社員が辞めることに頭を悩ませている経営者の方は多いですよね。

職業の流動性が高まり、労働人口が減り続ける現代では、優秀な人材が組織から去ってしまうことは、経営に大きな打撃となります。

今回は、優秀な社員・従業員が辞める理由について考え、ドラッカーの考えを用いて組織力を高め、離職率を下げる方法を考えます。

社員が辞める理由とは?

社員が辞める理由として多いのは、「会社のビジョンや方向性に魅力を感じなくなった」というものです。

入社して間もない頃や若手の時は、目の前の業務に夢中で会社のビジョンを意識する場面も多くはありません。

しかし、実績を残し周囲からも優秀と認められるようになった頃には、この会社で「どうなって行くべきか」というような事も考えるようになります。

このような場面で、会社のビジョンや方向性に違和感を感じたり、そもそも、共感できないと判断した場合、優秀な社員は退職を考え始めてしまいます。

社員が辞めるのを防ぐための対策法

社員が辞めない会社を作るには何をすれば良いのか? それは、「人を活かすマネジメントを行う」ことです。

人を活かす経営としての、最大の原理原則は、ドラッカーのマネジメントです。

ドラッカーは「人を活かす経営・マネジメントの父」とも言われ、彼のマネジメント理論は、Apple・GE・P&G・SONY・セブンイレブン・ユニクロなど世界的企業が、ドラッカーのマネジメントを取り入れて卓越したビジョナリーカンパニーに進化しました。

ドラッカーの「人を活かす経営」を原則とするマネジメント理論は社員のやる気に火をつけ、結果として離職率を下げることに有効なマネジメント理論です。

次章では、ドラッカーの考えをもとに、社員が辞めない組織づくりの3つのポイントをお話します。

社員が辞めない会社をつくるにはどうすればいいのか? 

【社員が辞めない会社を作る3つのポイント】

【1】社員は職場で、敬意をもって、扱われているか?

人が組織を去る理由の多くは、給料や待遇そのものより、「一人の人間として大切にされていない」という感覚にあります。あいさつ、名前を呼ぶこと、意見に耳を傾けること。当たり前に見えるこうした関わりの積み重ねが、社員の「ここにいてよい」という安心感をつくります。敬意は、コストをかけずに今日から始められる、最も効く定着策です。

【2】社員が成長支援される仕組みはあるか?

優秀な社員ほど、「この会社にいて、自分は成長できるのか」を見ています。仕事を任せ、挑戦の機会を与え、その挑戦を上司が支える。成長を実感できる社員は、簡単には辞めません。逆に、同じ作業の繰り返しで先が見えないと感じたとき、人は静かに次の場所を探し始めます。

【3】社員の頑張りを、会社は正しく評価し、報いる仕組みはあるか?

どれだけ頑張っても、見てもらえない、報われないと感じれば、意欲は少しずつ冷えていきます。金銭的な報酬だけでなく、努力を言葉にして認めること、成果を正しく評価することが大切です。評価とは、社員に「あなたの貢献を、会社はちゃんと見ている」と伝える仕組みそのものです。

■社員が辞める組織を立て直すために必要なこととは?

■現場のアクションプラン

【1】社長が自分の言葉で「わが社はどこへ向かうのか」を語る

人はビジョンに共感できなくなったとき、会社を去ります。難しい経営理念でなくてかまいません。「うちは何のために存在し、どこを目指すのか」を、社長が自分の言葉で、繰り返し社員に語ってください。方向が見える会社に、人は残ります。

【2】辞めた社員が「なぜ辞めたのか」を正直に振り返る

退職は、組織からの一番痛烈なメッセージです。辞めた本当の理由を、感情的にならずに振り返る。待遇か、人間関係か、成長の実感か、それともビジョンへの共感か。原因を直視することからしか、立て直しは始まりません。

【3】一人ひとりと、一対一で話す時間を月に一度つくる

多くの離職は、突然ではなく、静かな不満の蓄積から起きます。月に一度、十五分でよいので、仕事の話だけでなく「今、困っていることはないか」を聞く場を持つ。辞める前に本音を話せる関係が、離職を未然に防ぎます。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
会社の向かう先を社長が繰り返し語る ビジョンを掲げただけで放置する
一人ひとりを敬意をもって扱う 社員を替えの利く労働力として扱う
成長できる仕事と機会を与える 同じ作業を任せ続け先を見せない
頑張りを正しく評価し言葉で認める できて当たり前と成果を見過ごす
辞める前に本音を聞ける関係を築く 退職願を出されて初めて事情を知る

■経営者へのメッセージ

優秀な人が辞めていく。これほど経営者の胸をえぐることはありません。時間をかけて育てた社員が去るたびに、「自分の何がいけなかったのか」と、眠れない夜を過ごしておられる方も多いでしょう。

ドラッカーは、人を活かす経営を説き続けた人でした。その根っこにあるのは、「人は本来、働くことを通じて成長し、貢献したいと願う存在だ」という深い信頼です。社員が辞めるのは、給料が少し安いからだけではありません。この会社で大切にされていない、成長できない、向かう先が見えない。そう感じたとき、人は静かに離れていきます。

裏を返せば、敬意をもって扱い、成長を支え、進む方向を示す。この三つを地道に積み重ねれば、人は残り、力を発揮してくれるということです。特別な制度も、大きな予算もいりません。必要なのは、目の前の一人を大切にする、社長の姿勢です。

今いてくれる社員に、あらためて感謝の言葉をかけるところから、始めてみてください。人を大切にする会社は、必ず人に支えられます。

■参考にしたい人材定着に関する名言

「組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』

「人が雇われるのは、強みのゆえであり、能力のゆえである。組織の役割は、人の強みを成果に結びつけることにある。」
── ピーター・ドラッカー『経営者の条件』

「事業の目的は、顧客の創造である。したがって企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「事業は人なり。人を得れば事業は栄え、人を失えば事業は衰える。」
── 松下幸之助

■クライアントの実践事例

私のお客様の、運送業F社(社員45名)の社長さんは、若手の離職が止まらないことに、本当に頭を抱えておられました。せっかく免許を取らせ、一人前に育てた頃に辞めてしまう。「うちは給料も悪くないのに、なぜだ」と、悔しさをにじませて相談に来られたのを覚えています。

そこで私がお願いしたのは、二つのことでした。一つは、社長が朝礼で「うちの会社が地域にとってどんな存在でありたいか」を、自分の言葉で語ること。もう一つは、月に一度、若手一人ひとりと十五分だけ、仕事の悩みを聞く時間を持つことでした。最初は「照れくさい」と渋っておられました。

半年ほど続けた頃、若手から「この会社で長く働きたい」という声が出るようになったそうです。理由を聞くと、「社長が自分たちのことをちゃんと見てくれている、と感じられるようになった」と。翌年の若手の離職は、大きく減りました。

社長さんが変えたのは、給料でも制度でもありません。向かう先を語り、一人ひとりに向き合う。その姿勢を、続けただけでした。

■社員の離職に関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. 給料を上げないと、社員の離職は止められないのでしょうか。

A. 待遇は大切ですが、それだけでは決め手になりません。給料で引き止めた社員は、もっと高い給料を提示されれば、また去っていきます。人が長く残るのは、大切にされ、成長でき、向かう先が見える会社です。まずはお金のかからないこの三つから見直してみてください。

Q. 辞めると言われてから慌てて引き止めますが、たいてい手遅れです。

A. 退職を口にした時点では、心はすでに決まっていることがほとんどです。だからこそ、辞める前に本音を話せる関係を、日頃からつくっておくことが大切です。月に一度の一対一の対話で「困っていることはないか」を聞く。この小さな習慣が、手遅れを防ぎます。

Q. ビジョンを語れと言われても、うまく言葉にできません。

A. 立派な言葉である必要はありません。「うちは地域の役に立つ会社でありたい」「お客様に喜ばれる仕事をしたい」。素朴でも、社長の本心から出た言葉なら、社員には必ず伝わります。飾らず、自分の言葉で、繰り返し語ることが何より大切です。

Q. 一人ひとりと向き合う時間が、忙しくてなかなか取れません。

A. まとまった時間はいりません。月に一度、一人あたり十五分で十分です。それすら難しければ、まず気になる社員一人から始めてみてください。「あなたを気にかけている」という姿勢そのものが伝わることに、意味があります。時間の長さより、続けることです。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。

難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に

とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。

そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。

「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。


ドラッカー7つの原則研修

ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。

貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。

ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。