ドラッカーは言います。

「全ての商品に同じように経営資源を配分してはならない、商品の集中と選択を行う必要がある。」

いくら売れている商品でも、その勢いが永遠に続くことはありません。市場が成熟し、競合が増え、顧客の関心が別のものへ移っていく。どんな商品も、やがて陳腐化していきます。だからこそ経営者は、商品が生まれてから衰退していくまでのライフサイクルを冷静に把握し、その時期に応じた打ち手を、商品ごとに変えていかなければなりません。

ドラッカーの法則は経営に高い成果を生みますが、その原点にあるのは「集中」というたった一つのコンセプトです。限られたヒト・モノ・カネを、成果の出る一点に集めること。今回はドラッカーの法則を用いて、商品の選択と集中、つまり商品の棚卸をどう進めるかを解説していきます。

選択と集中とは何か ― 中小企業ほど効く経営の原則

「選択と集中」という言葉は、大企業の事業再編の文脈でよく使われます。しかし本来この考え方が最も威力を発揮するのは、経営資源が乏しい中小企業です。

大企業なら、多少筋の悪い商品を抱えていても、他の稼ぎ頭が全体を支えてくれます。ところが社員数十名の会社では、営業マン一人の時間、開発担当者一人の労力、わずかな販促予算をどこに振り向けるかが、そのまま会社の未来を決めてしまう。売れない商品にエースを張り付けている間、本当に伸ばすべき商品が放置される。これが中小企業でよく起きている、静かな資源の浪費です。

ドラッカーは、経営資源を成果の出るところへ集中させよと繰り返し説きました。裏を返せば、成果の出ない領域からは撤退する勇気を持て、ということです。選択と集中とは、何をやるかを決めることであると同時に、何をやめるかを決めることでもあるのです。

ドラッカーの商品の選択と集中のコンセプト【著書:創造する経営者より】

ドラッカーは著書『創造する経営者』の中で、自社の商品を客観的に分類することの重要性を説いています。ここでは主に次の5つの分野に分けて、商品の棚卸と集中を図っていきます。自社の商品を一つずつ、このどれに当てはまるか当てはめてみてください。

1. 今日の主力商品

現在の売上を支えている主力商品です。頼もしい存在ですが、注意が必要です。すでに成長の頂点を迎えている、あるいは頂点を過ぎている可能性があるからです。

今日の主力商品には、できるだけ追加の経営資源の投入を控え、余力を明日の商品開発へシフトしていくことが求められます。今がピークの商品にさらに人と金をつぎ込んでも、得られるリターンは限られています。

2. 明日の主力商品

事業の明日を担う、次世代の柱になりうる商品です。多くの会社で共通しているのは、この明日の主力商品に対して、期待される将来の売上に見合うだけの経営資源が、まだまったく足りていないという現状です。

商品の持つ可能性に対して、より多くの人・時間・予算を先行して投入していく。ここに勇気を持って資源を寄せられるかどうかが、数年後の会社の姿を分けます。

3. 過去の商品(ノスタルジー商品)

市場から見れば、すでに魅力を失い陳腐化している商品です。それでも整理が難しいのは、自社をここまで支えてくれた功労者だからです。「この商品があったから今の会社がある」という思い入れが強く、経営者ほど手放せません。

しかし市場はすでにこの商品から離れています。感情ではなく、市場の判断という厳しい視点で見定め、投じている経営資源を計画的に縮小していく必要があります。

4. 独善的商品(経営者の我の申し子)

経営者のこだわりや「これは必ず売れるはずだ」という思い込みから始めた商品で、市場からはまったく支持を得られていないものです。

社長は「絶対にいける」という確信から、営業マンにさらなる販促のプレッシャーをかけます。しかし市場の支持がない以上、いくら圧をかけても売れません。やがて社内はしらけムードに包まれ、現場の士気まで下がっていきます。市場の視点をきっちり見定め、傷が浅いうちに退却する判断が要ります。

5. シンデレラ商品

呼んで字のごとく、普段は会社から日の目を浴びていない地味な存在でありながら、市場という王子様に見初められれば大きく花開く可能性を秘めた商品です。

販促にほとんど力を入れていないのに、なぜか顧客からの引き合いが続いている。想定していなかったのに、ぽつりぽつりと着実に売れていく。こうした商品がシンデレラ商品の候補です。しっかりとカタログを整え、正しく販促をかければ、一気にブレイクする可能性を秘めています。

ドラッカーの商品の棚卸と集中において、最も重要なポイントは、このシンデレラ商品を探し出すことにあります。御社にも、そこまで力を入れていないのに、なぜか市場から評価を得ていたり、引き合いが続いている商品はありませんか。それはシンデレラ商品かもしれません。

商品を5分類する具体的な進め方

コンセプトは分かっても、実際に社内でどう進めればよいのか。中小企業の現場で使える手順に落とすと、おおむね次のようになります。

ステップ1 ― 全商品を一覧にして数字を並べる

まず、自社が扱う全商品・全サービスを一枚の表に書き出します。そこへ、直近3年の売上推移、粗利率、そして販促や人にかけているコストを並べます。頭の中の印象ではなく、必ず数字で見える化することが出発点です。

ステップ2 ― 一つずつ5分類に当てはめる

売上が伸びているのか、頭打ちなのか、落ちているのか。手をかけている割に売れているのか、かけていないのに売れているのか。その組み合わせで、各商品を「今日の主力」「明日の主力」「過去」「独善的」「シンデレラ」のどれかに仕分けします。判断に迷う商品ほど、思い入れが判断を曇らせている可能性が高いので要注意です。

ステップ3 ― 資源の移し替えを決める

分類ができたら、過去の商品・独善的商品から人と予算を引きはがし、明日の主力商品とシンデレラ商品へ移し替える計画を立てます。ポイントは、増やす話と減らす話を必ずセットで決めることです。やめる決断がないまま「あれもこれも伸ばそう」とすると、結局どこにも資源が集中せず、選択と集中は絵に描いた餅で終わります。

ステップ4 ― 定期的に棚卸を繰り返す

商品の分類は固定ではありません。今日の主力はいずれ過去の商品へ移り、明日の主力が今日の主力に育ちます。半年に一度、あるいは年に一度、同じ表を見直す習慣をつけることで、選択と集中は一度きりのイベントではなく、経営のリズムになっていきます。

ドラッカーの商品の選択と集中のポイント

要点を整理すると、次の3つに集約されます。

  • すべての商品は、いつか必ず陳腐化する
  • 市場へ向けての商品のライフサイクルを把握する
  • ライフサイクルで商品を分類し、商品ごとに方針を立てる

その目的はただ一つ。限られた経営資源を、過去ではなく未来に向けて、より効果的に投入するためです。過去を守るためではなく、未来をつくるために資源を配分し直す。これが選択と集中の本質です。

ドラッカー経営セミナーでは、ドラッカーの視点による商品の選択と集中について、実際の事例を交えながら詳しく解説しています。

まとめ

選択と集中とは、単に事業を絞ることではありません。すべての商品が陳腐化するという事実を受け入れ、商品のライフサイクルを見極め、過去にしがみつく資源を未来へ振り向けていく、継続的な経営判断そのものです。

中小企業にとって、経営資源が限られていることは弱みではありません。集中せざるを得ないからこそ、一点に力を集めたときの突破力が生まれます。まずは自社の商品を5つに分類してみること。そして最も見つけたいのは、まだ気づかれていないシンデレラ商品です。今日の棚卸が、数年後の主力商品を育てる第一歩になります。

選択と集中に関するよくある質問

選択と集中と多角化は矛盾しませんか

矛盾しません。多角化は「複数の事業や商品を持つこと」、選択と集中は「その中で経営資源をどこに厚く配分するか」という別の論点です。商品の数が多くても、資源を成果の出る商品へ集中させていれば、それは選択と集中ができている状態です。逆に、絞り込んだつもりでも過去の商品に資源が残っていれば、集中はできていません。

やめる商品を決めるとき、社員や顧客への配慮はどうすればよいですか

撤退は「すぐに全部やめる」ではなく、段階的に進めるのが現実的です。新規の販促や在庫を止めつつ、既存顧客へのサポートは一定期間続ける。担当社員には、その分の時間を明日の主力商品に振り向けてもらう形で役割を移していく。市場からの撤退と、人や顧客への誠実な対応は、両立できます。

シンデレラ商品はどうやって見つければよいですか

手がかりは「かけている労力」と「得ている反応」のギャップです。販促も営業もほとんどしていないのに、なぜか問い合わせや紹介が続いている商品。それがシンデレラ商品の候補です。売上の大小だけで見ると埋もれてしまうので、コストに対する反応の良さ、という視点で商品一覧を眺め直してみてください。

中小企業でも選択と集中は必要ですか

むしろ中小企業ほど必要です。経営資源が少ないほど、分散させたときの一つあたりの力が弱くなるからです。大企業以上に、限られた人と金をどこへ集中させるかが、そのまま会社の成長速度を決めます。

選択と集中を進めると、リスクが一点に集中しませんか

集中と、無防備な一点賭けは違います。ここで言う集中は、市場が支持し成果が出ている領域へ資源を寄せることです。だからこそ、今日の主力・明日の主力・シンデレラ商品という時間軸の違う複数の柱を持ちながら集中する。過去や独善に資源を残さないことがリスク管理であり、成果の出ない分散こそが本当のリスクです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし、自社の経営や組織にドラッカーをどう活かせばよいか、少しでもお悩みでしたら、ここから先もぜひ読んでみてください。ドラッカーに関心をお持ちの経営者・管理職の方への、補足のご案内です。

なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか

ここまでの「強みを見る視点への切り替え」は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。

変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。

根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない

生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。

とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。

中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則

そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。

いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること

マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。

観点 一般的な管理職研修 村瀬式ドラッカー7つの原則研修
育てる人材 組織を管理する管理職 組織に変化を生むチェンジリーダー
分かりやすさ ドラッカーは難解で実践しにくい 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化
定着 一過性で終わりがち すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着
伝え方 知識を頭で理解させる 情熱を込め、心から腹落ちさせる
実績 導入257社以上/受講1,520名以上

情熱が、組織に火をつける

多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。

これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。


ドラッカー7つの原則研修

「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。


著者:村瀬 弘介(むらせ こうすけ)/経営コンサルタント・著者

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した
「村瀬式ドラッカー・人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。
著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。
熱血の講義で、組織に火をつけ、管理職をチェンジリーダーに進化させる研修に定評がある。