← 6話:人がいきいき働く会社を作る・ドラッカーの3つのポイント
「強いチームを作るために、気をつけるべきことはありますか?」-クライアントの経営者の方から、よくいただく質問です。
社員の数はそろっている。能力の高い人材もいる。それなのに、なぜかチームとして力が出ない。個々は優秀なのに、集まると成果が伸びない。多くの中小企業の経営者が、この壁にぶつかります。
では、最強のチームとは、どうすれば作れるのか。ドラッカーの考え方を土台に、現場でそのまま使える手順まで落とし込んで解説します。
この記事でまとめたこと
最強のチームの作り方は「強みの結集」から始まる
強みをつなぎ合わせ、弱みは中和する
チームを作るために、踏まえるべきドラッカーの2つの名言があります。
- 「メンバーの強みを発揮させ、弱みを無くすことがチームの目的である。」
- 「人が成果をあげるのは、強みによってのみである。」
「弱みはいくら克服しても、平凡レベルになることさえ疑わしい、強みに集中し卓越せよ。」(プロフェッショナルの条件)
メンバーの強みをつなぎ合わせ、弱みを中和する。強みの上に強みをきづく、のが、最強のチームです。
ここで大切なのは、「強い組織」とは全員が万能選手の集まりではない、ということです。むしろ、一人ひとりに得意・不得意があることを前提に、それぞれの強みが噛み合うように組み合わせていく。ある人の弱みを、別の人の強みが覆う。そういう補完関係を意図的に設計したチームこそが、強い組織なのです。
たとえば、新規開拓は得意だが事務処理が苦手な営業担当がいるとします。片や、外に出るのは苦手でも、資料作成と数字の管理が正確な内勤スタッフがいる。この二人を組ませ、開拓は前者、見積・契約・フォローは後者に役割を寄せる。すると、互いの弱みは相手の強みで中和され、チーム全体としては穴のない動きになります。一人で全部やらせようとすると、どちらも半人前になってしまう。強みで組む、という発想の差です。
ところが、多くのリーダーは部下の弱みばかり見てしまいます。あいつはできない、ここが苦手だ、いくら言っても一向にやらない・・・と。人の弱みに集中してしまいます。
強みに焦点を当てなければ、成果は生まれない
これは、リーダーがはまる罠です。強みに焦点をあてなければ、成果は生まれません。弱みを見ることから生じるものは、成果を生まないチーム、うつ病の社員だけです。弱みに集中すれば、問題が生まれるだけなのです。
考えてみてください。苦手なことを毎日指摘され続けて、伸び伸びと力を出せる人はいません。指摘されるほど萎縮し、自信を失い、やがて職場に来ること自体が苦しくなる。弱みに焦点を当てるマネジメントは、本人を追い詰めるだけでなく、チームからエネルギーを奪います。
強みが鍵です。成果を上げる社員になるためには、強みに集中してもらう。また強みを中心に活用する組織文化を作る必要があります。
強い組織を作りたいなら、リーダーの目線をまず変える。「この人の欠けているところ」を探す目から、「この人が人より自然にうまくやれること」を探す目へ。この一点だけでも、チームの空気は驚くほど変わります。
強みを引き出すための実践ステップ
まず、強みを自覚してもらう
メンバーに強みを活かしてもらうためには、強みを自覚してもらう必要があります。強みとは、人より自然にうまくできること。意識して見出さなければ、自分の強みには気づかないことが多いのです。
なぜなら、本人にとっては「当たり前にできてしまうこと」だからです。苦もなくやれるので、それが価値だと気づかない。周りが「すごいね」と言っても、「これくらい誰でもできるでしょう」と流してしまう。その、本人が軽く見ている部分にこそ、その人の強みが眠っています。だからこそ、他者の目を借りて、外側から言葉にしてあげる作業が要るのです。
強みを見出す実践プラン(ホメホメ会議)
そこで、次の実践プランを実施します。ホメホメ会議で、他の人から強みを探してもらい、自覚する、という取り組みです。
進め方は、むずかしく考える必要はありません。
一、少人数のグループ(4〜6人程度)で集まります。
二、「今回はAさんの強みを、皆で言ってあげましょう」と一人に焦点を当てます。
三、他のメンバーが、Aさんの強みを付箋紙に書き出します。ポイントは、人よりうまくできることで、お客様や仲間の役に立っているものを書くこと。
四、書いた付箋を本人に渡しながら、「あなたのこういうところが強みだと思う」と、根拠となった具体的な場面を添えて客観的に説明してあげます。
五、順番を交代し、全員が一度は「ほめられる側」になります。
この会議をすれば、自分の強みがはっきりわかります。またメンバーは強みを、積極的に活用することを考えるようになります。さらに、お互いの強みを知ることで、「あの仕事はBさんに頼もう」と、チーム内での自然な役割分担が生まれます。
中小企業であれば、月に一度、朝礼や定例会議の一部を使って回すだけでも十分に効果が出ます。特別な費用も道具もいりません。付箋とペン、そして少しの時間があればできます。
強みを軸に役割と仕事を組み替える
強みが見えてきたら、次はそれを実際の仕事の割り振りに反映させます。せっかく強みを自覚しても、日々の業務が変わらなければ宝の持ち腐れです。
一、それぞれの強みを一覧にして、チームで共有する。
二、いま抱えている仕事を、「誰の強みが一番活きるか」で見直す。
三、苦手な作業は、それを得意とする人に寄せる。あるいは仕組みや道具で補う。
四、数か月ごとに配置を見直し、強みの発揮度を確認する。
大企業のように部署をきれいに分けられなくても、中小企業には小回りが利くという強みがあります。「この仕事はこの人」と固定するのではなく、強みに合わせて柔軟に組み替えられる。この身軽さこそ、中小企業が最強のチームを作るうえでの大きな武器です。
チームの成果は、メンバーのエネルギー(強み)をいかに爆発させるかにかかっているのです。
強みを使い、弱みはチームで中和することこそが、チームを強化するポイントです。
まとめ
最強のチーム、そして強い組織は、全員を万能にすることからは生まれません。一人ひとりの強みを見つけ、それをつなぎ合わせ、弱みはチーム全体で中和する。この設計こそが要です。
リーダーがまずやるべきは、部下の弱みを探す目を、強みを探す目に切り替えること。そのうえで、ホメホメ会議で本人に強みを自覚してもらい、強みが活きるように仕事と役割を組み替えていく。特別な予算がなくても、中小企業ならではの小回りを活かせば、今日からでも始められます。強みに焦点を当て続けたチームは、やがて自ら成果を生み出す集団へと育っていきます。
最強のチームの作り方に関するよくある質問
Q. 強みが見当たらない社員には、どう向き合えばよいですか?
強みが「ない」のではなく、まだ「見えていない」だけであることがほとんどです。本人が当たり前にやっているため、周りも本人も価値に気づいていません。ホメホメ会議のように、他者の目から具体的な場面とともに言葉にしてあげると、必ずと言っていいほど強みが浮かび上がってきます。焦らず、まずは周囲の観察から始めてください。
Q. 弱みは放っておいてもよいのでしょうか?
弱みを「克服させる」ことにエネルギーを注ぐのではなく、「中和する」と考えてください。本人の強みが活きる仕事に集中してもらい、苦手な部分は、それを得意とする別のメンバーや、仕組み・道具で補う。弱みが成果の妨げにならないように設計する、という発想です。無理に平均点を目指させるより、はるかに成果につながります。
Q. 少人数の会社でも、強みを活かすチーム作りはできますか?
できます。むしろ少人数の会社ほど向いています。人数が少ないぶん、一人ひとりの強みが見えやすく、役割の組み替えも素早くできるからです。大企業のような硬い組織構造がない分、「この仕事は誰の強みが一番活きるか」で柔軟に配置できます。これは中小企業の大きな強みです。
Q. ホメホメ会議は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?
月に一度程度が一つの目安です。定例会議や朝礼の一部を使い、毎回一人か二人に焦点を当てて回していくと、負担なく続けられます。大切なのは一度きりで終わらせないこと。続けることで、強みに目を向ける文化がチームに根づいていきます。
Q. 強みに焦点を当てると、社員が苦手なことから逃げるようになりませんか?
逆です。強みを認められた社員は自信を持ち、責任感が増します。自分の強みで貢献できているという実感があるからこそ、苦手なことにも前向きに取り組む余裕が生まれます。弱みばかり指摘されて萎縮した社員より、強みを活かされた社員のほうが、結果として全体の底上げにもつながっていきます。
書籍『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』
リーダーシップとは権力ではない。働く人を活かし、成果を上げる「責任」である。経営の中心は『人間の尊厳』にあるべきだと亡きドラッカーは訴えた。現代リーダーのための現場で実践できる『人間中心の経営』『立志の指南書』

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