マネジメントの本質とは何か ― ドラッカーが語る「人を生かす経営」

マネジメントという言葉は、日常的に使われています。

部下をマネジメントする、組織をマネジメントする、経営をマネジメントする。

しかし、その言葉の本当の意味を理解しないままでは、経営に生かすことはできません。

ドラッカーの視点から見たとき、マネジメントとは何なのか。

その本質を、あらためて整理してみましょう。

マネジメントとは「経営」であり「人のこと」である

まず押さえておきたいのは、マネジメントとは経営そのものだということです。

ピーター・ドラッカーは、経営において最も大切なものを明確に示しました。

マネジメントとは、人のことである。

経営に関わる要素には、お金も、仕組みも、制度もあります。

しかし、ドラッカーが一貫して語ったのは、経営の中心にあるのは常に「人」だということでした。

人が幸せにならない組織は、たとえ売上や利益が上がっていても意味がない。

人を生かし、人が幸せになる組織をつくることこそが、経営の使命なのです。

マネジメントの第一の役割 ― 外部に成果を上げる

マネジメントの一つ目の役割は、成果を上げることです。

ここで重要なのは、「成果はどこにあるのか」という視点です。

組織の目的は、組織の中にはない。

組織の中にあるのはコストだけ。

成果や利益は、顧客や市場という外部にしか存在しません。

組織は、社会に貢献することで初めて存在を許されます。

顧客や市場に価値を提供し、高い成果を上げることが、経営の前提条件です。

松下幸之助も、成果を上げられない経営を厳しく戒めました。

社会から預かった人・モノ・お金を減らし続ける経営には、存在理由がない。

成果を上げることは、経営者の責任であり、社会への責務なのです。

マネジメントの第二の役割 ― 人を生かす

では、なぜ社員は組織に集まるのでしょうか。

それは、社長であるあなたが、その人を生かしてくれると信じているからです。

この組織で働くことで、

生き生きと働き、社会に貢献し、成長できる。

その場として会社が存在しています。

マネジメントとは、人を管理することではありません。

管理するのは、モノやお金です。

人は、管理する対象ではなく、生かす存在です。

人を生かし、人が幸せになる組織をつくること。

これが、マネジメントのもう一つの大きな意味です。

マネジメントの第三の機能 ― 顧客を創造する

ドラッカーは、企業の目的を次のように定義しました。

企業の目的は、顧客の創造である。

新しい顧客、そしてファンを生み出し続けなければ、企業は存続できません。

そのための経営機能は、たった二つしかないとドラッカーは言います。

  • マーケティング
  • イノベーション

マーケティングとは「顧客を理解すること」

マーケティングとは、売るためのテクニックではありません。

顧客を深く知り、理解することです。

企業の内部視点ではなく、顧客の視点に立つ。

顧客を最もよく知っているのは、実は顧客自身です。

顧客は、事業にとって最高の先生なのです。

イノベーションとは「新たな価値を生み出すこと」

顧客の困りごとが見えたとき、次に必要なのがイノベーションです。

それは、まったく新しいものを生み出すことだけではありません。

顧客の課題を解決する新たな商品やサービスを生み出すこと。

過去の常識や囚われを手放し、価値を再創造すること。

マーケティングとイノベーションによって顧客を創造する。

この機能こそが、マネジメントなのです。

マネジメントの本質 ― 人を生かし、社会に貢献する

マネジメントとは、管理ではありません。

人を生かし、社会に成果をもたらす生きた機能です。

人を幸せにし、顧客に価値を届け、社会に貢献する。

その営みそのものが、経営であり、マネジメントなのです。

今回まとめ(人を活かすドラッカー研修のポイント)

  • 【1】経営の中心に「人」を置いているかを見直す
  • 【2】組織の視点ではなく、顧客の視点から事業を考える
  • 【3】人を管理するのではなく、生かす関わり方を実践する