れる |
| お客様と業界のギャップを直接聞き取る | 自社の思い込みで「ニーズはない」と決める |
| 小さく試して反応を確かめる | 完璧な計画ができるまで動かない |
| 身近な変化からイノベーションを起こす | 大発明・新技術だけを追いかける |
| 現場の気づきを全員で持ち寄る | 経営者一人の思いつきに頼る |
■経営者へのメッセージ
イノベーションと聞くと、多くの社長さんが身構えてしまいます。うちには研究所もない、特別な技術もない、と。けれど、ドラッカーが教えてくれる機会は、どれも自社のすぐそばにあるものです。
予期せぬ注文も、お客様が感じている不便も、日々の商売の中に転がっています。ただ、忙しさの中でそれを「たまたま」で片づけてしまうか、変化の兆しとして受け止めるか。その姿勢の違いが、数年後の会社を大きく変えていきます。
特別な才能はいりません。必要なのは、お客様の声に素直に耳を傾け、小さく動いてみる勇気だけです。あなたの会社の現場には、まだ気づかれていない機会が、きっと眠っています。
■参考にしたいイノベーションに関する名言
「イノベーションのための最初の、そして最も重要な機会は、予期せぬ成功と予期せぬ失敗である。」
── ピーター・ドラッカー『イノベーションと企業家精神』
「イノベーションとは、天才のひらめきではない。それは組織的かつ体系的な仕事である。」
── ピーター・ドラッカー『イノベーションと企業家精神』
「企業の目的は、顧客の創造である。したがって企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』
「すでに起こったことのなかに、次に起こることの種がある。」
── ピーター・ドラッカー『イノベーションと企業家精神』
■クライアントの実践事例
私が「その断っている注文こそ、予期せぬ成功の兆しかもしれませんよ」とお伝えしたところ、社長さんは半信半疑ながら、まず既存の商品を家庭用に小分けした試作品を、直売所の一角で売ってみることにしました。
すると、これが評判を呼びました。高齢のご夫婦や一人暮らしの方に、「量が多すぎず、味は本格的」と喜ばれたのです。今では家庭用の小分け商品が、新しい収益の柱の一つに育っています。
社長さんは「断っていた注文の中に、答えがあったんですね」と笑っておられました。変えたのは大きな設備ではなく、お客様の声を機会として受け止める姿勢だけでした。
■イノベーションに関してよくある質問と実践へのアドバイス
Q. うちのような小さな会社に、イノベーションなんて起こせるのでしょうか。
A. むしろ中小企業のほうが有利です。ドラッカーが挙げた七つの機会のうち、予期せぬ成功やギャップは、大きな投資ではなく、お客様との距離の近さから生まれます。社長がお客様の顔を思い浮かべられる会社ほど、変化の兆しに早く気づけます。
Q. 予期せぬ注文が来ても、どれが機会か見分けがつきません。
A. 一度で見分ける必要はありません。まずは記録し、同じような注文が何度か繰り返されるかを見てください。一度きりなら偶然ですが、二度三度と続くなら、そこには見えていないニーズがあります。頻度が、機会かどうかを教えてくれます。
Q. 新しいことを始めると、既存のお客様に迷惑がかからないか心配です。
A. だからこそ、小さく試すのです。全社を挙げて方針を変えるのではなく、一部の商品や店舗で試験的に始めれば、既存の商売を守りながら反応を確かめられます。うまくいかなければ引き返せばよい。小さく始めることが、最大のリスク対策です。
Q. ギャップを埋める新サービスを考えても、社内が動いてくれません。
A. 頭ごなしに指示するのではなく、まず現場の人と一緒にお客様の不便を見に行ってください。自分の目で「たしかに困っている」と気づいた人は、自然と動き始めます。イノベーションは、納得から生まれるのです。
なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか
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ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介
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