こんにちは、ドラッカー講師の村瀬弘介です。

経営の実践において、「リーダーシップ」は、よく聞く言葉ですよね。
経営者、管理職は、組織をマネジメントし、リーダーシップを強く発揮することが日々求められます。しかし、よく聞く言葉だからこそ、リーダーシップとは具体的に何をすることなのかを定め、意識して実践していくことが重要です。

今回はリーダーシップの本質を理解していただくために、ドラッカーの定義するリーダーシップ論からリーダーに求められる条件を10個あげて解説します。

■【1】リーダーは真摯でなくてはならない。

ドラッカーは言います。
「リーダーは真摯でなくてはならない。そして真摯さはリーダーが生来もっていなければいけない資質である。」
「真摯さを後天的にセミナーで身に着けることはできない。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

真摯さとは、人間的に誠実、人として信頼できるという意味です。ドラッカーはリーダーシップの本質は、能力でなく、その人間性にあると説きます。リーダーは人間として誠実でなければ務まらないのです。

・人材登用においても、真摯さと有能さで迷った時には真摯さを見る

ドラッカーは言います。
「真摯さは最も大切な資質であり、有能であれど、真摯さに欠けるものをリーダーにしてはならない。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

人間として真摯でないものが、リーダーになれば、組織全体の労働倫理が破壊されてしまします。そのために、リーダーは仕事ができるものであることはもちろん、その前提として人間的に真摯さを備えていることが絶対条件なのです。

■【2】リーダーは、はたらく人を活かさなくてはならない。

リーダーは共に働く仲間を活かし、チームに成果を上げさせる存在です。リーダーひとりだけが、頑張っても成果があがることはありません。チームのメンバーを活かし、チームの中で相乗効果を生み出し、1+1が2、3.10となるように、チームの力を最大化することがリーダーの仕事です。

ドラッカーは言います。
「リーダーシップとは人の強みを活かし成果につなげることである。」
「人が成果を上げるのは、強みによってのみである。」
「弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。」
「人の強みを爆発させ、弱みを中和することがチームの目的である」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

リーダーシップとは、人を活かすことです。そして人を活かすとは、人の強みを活かすこと。リーダーは意図的に、メンバーの強みを見つけ、強みを開発し、強みから成果が上がる組織、そして弱みはメンバーでカバーする組織をつくらなければいけなおのです。

ドラッカーの定義するリーダーシップの本質とは、人を生き生きと働かせ、社会の成果につなげる存在です。

■【3】リーダーは、高い目標を掲げることができなくてはならない。

ドラッカーのリーダーシップとは、チームに「高い」成果をあげさせる責任です。チームに高い成果を上げるためには、リーダーはメンバーに対し、平凡な目標ではなく、高い目標を提示し、実行してもらわねばなりません。

リーダーの提示する目標が平凡な目標では、組織は高い成果を上げることはできません。そのため、高い目標をあげられないものはリーダー失格である。とドラッカーは言います。またリーダー以上に組織が成長することはありません。リーダーの限界が組織の限界なのです。そのため、リーダーはチームの限界を突破させるような高い目標を設定して、その達成に向けて鼓舞する必要があるのです。

近年、働き方改革やゆとり教育の影響で、管理職なのに、そこそこの保守的な目標しかあげられないものが増えてます。これではリーダーの資格はありません。組織に高い成果を上げさせるものが、ドラッカーの定義するリーダーシップです。リーダーは高い目標でメンバーを刺激し、フォローし、目標を達成する必要があるのです。

リーダーの目標設定においては、高い志を反映するものでなくてはならないのです。

■【4】リーダーは、一貫した価値観をもっていなくてはならない。

リーダーシップとは一貫した価値観である。とドラッカーは言います。リーダーはぶれてはいけません。そのためには、自己の経営において、何が正しいのか?何が誤っているかを即断できなければなりません。そのためには、自己の軸となる価値観に導かれている必要がありあす。

価値観とは、自分が心の底から大事にしている信条のことです。リーダーは自分が人生において、経営において、何を大切にしているかという価値観を知らねばなりません。自己の価値観を知り、価値観に即した行動を日々守ってこそ、リーダーの行動に一貫性が生まれます。

・自己の価値観を知るためには、何をすればよいのか?

自己の価値観を知るために、私はドラッカーのリーダーシップ研修において、「価値観ワーク」というものを行います。それは、自己の尊敬するリーダー(歴史上英雄・映画のヒーローを含む)を5名上げてくださいというものです。

自己の尊敬するリーダーは、自己の重視する価値観を体現する存在です、

たとえば、スティーブジョブス(革新性)・マザーテレサ(慈愛)・ロッキー(忍耐強さ)など、尊敬するリーダーから自己の価値観を明らかにすることができます。自己のリーダーシップの一貫性を高めるためにも、このワークを通じ、自分がどんな価値観を大切にしているのかを把握してください。価値観に忠実に動くことで、さらにあなたのリーダーシップに一貫性がでて、強化されることになるでしょう。

■【5】リーダーはビジョンを語れなければならない。

リーダーはメンバーに対してビジョンを語れなければなりません。ドラッカーはリーダーシップ論において、リーダーの持つビジョンの重要性を強調します。ビジョンとは、未来に映ったテレビ、組織がどの方向性に進むのかという青写真です。リーダーはメンバーをどの方向性に導いていくかというビジョンを示すからこそ、メンバーは安心してリーダーの指示に従うことができます。

ドラッカーは言います。
「ビジョン無きリーダーはリーダーではない。それは事務長にすぎない。」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

ビジョンがない組織では、部分的な仕事しか示されないため、メンバーのモチベーションも上がりません。組織が全体としてどこに向かうというビジョンがあってはじめて、リーダーはメンバーを力強く導くことができるのです。具体的にリーダーがビジョンを確立する方法についえは、こちらのブログで解説していますので、併せてごらんください。(リーダーがビジョンを確立する方法はこちら)

■【6】リーダーは組織の使命を確立せねばならない。

ドラッカーは、使命に目指したリーダーシップを強調しました。組織が成果を上げるためには、メンバーが使命観をもって日々の仕事にあたることが必要になります。リーダーとはただ日々の仕事の指示を出す人ではありません。組織の使命を考え抜き、メンバーを使命にコミットさせる存在がリーダーなのです。

ドラッカーは言います。
「リーダーは、組織の使命を確立し、誰からも分かるように、組織の中に明示しなくてはならない。」と(現代の経営:ダイヤモンド社)

経営はいつも順風満帆ではありません。むしろうまくいかず立ち止まることの多いものです。そのような時に支えになるのが、組織の、メンバーの使命観です。

人はお金だけのために働くのではありません。人は何か意味のあること、大義、意義のために働くことを必要としています。組織には、組織の存在する大義、すなわち使命が必要なのです。人は大義のためであれば、命を投げ出すこともいといません。使命が浸透し、使命のために働く組織ほど、強いものはありません。リーダーは、メンバーの働き甲斐のため、働く意義のために、組織に使命を確立しなくてはいけないのでうす。

ドラッカーの定義するリーダーシップでは、使命に基づくリーダーが組織メンバーを鼓舞し、高い成果を上げさせるのです。使命に基づくミッショナリーなリーダーシップこそ、環境の厳しい現代に強く求められるものです。経営リーダーは、給料・福利厚生以上に、使命観、働く意義をもって社員を事業に引き付ける必要があるのです。

■【7】リーダーは管理的でなく、起業家的でなくてはならない。

ドラッカーは現在のリーダーシップについてこう定義します。
「これからの経営リーダーは、管理職的であってはならない。起業家的にならなくてはならない。」(イノベーションと起業家精神:ダイヤモンド社)

これまでの事業の方向性、上司の指示をそのまま遂行する番頭型のリーダーを「管理職タイプ」のリーダーを言います。日本経済が順調に成長していた過去の時期には、トップや先代事業者の決めた方針を、そのまま実行するだけで経営はある程度の成果を上げることができました。しかし、失われた20年と言われ、日本経済自身が縮小しつつある今、このようなリーダーでは事業を成長させ、成果を上げていくことはできません。

これからのリーダーは、新たな市場・顧客を創造し続ける起業家精神に富んだ「起業家リーダー」にならなくてはならないのです。起業家とは、まったくゼロの状態からでも事業を創造できるリーダーのことを言います。明日、会社がなくなってしまっても、また創業精神をもって事業再構築、起業、第2創業にチャレンジできる創造性をもったリーダーが起業家です。

ドラッカーは、現代のリーダーシップこそ、この起業家精神が最も求められていると言います。
ドラッカーは言います。
「事業の目的は、顧客の維持ではない。それは、新たな顧客の創造である。」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

市場・顧客に、単に守りの姿勢で追従するのではなく、自ら積極的に事業を創造できる起業家リーダーになることこそ、ドラッカーのリーダーシップ論の核です。ドラッカーはイノベーションと企業家精神という本で、起業家的リーダーシップの重要性をいくどとなく語っています。現代のリーダーは、番頭型・追従型リーダーでなく、起業家リーダーにならなくてはならないのです。

■【8】リーダーは、みずから時代の変化の先頭に立つチェンジリーダーでなくてはならない。

現代は大変化の時代です。今日売れたものも、明日になればすぐに陳腐化していきます。ドラッカーのマネジメント(経営)は変化に対応する哲学と呼ばれ、企業が変化する時代においていかに成長していくかについて、多くの示唆に富むヒントをくれます。

ドラッカーは言います。
「変化に対応するには、変化を脅威ではなく、機会ととらえなければならない。」
「変化に対応するには、自らが変化の先頭に立つチェンジリーダーとして、変化を起こしていかねばならない。」と。(チェンジリーダーの条件:ダイヤモンド社)

大変化の時代、組織は、変化に乗り遅れてはいけません。時代が変化しているのに、企業が保守的で変化していないとしたら、それは退化しているということです。そのような変化をマネジメントできるのは、自ら変化を探し出し、事業機会に転ずることのできるチェンジリーダーです。

これからの時代のリーダーは特に、市場の変化に合わせて、自社を作り変えるような荒療治ができる、チェンジリーダーとならねばならないのです。また、変化は、市場・顧客のもと、つまり商売の現場に生じるものです。そのため、経営リーダーは、社内に閉じこもってアナグマ社長となってはいけません。顧客・市場を積極的に訪問し、現場主義で市場の変化を肌で捉えることが、チェンジリーダーとして重要になります。

■【9】リーダーは、継続学習・自己啓発を怠ってはならない。

知識社会と言われる現代においては、リーダーは常に学び続けなくてなりません。今日は最先端の知識でも、1年もすれば陳腐化してしまいます。組織を率いるリーダーには、常に学び、自己を刷新していくことが求められます。

ドラッカーは言います。
「組織に優劣があるのではない。学んでいるかいないかの違いである。」と。(マネジメント;ダイヤモンド社)

リーダーは自己啓発を常としなければなりません。

・自己成長する「学習する組織」をつくる

リーダーが組織に成果を上げさせるために、自己と合わせてメンバーにも常に学習してもらう必要があります。メンバー同士が学び、互いに教え合い、成長する組織を「学習する組織」と言います。

ドラッカーは言います。
「組織が卓越するのは、優秀な人を採用するからではない。文化と風土によって自己啓発を動機付けるからである。」と。(現代の経営:ダイヤモンド社)

中小企業が、ピカピカの人材を採用できることは稀です。リーダーはメンバーを常に学ばせ、自己啓発の風土をつくることによって、組織を成長させなければならないのです。

■【10】リーダーは、正しさ(正当性)をもっていなくてはならない。

ドラッカーは言います。
「リーダーシップとは好かれることではない。それはセールスマンシップである。」
「リーダーシップとは、あの人の言っていることは耳がいたい。しかし確かに正しいことを言っていると思ってもらえることである。」と。(経営者の条件:ダイヤモンド社)

効果的なリーダーは好かれるとは限りません。しかしその言動の真摯さ、正しさよってメンバーの信頼を勝ち取り、組織にとって正しいことをなさしめるものなのです。リーダーシップとは正しさであり、その根底にあるものは、部下に信頼されるということなのです

それでは、リーダーの正しさとは何でしょうか?

・リーダーの正しさとは、無手勝流の正しさではなく、人間としての正しさ、「経営の原理原則」をベースに経営をすること。

リーダーが正しさをもって経営をするためには、「正しい」こととは何であるかを知る必要があります。
経営の世界において、正しさとは、昔から語り継がれていた経営の原理原則や人間社会の道理にそって経営を行うことです。

リーダーは古典や人間学を学び、人間として、何が正しいのかを常に追求しなければならないのです。

■ドラッカー研修では、組織に高い成果を上げるリーダーシップを持つ人材を育成することが可能です。

いかがでしたか? 今回は、ドラッカーの定義するリーダーシップ論からリーダーに求められる条件を10個あげて解説しました。

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ブログ執筆者 ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

2002年、大学卒業後、株式会社KUBOTAの人事教育部で全社の人材育成を担当。2011年、経営と起業家精神をより深く学ぶために日本経営道協会(コンサルタント)に転職。

2013年、小宮一慶氏の経営する株式会社小宮コンサルタンツに経営コンサルタントとして転籍。本格的な経営コンサルティングを開始。マネジメントを学ぶ中で、【ドラッカーの人を活かす経営】との運命的な出会いを果たす。

人が活かされ、高い成果を上げる幸せな企業をつくることこそ自分の天命だと悟り、2017年独立。「高い理想と自己犠牲の精神で、人の魂の成長に貢献する」「リーダーの人格の向上に奉仕する」をコンセプトに、使命感を持って日々の業務にあたっている。

講師としても依頼が絶えず、全国の商工会議所、経営者団体など各種経済団体でのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」「ドラッカーが降りてきた」「マネジメントの真髄を見た」と熱狂的に支持する経営者が後を絶たない。

著書:『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則(産業能率大学出版部・Amazon【企業経営部門】第2位)』