ドラッカーは言います。

「予期せぬ成功があれば、徹底的に注目して分析せよ。

予期せぬ成功は、企業がまだ気づいていない、市場に既にある機会を教えてくれる。」

(ドラッカー著 イノベーションと企業家精神)
 

皆さんの事業で、これまでなかった成功・今までなかったようなお客様からの問い合わせはありませんでしたか?

予期せぬ成功や、一見すると「変な問い合わせ」は、じつは既にそこにある市場を教えてくれています。こうした問い合わせがあったときは、必ず全社的にトップまで情報が上がる体制を築いておく必要があります。現場の担当者が「うちの商品じゃないな」と勝手に判断して断ってしまうと、新規事業の芽がそのまま消えてしまうからです。

今回のドラッカーセミナーは、予期せぬ成功から新規事業を創るポイントの解説です。まずは動画をご覧ください。

 

 

予期せぬ成功とは何か

予期せぬ成功とは、自分たちが狙っていなかったのに、なぜかうまくいってしまった出来事のことです。狙った商品が売れるのは「予定どおりの成功」であり、当然のことです。ところが実際の事業では、こちらの想定とはまったく違うところで注文が入ったり、思ってもみなかったお客様に喜ばれたりすることがあります。

ドラッカーは、この予期せぬ成功こそがイノベーションの最も確実な機会だと述べています。理由はシンプルです。すでにお金を払ってくれたお客様がいる、つまり市場が実在することが証明されているからです。まだ形になっていないニーズを頭の中で探すのではなく、現実に起きた成功を手がかりにするので、リスクが小さく、成果につながりやすいのです。

大企業でも中小企業でも、事業のなかには必ずこうした予期せぬ成功が眠っています。問題は、それに気づけるかどうか、そして気づいたあとに動けるかどうかです。

予期せぬ成功が見過ごされてしまう理由

多くの会社で、予期せぬ成功は見過ごされます。なぜでしょうか。

ひとつめの理由は、人は自分が期待していたことしか見ないからです。「この商品は若い女性向けだ」と思い込んでいると、実際には年配の男性が買ってくれていても、そのデータが目に入りません。都合のよい数字だけを見て、そうでない数字は例外として片づけてしまうのです。

ふたつめの理由は、予期せぬ成功が担当者にとって「面倒なもの」だからです。想定外の売れ方をすると、生産計画や在庫が乱れます。現場からすれば、余計な仕事が増えたようにしか見えません。だから無意識のうちに「イレギュラーな案件」として処理し、記録にも残さないのです。

みっつめの理由は、成功の原因を分析する習慣がないことです。失敗すれば原因を調べますが、うまくいったときは「よかったね」で終わってしまいがちです。しかし、なぜ売れたのかを掘り下げなければ、それを再現することも、広げることもできません。

中小企業こそ予期せぬ成功を活かせる

予期せぬ成功への対応は、じつは中小企業にこそ向いています。大企業は意思決定に時間がかかり、既存事業の仕組みが大きいぶん、新しい芽を育てるより既存の枠に押し込もうとしがちです。一方、中小企業は社長と現場の距離が近く、決断が速い。予期せぬ成功に気づいてから動き出すまでのスピードで勝負できます。

たとえば、次のようなケースはどれも予期せぬ成功のサインです。

・本業のついでに始めたサービスのほうに問い合わせが集中している
・想定していた地域とはまったく別の地方から注文が入り続けている
・売り込んでいない商品を、なぜか名指しで指名される
・クレームだと思って対応したら、そこから別の大口取引が生まれた
・同業他社ではなく、まったく違う業種の会社から相談が来る

こうしたサインを「たまたま」で片づけるのか、「新規事業のヒント」として拾い上げるのか。その姿勢の差が、数年後の事業の広がりを大きく左右します。

身近な予期せぬ成功の例

わかりやすい例を挙げます。ある町工場が、自社の金属加工技術を使って製造業向けの部品を作っていました。ところがある日、まったく畑違いの飲食店から「厨房の特注ラックを作れないか」という相談が舞い込みます。担当者は「うちは部品屋だから」と一度は断りかけましたが、社長に相談したところ、試しに受けてみることにしました。

作ってみると評判がよく、口コミで同じような相談が次々に入るようになりました。調べてみると、市販品では対応できない特殊なサイズや衛生基準に困っている飲食店が数多くいることがわかったのです。町工場は、これを新しい事業の柱として本格的に立ち上げました。最初の「変な問い合わせ」を捨てずに拾ったことが、新規事業の出発点になったわけです。

予期せぬ成功を新規事業に変える実務手順

では、予期せぬ成功をどうやって新規事業へつなげればよいのか。実務として踏むべき手順を整理します。

手順1 予期せぬ成功を拾い上げる仕組みをつくる

まずは、現場に埋もれている予期せぬ成功を表に出す仕組みが必要です。営業日報や問い合わせ記録に「想定外の引き合い」を書く欄を設けたり、月に一度の会議で「今月あった変な問い合わせ」を全員で共有したりするだけでも効果があります。大切なのは、想定外の出来事を担当者の判断で握りつぶさせず、必ずトップまで届く経路を用意しておくことです。

手順2 なぜ売れたのかを分析する

次に、その成功がなぜ起きたのかを分析します。誰が、どんな理由で、何に困って買ってくれたのか。お客様に直接聞くのがいちばん確実です。「他社ではなく、なぜうちを選んでくれたのですか」と尋ねると、自分たちが強みだと思っていなかった部分が評価されていた、というケースがよくあります。ここで見つかる本当の強みが、新規事業の核になります。

手順3 小さく試して検証する

分析で見えた仮説は、いきなり大きく投資せず、小さく試して確かめます。既存のお客様のなかから同じニーズを持ちそうな相手に声をかけたり、限定的にサービスとして提供してみたりして、本当に需要があるのかを確認します。中小企業にとって、この「小さく試す」段階を飛ばさないことが、失敗を避ける最大のコツです。

手順4 事業として位置づけ、資源を集中する

検証で手応えが得られたら、片手間ではなく、正式な事業として位置づけます。担当者を決め、必要な人・モノ・お金を配分し、責任と目標を明確にします。予期せぬ成功は、拾い上げただけでは事業になりません。会社として本気で資源を集中して初めて、新しい柱に育っていきます。

予期せぬ成功に気づくための日々の心がけ

最後に、予期せぬ成功を逃さないために、経営者が日々心がけておきたいことをお伝えします。

ひとつは、うまくいったことにも「なぜ」を問う習慣です。失敗の反省会と同じくらい、成功の理由を掘り下げる時間を持ってください。もうひとつは、現場の小さな違和感に耳を傾けることです。「最近こんな問い合わせが増えている」という現場の声には、市場の変化が映し出されています。そして三つめは、想定外を歓迎する空気を社内につくることです。想定外を叱る組織では、予期せぬ成功は二度と報告されなくなります。

ドラッカーの言うとおり、予期せぬ成功は、まだ誰も気づいていない市場を教えてくれる贈り物です。その贈り物を受け取れるかどうかは、経営者の姿勢しだいなのです。

まとめ

予期せぬ成功とは、狙っていなかったのにうまくいった出来事であり、ドラッカーが最も確実なイノベーションの機会と位置づけたものです。すでにお金を払ってくれるお客様がいる以上、その背後には実在する市場が隠れています。

大切なのは、こうした予期せぬ成功や「変な問い合わせ」を現場で握りつぶさず、必ずトップまで届く仕組みをつくること。そして、なぜ売れたのかを分析し、小さく試して検証し、手応えがあれば正式な事業として資源を集中していくことです。意思決定の速い中小企業ほど、この流れを味方につけられます。

想定外を歓迎し、成功の理由に「なぜ」を問い続ける姿勢が、次の新規事業を生み出します。

予期せぬ成功に関するよくある質問

予期せぬ成功と、ただの偶然の売上はどう見分ければよいですか

一度きりで終わるものは偶然ですが、同じような引き合いが繰り返し起きるなら、それは市場のサインです。まずは記録を残し、二回目、三回目と続くかどうかを観察してください。繰り返しが確認できたら、なぜ起きているのかを分析する価値があります。判断に迷う段階でも、握りつぶさず記録しておくことが第一歩です。

予期せぬ成功は、どうすれば社内で見逃さずにすみますか

想定外の問い合わせや売れ方を、担当者の判断で処理させないことが重要です。日報や問い合わせ記録に「想定外の引き合い」を書く欄を設け、月に一度は全員で共有する場をつくってください。想定外を叱らず歓迎する空気があれば、現場は安心して報告するようになります。

予期せぬ成功を新規事業にするとき、最初に何をすべきですか

いきなり投資を広げるのではなく、まずお客様に「なぜ他社ではなくうちを選んだのか」を直接聞いてください。そこで見つかる、自分たちが気づいていなかった強みが、新規事業の核になります。そのうえで小さく試し、本当に需要があるかを確かめてから資源を集中します。

中小企業でも新規事業に取り組む余裕はありますか

予期せぬ成功を起点にする方法は、すでに市場が実在することが証明されているため、ゼロから需要を探す場合よりリスクが小さくなります。最初は片手間の小さな検証から始められますし、意思決定の速さという中小企業ならではの強みが活きます。大きな投資は、手応えを確かめてからで十分です。

予期せぬ失敗にも意味はありますか

あります。ドラッカーは予期せぬ失敗もイノベーションの機会だと述べています。想定どおりに進めたのに失敗したときは、市場や前提そのものが変化しているサインかもしれません。成功と同じように、なぜそうなったのかを掘り下げることで、新しい機会が見えてくることがあります。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし、自社の経営や組織にドラッカーをどう活かせばよいか、少しでもお悩みでしたら、ここから先もぜひ読んでみてください。ドラッカーに関心をお持ちの経営者・管理職の方への、補足のご案内です。

なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか

ここまでの「強みを見る視点への切り替え」は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。

変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。

根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない

生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。

とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。

中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則

そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。

いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること

マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。

観点 一般的な管理職研修 村瀬式ドラッカー7つの原則研修
育てる人材 組織を管理する管理職 組織に変化を生むチェンジリーダー
分かりやすさ ドラッカーは難解で実践しにくい 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化
定着 一過性で終わりがち すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着
伝え方 知識を頭で理解させる 情熱を込め、心から腹落ちさせる
実績 導入257社以上/受講1,520名以上

情熱が、組織に火をつける

多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。

これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。


ドラッカー7つの原則研修

「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。


著者:村瀬 弘介(むらせ こうすけ)/経営コンサルタント・著者

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した
「村瀬式ドラッカー・人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。
著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。
熱血の講義で、組織に火をつけ、管理職をチェンジリーダーに進化させる研修に定評がある。