社員が辞める会社にならないために、社長が向き合うべき3つの視点

社員が辞めてしまう。

その悩みを抱える経営者は、年々増えています。

背景にあるのは、日本全体で進む労働人口の減少です。働ける人の数が減る一方で、転職や副業といった働き方の流動性は確実に高まっています。

「ここで働き続けなければならない」時代は、すでに終わりました。

だからこそ今、経営者に問われているのは、優秀な人が“辞めない会社”をどうつくるかという視点です。

ドラッカーは、人材確保と人事戦略こそが、組織が繁栄するための絶対条件だと語っています。

では、社員が「ここで働き続けたい」と思う会社には、何が必要なのでしょうか。

ドラッカーが示した「人を生かす会社」の本質

ドラッカーのマネジメントは、突き詰めれば一つの考え方に集約されます。

マネジメントとは、人のことを扱う営みである

社員が辞めていく会社では、人が十分に生かされていません。

社員自身が、「自分はもっと生かされる場所があるはずだ」と感じ、外に答えを求めてしまうのです。

人を生かす会社とは、社員を単なる労働力や数字の道具として扱う組織ではありません。

一人ひとりを人間として尊重し、成長し、挑戦し、成果を上げる場を提供する組織です。

そのために、ドラッカーは極めてシンプルな3つの条件を示しています。

社員が辞めない会社をつくる3つの条件

① 職場で、社員は敬意をもって扱われているか

最初に問うべきなのは、とても根本的な問いです。

社員は職場で、人として尊重されているか

パワハラやセクハラがないのは当然の前提です。

それ以前に、日々の言動や態度の中で、「人として大切にされている」と社員が感じられているかどうか。

ブラック企業という言葉が生まれる背景には、人を売上や利益の道具のように扱う現実があります。

上司が部下を踏みつけるような職場で、人が働き続けたいと思うことはありません。

ドラッカーは、人を幸せにすることこそが、組織が社会に存在する意味だと考えました。

人を生かす経営とは、まず「敬意」から始まります。

② 社員の成長を支援する仕組みがあるか

人は、成長できると感じられる場にとどまります。

この会社にいれば、自分は成長できる

そう実感できない職場では、どれほど待遇が良くても、やがて心が離れていきます。

ドラッカーのマネジメントでは、人材育成は後回しのテーマではありません。

人を生かす会社をつくるための、中心的な仕組みです。

教育制度や育成の仕組みが整っているか。

社員が挑戦し、学び、次の役割へ進める道筋が見えているか。

成長支援のない組織は、人にとって「止まった場所」になってしまいます。

③ 頑張りを正しく評価し、報いる仕組みがあるか

三つ目は、人事評価の問題です。

頑張った人が、きちんと評価されているか

好き嫌いや、その場の感覚で評価が決まる職場では、社員は本気になれません。

頑張る人も、そうでない人も同じ評価であれば、挑戦する意味がなくなります。

ドラッカーは、人事評価を「会社の最終の武器」と呼びました。

人事評価とは、社員を管理するための制度ではありません。

組織を「どの方向に向かわせるか」を決める、最も強力なアクションプランです。

挑戦した人が報われる。

努力した人が正当に評価される。

その公平性・透明性があるからこそ、人は組織に信頼を寄せ、力を発揮します。

評価制度は、複雑である必要はありません。

むしろ、中小企業ほど、シンプルで本質的な仕組みが求められます。

人を生かす会社は、社長の覚悟から始まる

「人を生かす会社をつくる」

これは制度以前に、社長自身の覚悟の問題です。

安全に働ける職場をつくる。

成長できる環境を用意する。

挑戦が評価される仕組みを整える。

これらはすべて、人を中心に経営を考えるという一貫した思想から生まれます。

社員が辞めない会社とは、社員が「ここで自己実現できる」と感じられる会社です。

そしてそれは、結果として高い成果を生み、組織を強くします。

今回まとめ(人を活かすドラッカー研修のポイント)

  • 【1】社員を「人」として尊重しているか、自分の言動を振り返る
  • 【2】社員が成長し続けられる仕組みがあるかを見直す
  • 【3】頑張りと挑戦が正しく報われる評価の軸を明確にする

人を生かす経営は、特別な理論ではありません。

今日から社長自身が向き合える、極めて現実的な経営の選択です。

社員が辞めない会社づくりは、ここから始まります。