このブログでは、「マーケティング(顧客志向)とセールス(営業)は何がどう違うのか」、そして「マーケティングを組織全体に定着させるための要点」が分かります。

今回は、ドラッカーの名言、「マーケティングとセールス(営業)は正反対である。重なり合う部分さえない。」について解説いたします。

「マーケティングとセールスの違い」と聞くと、多くの方が「どちらも売るための活動でしょう?」と考えます。ところが、ドラッカーの答えは正反対でした。二つは似ているどころか、向いている方向がまるで逆なのです。ここを取り違えたまま「売上を伸ばそう」と号令をかけても、現場はセールスばかりに走り、かえってお客様から敬遠されてしまう。まずはこの根本の違いから、順を追って見ていきましょう。

この記事でまとめたこと

マーケティングとセールスは正反対である

マーケティングの究極の目的は、セールスを不要にすることです。

売り込まなくても、お客様のほうから「それが欲しい」と言ってくださる状態をつくる。それがマーケティングの理想です。ドラッカーが「正反対」「重なり合う部分さえない」とまで言い切ったのは、両者の出発点がまったく違うからです。

セールスとは何か──企業からスタートする行為

セールスを行う人を「セールスマン」、マーケティングをする人を「マーケター」と定義します。(ブログ下の動画では、寸劇で分かりやすく解説しています。)

筆者が、手にしているホワイトボードマーカーのコクヨの社員だったとします。あなたを企業の人事部長だと仮定し、セールスとマーケティングの両方を実演してみましょう。

はじめに、セールスです。筆者がセールスマンである場合、お客様とのやりとりはこんな形になります。

「部長様、本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます。」
「わが社の新開発のペンができました。是非買ってくれませんか?」

このように、セールスでは「(お客様の都合に関係なく)買いませんか?」と、一方的に企業視点で売り込みをします。話の起点はいつも「自社の商品」です。お客様がそれを必要としているかどうかは、二の次になっています。

マーケティングとは何か──顧客からスタートする行為

次に、マーケティングです。違いに注目してください。

マーケティングとは、「顧客から」スタートすることです。大切なのは、企業・商品からは、決してスタートしないということです。

同じ場面でマーケターならどう振る舞うか。

「〇〇様、事務用品関係で何かお困りになられていること・課題はございませんか?」
「会議・研修の時など、ご不便されている事はございませんか?」

こう質問すると、部長さんは「ホワイトボードを書くためのインクの減りが早くて困ってるんだよ」(例)と、ご自身の困りごとを話してくださいます。そこで初めて、マーケターは言うのです。

「お客様のお困りは良くわかります。わが社で、インクが2倍長持ちするエコタイプのシリーズを開発したんですが、お試しになってみませんか?」

これがマーケティングです。同じ商品を扱っていても、入り口が「お客様の困りごと」なのか「自社の商品」なのかで、まったく別の会話になる。違いがお分かりになられますでしょうか。

セールスとマーケティングの違いは「視点」にある

「セールス=買いませんか?」は、お客様の都合を無視した、企業側の一方的な目線です。

これに対して、マーケティングは、顧客が起点です。お客様の立場に立ち、自社商品ではなく、お客様の都合・ニーズ・欲求からスタートします。

セールスマンは自社・製品に興味があります。マーケターは、お客様のお悩み・課題に関心を持ち、お客様からスタートします。

あなたは、自社の製品ばかり薦めてくるセールスマンと、お客様・お客様の課題に関心を持っているマーケター、どちらから買いたいですか。

もちろん、自分に興味を持ってくれて、一緒になって課題解決を考えてくれるマーケターですよね。

分かりやすいように、両者の違いを整理しておきます。

セールスとマーケティングの違い(早見)

・出発点:セールスは「自社・商品」から/マーケティングは「顧客・課題」から
・話す順番:セールスはまず売り込む/マーケティングはまず聴く・質問する
・関心の対象:セールスは自社の製品/マーケティングはお客様の悩み
・ゴール:セールスはその場の受注/マーケティングは売り込まなくても売れる状態づくり
・お客様の気持ち:セールスは警戒される/マーケティングは信頼される

同じ「売上をつくる」ための活動に見えて、向いている方向が真逆であることが分かります。だからこそドラッカーは「重なり合う部分さえない」と表現したのです。

なぜマーケティングが経営で最重要なのか

2つは似ているようで、全く反対の行為です。そして、マーケティングとセールスの最大の違いは「目=視点」にあります。

企業のすべての視点を、企業からではなく、顧客からの視点で見ることがマーケティングです。顧客視点で、自社の商品・サービス、あらゆるものを適正化していく。顧客にとっての価値を高めていく。それがマーケティング(マーケター)の姿です

経営の第一目標はマーケティングである

経営の第一目標はマーケティングであると、ドラッカーは言います。(ドラッカー『現代の経営』ダイヤモンド社)

なぜ第一目標(最重要)なのでしょうか。

お客様こそ事業の主人公であり、マーケティングそのものが顧客の視点に立つことだからです。お客様が事業の成否を決めます。(「お客様第一」はマーケティングと基本的には同じ意味です。)

商品が良いか悪いかを最終的に決めるのは、つくり手ではありません。買い手であるお客様です。だからこそ、経営の起点をお客様に置くマーケティングが、あらゆる活動の土台になるのです。

全社をあげてマーケティングを推進する

お客様が好きなのは、お客様を第一にしてくれる企業です。それゆえ、企業第一・自社都合の会社は、お客様に選ばれず、市場では勝てません。

マーケティング(お客様視点からスタートする)は、企業全体を貫く理念にしなければなりません。

お客様に関係の無い人は、企業には一人もいません。営業だけの話ではないのです。開発も、製造も、経理も、受付も、すべての仕事はどこかでお客様につながっています。

全社をあげてマーケティング(顧客第一)を実践する必要があります。マーケティング(お客様第一)の優劣が、ビジネスの勝敗を決めます。

中小企業がマーケティングを定着させる実務ステップ

理屈は分かった。では、明日から現場で何をすればいいのか。人も時間も限られる中小企業でも取り組める、具体的な手順に落とし込みます。

ステップ1:お客様に「困りごと」を聴く時間をつくる

まずは売り込みをいったん止め、お客様の課題を聴くことから始めます。既存のお客様に「最近、業務で不便に感じていることはありませんか」と尋ねる。それだけで、自社が思ってもみなかったニーズが見えてきます。訪問でも、電話でも、アンケートでも構いません。大切なのは「売る前に聴く」順番を守ることです。

ステップ2:聴いた声を全社で共有する

営業が聴いてきたお客様の声を、営業だけで抱え込まないことです。朝礼やチャット、月一の会議で「今週お客様から聞いた困りごと」を共有する。製造や開発の担当者がその声を知ると、改善のアイデアが自然に生まれます。これが「全社をあげてのマーケティング」の第一歩になります。

ステップ3:お客様の言葉で商品・サービスを見直す

自社のパンフレットやホームページを、お客様の困りごとの言葉で書き直してみてください。「高性能」ではなく「インクが2倍長持ちして交換の手間が減る」。機能ではなく、お客様が得られる価値で語る。これだけで伝わり方がまるで変わります。

ステップ4:売り込まずに「提案」する文化にする

現場の評価を「何件売ったか」だけでなく「お客様の課題をいくつ聴き出せたか」でも見るようにします。評価の基準が変われば、行動が変わります。売り込むセールスマンの集団から、課題を一緒に考えるマーケターの集団へ。時間はかかりますが、これが選ばれ続ける会社の土台になります。

全社員がマーケティング意識を持ったマーケターとなるために、まずは動画を見てマーケティングの定義を理解し、実践にうつしてみてください。

【動画:マーケティングとセールスは正反対で重なり合う部分さえない。(ドラッカー名言・経営セミナー)】

まとめ

マーケティングとセールスは、どちらも「売上をつくる活動」に見えて、出発点が正反対です。セールスは「自社の商品」から始まり、マーケティングは「お客様の困りごと」から始まります。ドラッカーが「重なり合う部分さえない」と言い切ったのは、この視点の向きが真逆だからでした。

そしてマーケティングの究極の目的は、セールスを不要にすること。売り込まなくてもお客様のほうから求めてくださる状態をつくることです。だからこそドラッカーは、マーケティングを経営の第一目標に位置づけました。

これは営業部門だけの話ではありません。開発・製造・事務を含め、全社員がお客様の視点を持つこと。その優劣が、中小企業の勝敗を分けます。まずはお客様の困りごとを聴く。そこから、あなたの会社のマーケティングは始まります。

マーケティングとセールスの違いに関するよくある質問

マーケティングとセールスの一番の違いは何ですか?

出発点(視点)が正反対である点です。セールスは「自社の商品」を起点に売り込みますが、マーケティングは「お客様の困りごと・ニーズ」を起点に考えます。同じ商品を扱っても、入り口が違うため、まったく別の活動になります。

マーケティングの目的は結局「売ること」ではないのですか?

売上につながる点は同じですが、目的の立て方が違います。ドラッカーはマーケティングの究極の目的を「セールスを不要にすること」だと述べました。売り込まなくても、お客様のほうから選んでくださる状態をつくることが、マーケティング本来のねらいです。

セールスはもう必要ないということですか?

セールスが不要だという意味ではありません。マーケティングが十分に機能していれば、無理に売り込む必要が減る、ということです。お客様の課題を起点にした提案であれば、それはセールスというより「課題解決の提案」に近いものになります。

中小企業でもマーケティングに取り組めますか?

はい、規模は関係ありません。むしろお客様との距離が近い中小企業ほど有利です。既存のお客様に困りごとを聴く、その声を全社で共有する、お客様の言葉で商品を語り直す。特別な予算がなくても、今日から始められます。

「全社でマーケティング」とは具体的にどういうことですか?

お客様の視点を、営業部門だけでなく全部門が持つということです。開発・製造・経理・受付など、あらゆる仕事はどこかでお客様につながっています。全員が「これはお客様にとってどうか」を考える。それが、選ばれ続ける会社の文化になります。

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