← 強い組織づくりのための人材育成のポイントとは?【中小企業のマネジメント強化】
経営者は、常に生産性を向上させるためにはどのような社員教育が必要かを考えているはずです。
それでも、社員教育で生産性が向上するスキルや考え方を組織全体に共有することは、決して容易なことではありません。
「これまで行ってきた社員教育では、思うような効果が見られなかった」
「生産性の向上につながる組織づくりには、どのようなルールがあるのか」
中小企業の経営者の方ほど、こうした悩みを一人で抱えがちです。人手にも時間にも限りがあるなかで、一人ひとりの社員がどれだけ成果を出せるかが、そのまま会社の業績を左右するからです。
今回は、上記のような疑問を解決し「企業の生産性向上と成果を上げるための社員教育のポイント」を、ドラッカーの考え方に沿って丁寧に解説していきます。
生産性の向上に必要な5つのルールを理解したうえで、どのような社員教育を行うべきかを考えていきましょう。
この記事でまとめたこと
■生産性は人材育成で向上できるスキルである
生産性は、人材育成と組織づくりによって向上できるスキルです。
つまり、現状がどのような組織でも、正しく人材育成を行うことで必ず生産性の向上を目指せます。
オフィスでの生産性向上と聞くと、仕事の効率化や仕組み化、あるいはツールの導入などを想像される方も多いでしょう。
しかし、本当に必要なのは「人」の教育だとドラッカーは言います。
どれだけ優れた仕組みやツールを導入しても、それを使いこなす人が育っていなければ、生産性は上がりません。逆に、成果を意識して働ける社員が増えれば、同じ人数・同じ設備のままでも、組織の生み出す成果は大きく変わっていきます。
経営者が、生産性向上につながる社員教育で学ぶべきスキルを理解し、「人」を教育することで、圧倒的に成果を上げる組織づくりができるでしょう。
なぜ「効率化」だけでは生産性が上がらないのか
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。それは、効率化と生産性向上は似ているようで別物だということです。
効率化とは「今やっている仕事を、より速く・より少ない手間でこなす」ことです。一方で生産性とは「投入した時間や労力に対して、どれだけの成果が生まれたか」を指します。
間違った方向の仕事をどれだけ速くこなしても、成果にはつながりません。むしろ「本来やらなくてもよい仕事」を効率よく大量にこなしてしまい、忙しいのに成果が出ないという状態に陥ることさえあります。
だからこそ、まず社員一人ひとりが「何が成果か」を理解し、成果に直結する仕事を選べるようになる。この土台があってはじめて、効率化の努力が生産性向上に結びつくのです。
■生産性向上のために社員教育で学ぶべき5つのスキル
ここからは、具体的にどのようなスキルと考え方を共有すると生産性は向上していくのかを解説していきます。
具体的には、つぎの5つのスキルを社員教育で学んでいく必要があります。
(1)成果
(2)集中
(3)強み
(4)時間
(5)貢献
この5つは、ドラッカーが「成果を上げる人に共通する習慣」として挙げたものと重なります。特別な才能ではなく、後から身につけられる習慣であるという点が、経営者にとって重要なポイントです。
それぞれのスキルを、ドラッカーの言葉と具体的な事例をあわせて紹介していきます。
経営者の方は、オフィスにいる社員一人ひとりの顔を思い浮かべながら読み進めてみてください。
スキル1:成果
生産性を向上させるためには、仕事の「成果を明確に定義する」ことが大切だとドラッカーは言います。
仕事をするうえで、成果を上げるために行うべきことを明確にしなければ、どれだけ効率的に業務を行っても成果は生まれません。
なぜなら、成果を意識しながら働いている社員は、思いのほか少ないからです。多くの人は「与えられた作業をこなすこと」自体を仕事だと思い込んでいます。作業をこなすことと、成果を出すことは、まったく別のものです。
成果を明確にするための事例には、以下のようなものがあります。
・会議の冒頭に、その議論で何を決めたいのか(目的)を社員に伝えてからはじめる
・朝礼で社員に対して「あなたの今日の仕事の成果は何ですか?」と問う
・期のはじめに、部署ごと・個人ごとに「今期、何をもって成果とするか」を一枚の紙に書き出して共有する
たとえば、ある製造業の中小企業では、朝礼で各自がその日の「一番大事な成果」を一つだけ宣言する習慣をつくったところ、社員が「今日は何のために働くのか」を意識するようになり、残業が減ったのに受注対応の質は上がった、という例があります。
このような取り組みを参考にすることで、自分の成果につながる仕事が明確となり、企業の生産性は向上していくでしょう。
スキル2:集中
「成果を上げるためには、成果に集中することが重要である」とドラッカーは言います。
生産性向上のためには、やるべき仕事に集中することが大切です。
集中するということは、つまり「やるべき仕事以外を捨てること」だとも言い換えられます。あれもこれもと手を広げるほど、一つひとつの仕事は中途半端になり、結局どれも成果にならない。これは規模の小さい会社ほど陥りやすい落とし穴です。
成果につながる仕事以外を、できる限りさせないことを意識してみましょう。
実務では、次のような進め方が有効です。一つは、部署やチームで「今はやらないことリスト」をつくること。もう一つは、新しい仕事を一つ増やすときには、必ず古い仕事を一つやめられないか検討することです。捨てる判断を経営者が後押ししてあげることで、社員は安心して大事な仕事に集中できるようになります。
スキル3:強み
成果を上げる社員は、強み(得意分野)から仕事をしています。
一方で、成果の上がらない社員は、弱み(苦手分野)ばかりに気を取られて仕事をしているのです。
弱み(苦手分野)を平均レベルまで向上させても、企業は大きな結果を生み出せません。
社員全員を平均レベルにそろえる社員教育ではなく、「強みを卓越させる」ための人事配置が大切です。
生産性を向上させるためには、社員の強みを見極めて、その強みが最も活きるポジションに配置することがポイントだと理解しておきましょう。
強みを見つけるには、日々の仕事のなかで「本人が苦もなく成果を出せている場面」に注目するのが近道です。上司から見て「なぜあの人にはこれが簡単にできるのか」と感じる部分こそ、その社員の強みであることが少なくありません。中小企業では一人が何役もこなすことが多いからこそ、誰にどの役割を任せるかという配置の判断が、そのまま生産性を左右します。
スキル4:時間
生産性向上には、時間をどのように活用するかが重要なスキルです。
前提として、社員全員が持っている時間のリソースは「1日24時間」しかありません。役職や能力に関係なく、時間だけは誰にも平等で、しかも増やすことができない資源です。
社員が持っている24時間を、強みと成果につながる仕事だけに集中できる、まとまった時間として使ってもらうことが重要です。
できる限り細切れの時間ではなく、まとまった時間を作りましょう。
なぜなら、同じ合計1時間の仕事でも、まとまった60分間と、10分間を細切れにした6回分では、生み出せる成果がまるで違うからです。一度中断されると、元の集中状態に戻るまでに時間がかかるためです。
オフィスにいる社員の時間は、常に奪われ続けています。
同僚や上司からの突然の質問、電話対応、次々と届くメールやチャットへの対応などに、時間は少しずつ奪われ続けてしまうのです。
そのため、できる限りまとまった時間を意図的に用意して、生産性を向上する組織づくりを目指しましょう。
主な事例として、1日のうち決められた時間帯を「集中タイム」に設定し、その間は社員同士の声かけや電話の取り次ぎを控える、というルールを設けて生産性の向上を実現している企業もあります。会議を午前と午後のどちらかにまとめる、割り込みの少ない時間帯に重要な仕事を割り当てる、といった工夫も、まとまった時間を守るうえで効果的です。
スキル5:貢献
貢献とは、自分が組織や顧客から何を求められているかを「外部視点」で意識するスキルです。
成果を上げるためには、顧客やチームに貢献できる仕事に集中することが重要です。
自分がやりたい仕事ではなく、やるべき仕事、つまり組織や顧客から求められている仕事を優先しなければ、生産性は向上しないと理解しましょう。
ここで大切なのは「自分の仕事は、誰の・どんな役に立っているのか」を一人ひとりが言葉にできることです。たとえば経理担当者であれば「正確な数字を早く出すことで、社長が正しい経営判断を下せる」というように、自分の仕事が組織の成果にどうつながっているかを理解している社員は、言われなくても大事な仕事を選び取れるようになります。
チームや顧客に貢献する意識(外部視点)を持って仕事ができているかを見極め、その視点を育てる社員教育を行うことで、組織全体の生産性向上が可能になります。
■5つのスキルを組織に根づかせる進め方
5つのスキルは、一度説明して終わりにしても定着しません。生産性の高い組織をつくるには、これらを日々の仕事のリズムに組み込んでいくことが欠かせません。
取り入れやすい順序としては、次のように進めるのがおすすめです。
・まず「成果」を全員の共通言語にする(何が成果かを言葉にして共有する)
・次に「集中」と「時間」で、成果に向かう時間を確保する(やめる仕事を決め、まとまった時間を守る)
・そのうえで「強み」を活かした配置に見直す
・最後に「貢献」の視点で、一人ひとりの仕事を組織の成果とつなげる
いきなり5つすべてを変えようとすると、現場は混乱してしまいます。中小企業の場合はとくに、まず一つの部署や一つの習慣から小さく始め、うまくいった手応えを全体に広げていくほうが、無理なく定着します。経営者自身がこの5つの視点で判断し、言葉にして繰り返し伝えることが、組織に根づかせるうえで何よりの近道です。
■まとめ
今回は、ドラッカーが定義する「企業の生産性向上と成果を上げるための社員教育のポイント」を、成果・集中・強み・時間・貢献という5つのスキルに沿って解説してきました。
生産性は、設備や仕組みだけで決まるものではなく、人材育成と組織づくりによって高められるスキルです。
社員の生産性を向上させるためには「社員の強みを活かせる仕事を理解し、その成果につながる仕事に集中させること」がポイントです。そして、その集中を支えるためにまとまった時間を確保し、一人ひとりが「自分の仕事は誰の役に立っているのか」という貢献の視点を持てるよう導いていく。この積み重ねが、組織全体の生産性を大きく変えていきます。
この記事で紹介した内容を意識した環境づくりと社員教育を行えば、いまの人数・いまの設備のままでも、確実に生産性を向上させられるでしょう。
ドラッカー流の生産性向上の方法、中小企業のマネジメントと社員教育については、以下の動画でも解説しています。
■社員教育と生産性向上に関するよくある質問
Q1. 社員教育を始めても、なかなか生産性が上がりません。何が原因ですか?
多くの場合、原因は「成果の定義があいまいなまま、効率化だけを進めている」ことにあります。何をもって成果とするかが社員に共有されていないと、頑張りが成果に結びつきません。まずは部署ごと・個人ごとに「何が成果か」を言葉にして共有するところから始めてみてください。そのうえで、成果につながらない仕事を減らし、まとまった時間を確保する順序で進めると、効果を実感しやすくなります。
Q2. 中小企業でも、大企業と同じような社員教育で生産性は上がりますか?
本記事で紹介した5つのスキル(成果・集中・強み・時間・貢献)は、企業規模を問わず有効な原理原則です。むしろ、一人が果たす役割の大きい中小企業のほうが、一人ひとりの生産性向上がそのまま業績に直結しやすい面があります。大がかりな研修制度がなくても、朝礼や日々の声かけ、配置の見直しといった身近な取り組みから十分に始められます。
Q3. 社員の「強み」は、どうやって見つければよいですか?
日々の仕事のなかで、本人が苦もなく成果を出せている場面に注目するのが近道です。上司から見て「なぜこの人はこれを簡単にこなせるのか」と感じる部分に、その社員の強みが隠れていることが多くあります。本人に「どんな仕事をしているときが一番やりやすいか」を聞いてみるのも有効です。見つけた強みが最も活きるポジションへ配置し直すことが、生産性向上につながります。
Q4. 「集中する時間」を確保したくても、電話や問い合わせが多くて難しいです。
まずは1日のうち短い時間帯からで構いません。決められた時間を「集中タイム」とし、その間は電話の取り次ぎや声かけを控えるルールを設けてみてください。会議を特定の時間帯にまとめる、割り込みの少ない時間に重要な仕事を割り当てる、といった工夫も効果的です。全員が一斉に始めるのが難しければ、一つの部署から試し、うまくいったやり方を広げていくとよいでしょう。
Q5. 社員教育の効果は、どのくらいの期間で表れますか?
「成果の共有」や「集中タイムの導入」といった取り組みは、数週間から数か月で現場の変化として表れ始めることが多いです。一方、強みを活かした配置や貢献の視点が組織文化として根づくには、半年から一年ほどの継続が必要になります。大切なのは、一度で完成させようとせず、小さな取り組みを続けながら組織の共通言語にしていくことです。












