ドラッカーの理論で経営・リーダーシップ・マネジメントを解説する紙上セミナーの第7回は、「PDCAが猛烈に回り成果を生む!2つの視点とは何か? 」について解説します。


多くの企業でPDCAの実践がされていますが、効果的にPDCAのサイクルを回せているといえる会社さんは少ないのが現状です。導入した当初は熱心に取り組んでいたのに、半年もすると誰も報告書を開かなくなっていた。そんな声を、私は中小企業の経営者から本当に何度も聞いてきました。

今回はPDCAの仕組みが猛烈に回るようになる2つのポイントをお伝えします。

この記事でまとめたこと

なぜ多くの中小企業でPDCAは回らなくなるのか

本題の2つのポイントに入る前に、まず「なぜ回らないのか」を整理しておきましょう。原因が分かれば、対策の意味がすっと腹に落ちるからです。

私が現場で見てきた限り、PDCAが形骸化する理由は、だいたい次の三つに集約されます。

理由その1:チェック(C)が「反省会」になっている

本来のC(Check)は、計画と実績のズレを冷静に見て、次の一手を考えるための工程です。ところが多くの職場では、これが「なぜできなかったのか」を問い詰める場になってしまう。上司が腕を組んで、達成できなかった理由を一人ずつ説明させる。これでは誰だって報告の場が憂うつになります。人は、責められる場所には近づきたくないのです。

理由その2:計画(P)が壮大すぎて、現場が動けない

経営計画書には立派な数値目標が並んでいるのに、では今週の月曜、営業担当のAさんが具体的に何をすればいいのかが決まっていない。大きな目標と日々の行動の間に、橋が架かっていないのです。橋がなければ、D(実行)は始まりようがありません。

理由その3:回す担当も、回す時間も決まっていない

「みんなで意識してやろう」で終わってしまい、いつ・誰が・どの会議で振り返るのかが決まっていない。中小企業では一人が何役もこなしますから、仕組みとして予定に組み込まれていないものは、忙しさの中で必ず後回しになります。

この三つを一言でまとめると、PDCAが回らない会社は「苦痛だから続かない」のです。逆に言えば、続けられる会社に共通しているのは、たった一点でした。

PDCAが続く組織と続かない組織を分ける、たった一つの違い

■PDCAの回る組織にするために必要なものは何か?

■PDCAを継続できる仕組みをつくるポイントは楽しいかどうか?

私は多くの企業さんで、PDCAサイクルを確立するプロジェクトに関わらせて頂きましたが、これが継続できるグループ、とそうでないグループには大きな違いがあります。

その違いとは、たった一点で、すごくシンプルなことなんです。

それは、それを行っていることが、メンバーにとって楽しいかどうかということです。

すごくシンプルですが、これはとても重要な事なので、意識されて下さい。

■組織で行う全てのプロジェクトを貫く本質とは?

楽しい仕組み、プロジェクトは続きます。

楽しくない仕組み、プロジェクトは数か月でしらけてしまい、終わってしまうのです。

PDCAについても同様です。

この楽しさがあるかないかが重要な鍵となるのです。

あなたの組織では、PDCAの仕組みを楽しく回せているでしょうか?

■PDCAを楽しくするためにはどうすればいいのか?

PDCAは通常苦痛を伴うものです。

現状上手くいっていること、上手くいっていないことをチェックする意味もありますし、場合によっては、その時点での達成度が悪く上司や周囲に言いづらいこともあります。

苦痛を伴ったり、やっていて楽しくないものは、生産性も上がらず、成果を生むことはありません。

私はコンサルの現場で、これを解消する2つの仕組みに気づくことができたんです。

PDCAが猛烈に回り出す2つの視点

■2つの仕組みを入れることでPDCAはサクサク回り出す。

楽しくPDCAの仕組みを回す2つのポイント、それは。

ポイント1.メンバーが相互に応援するメンターの関係になること。

ポイント2.仕事だけではなく、プライベートを盛り込んだPDCA、人生、生活向上のための総合的なPDCAとすること。

です。

2つのポイントを順に解説していきますね。

■ポイント1.相互が支援するメンターの関係になる。(マスターマインドの構築)

マスターマインドとは、成功哲学の元祖ナポレオンヒル博士の発明した言葉です。

ヒル博士はこのように述べています。

「マスターマインド」とは、二人以上の、統一した願望や目標を持った人間の集まりのことであり、また、それらの人々の間で行き交う、波長の合った思考のバイブレーションのことです。

「マスターマインド」の協力なしで、偉大な力を発揮し得た人はいません。

グループでPDCAを行う時には、誰かが誰かを問い詰めるなどということをしてはいけません。

相互の仕事、人生のより良き成長にむけて達成と励まし合って目標を達成していくという意識、相互の支援者としてのマスターマインドの関係がもとめられるのです。

ドラッカーも、組織の成果は「人の強みを生かすこと」から生まれると繰り返し説いています。弱みを責め合う場ではなく、互いの強みに光を当て、応援し合う場。PDCAの振り返りをそういう場に変えるだけで、報告の空気は驚くほど変わります。

実務のヒント:問い詰めを応援に変える三つの工夫

現場でマスターマインドの関係をつくるために、私がよくお勧めしている進め方があります。

一つ目。振り返りの冒頭は、必ず「できたこと・良かったこと」から発表してもらう。人はまず認められると、できなかったことも素直に話せるようになります。

二つ目。できなかった報告に対して、上司や同僚は「なぜやらなかったのか」ではなく「次に進めるために何を手伝えるか」を問う。矢印を過去ではなく未来に向けるのです。

三つ目。司会役を毎回持ち回りにする。特定の一人が裁く構図をなくし、全員が「支援する側」を経験すると、場の空気が対等になっていきます。

■ポイント2.仕事のみのPDCAではなく、参加者のプライベートも含めた話合いの場とする。

私は、そんなPDCAの確認は、仕事が7割、プライベートを3割でやって下さいと言います。

仕事のことだけでやると、機械的なチェックみたいになり、非常に息がつまるのです。

仕事だけでやると、無機質になり、苦しくなり、メンバーの活性は落ちてしまいます。

そこで、メンバーの仕事・プライベートも含む人生向上の機会としてのPDCAの場とすることが、大きなメンバー活性化の効果を発揮します。

PDCAには必ずメンバーのプライベートの内容も盛り込むことが大切なのです。

■私生活・プライベートの振り返りをPDCAに盛り込むと圧倒的に楽しくなる。

ここに私生活のPDCAを盛り込むと、場が圧倒的に和み、活性化されるのです。

例えば、このひと月、プライベートでは家族サービスとして、こういうことをしようと思っていたけれど、今一つ実施できていないことに気づいたりします。

今日は奥さんにプレゼントを買って帰ってあげようとか、今月はより仕事の生産性を上げ、メリハリをつけて家族との時間を取ろう、なんてことに気づくのです。

PDCAにメンバー相互のプライベートの確認をいれることで、メンバーの関係性が単にビジネスだけの繋がりから、よりより人生を応援するパートナーに進化するのです。

人生の成功に向けて相互に応援するパートナー関係で行わるPDCAは有機的で、わくわく楽しいものになります。

そしてメンバー相互間の人柄、人間としての心の交流が深く図られることで、よりチームに対するメンバーのエンゲージメント(忠誠心・愛着)も増す事になるのです。

エンゲージメントの高いチームは高い成果を生み、離職率も減ります。

中小企業で今日から始めるPDCAの回し方【実務ステップ】

理屈は分かった、では具体的にどう始めればいいのか。社員数十名規模の会社でも無理なく回せる、現実的な手順をまとめておきます。

ステップ1:週に一度、30分の「振り返りミーティング」を固定する

まず場を予定に固定します。毎週金曜の夕方など、曜日と時間を決めてしまう。時間は長くする必要はありません。少人数なら30分で十分です。大切なのは長さではなく、必ず開くことです。

ステップ2:一人あたり「仕事7・プライベート3」で話す

先にお伝えした比率をそのまま持ち込みます。仕事の進捗を話したら、最近うれしかったこと、家族との予定なども一言添える。この3割が、場の温度を決めます。

ステップ3:次の一週間の「たった一つの行動」を決めて終わる

振り返りは、次の行動を決めて初めて意味を持ちます。あれもこれもではなく、来週必ずやる行動を一人一つだけ宣言して締める。小さくていいのです。実行できる大きさに割るのが、Dを止めないコツです。

ステップ4:紙一枚のシートで「見える化」する

立派なシステムは要りません。氏名・先週の宣言・できたかどうか・今週の宣言、この四つが並んだ紙一枚があれば十分です。前回の宣言が目に見えることで、応援も励ましも生まれやすくなります。

この四ステップは、どれも特別な道具もお金も要りません。要るのは、責める場を応援する場に変えるという、リーダーの一つの決意だけです。それさえあれば、PDCAは驚くほど軽やかに回り始めます。

まとめ

PDCAが回らない最大の原因は、能力でも根性でもなく、その仕組みが「苦痛だから」でした。だからこそ、回し続けるための鍵は「楽しさ」にあります。

そのために必要なのが、今回お伝えした2つの視点です。

ポイント1.メンバーが相互に応援するマスターマインドの関係になること。責め合う場ではなく、強みを生かし励まし合う場にすること。

ポイント2.仕事だけではなく、プライベートを盛り込んだPDCA、人生、生活向上のための総合的なPDCAとすること。仕事7・プライベート3の比率が、場に血を通わせます。

そして、週一回30分の場を固定し、次の一週間のたった一つの行動を決めて終わる。紙一枚で見える化する。この小さな仕組みが、成果を生む猛烈なPDCAへと育っていきます。

ご参考にして頂き、PDCAを楽しい成長・向上の機会として用い、組織を卓越させて下さい。

PDCAが回らないに関するよくある質問

Q.PDCAが回らない一番の原因は何ですか?

最も多い原因は、振り返り(C)の場が「反省会・詰問の場」になってしまい、参加すること自体が苦痛になっている点です。人は責められる場を避けます。振り返りを、強みを生かし合い励まし合う応援の場に変えるだけで、継続率は大きく変わります。

Q.PDCAを回すコツを一言でいうと何ですか?

「楽しい仕組みにすること」です。楽しい仕組みは続き、苦痛な仕組みは数か月でしらけて終わります。具体的には、相互に応援し合うマスターマインドの関係をつくること、そして仕事だけでなくプライベートも含めた総合的な振り返りにすること。この二つが継続の核になります。

Q.忙しい中小企業でも続けられるPDCAの回し方はありますか?

あります。おすすめは、週に一度30分の振り返りミーティングを曜日と時間で固定し、一人あたり仕事7・プライベート3で話し、次の一週間にやる「たった一つの行動」を決めて終える、というやり方です。氏名・先週の宣言・達成の可否・今週の宣言を並べた紙一枚のシートがあれば十分に回ります。

Q.なぜプライベートの話をPDCAに混ぜるのですか?仕事に関係ないのでは?

仕事の話だけだと場が無機質になり、機械的なチェックになって息が詰まるからです。プライベートを3割ほど混ぜると場が和み、メンバー同士が人生を応援し合うパートナーへと関係が深まります。結果としてチームへの愛着(エンゲージメント)が高まり、成果が上がり離職率も下がります。

Q.どのくらいの期間で効果が出ますか?

場の空気は初回から変わることが多いですが、行動が定着し成果として表れ始めるまでは、おおむね三か月ほどを目安にお考えください。大切なのは、途中で完璧を求めず、小さな行動宣言を毎週続けることです。続けられる大きさに割ることが、最短の近道になります。

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