経営者の多くは、社員がやめることに悩んでいます。

採用しても定着しない。育てた社員に限って辞めていく。求人広告を出しても応募が集まらない。労働人口が減り続ける現代では、社員がやめない会社をつくることは、そのまま経営リスクを減らすことに直結します。ひとりの退職が、採用コスト・教育コスト・引き継ぎの負担・残ったメンバーの士気低下という形で、想像以上に大きな損失を生むからです。

「どうすれば社員がやめない会社になるのか」

この悩みを解決するには、待遇や制度をいじる前に、社員がやめない会社の原理・原則を学ぶ必要があります。給料を上げても、休みを増やしても、辞めるときは辞めます。逆に、けっして高待遇とはいえない中小企業でも、社員が生き生きと働き続けている会社はいくらでもあります。その違いはどこにあるのか。

今回は、社員がやめない会社をつくるために、社長・経営者はどのような対策を講じていけばいいのかを、ドラッカーの「人を活かす経営」の視点から具体的に解説していきます。

この記事でまとめたこと

社員がやめない会社の作り方

社員 辞めない会社

社員がやめない会社の作り方の結論は、ドラッカーの「人を活かす経営」を実現することです。

ドラッカー経営では、大切なことは人を活かすことであり、「マネジメントとは人のことである」という名言にそれは象徴されます。

ドラッカー経営の本質は、人を幸せにして、社会と顧客に貢献できる会社をつくることです。会社が儲けるために人を使うのではなく、人が力を発揮した結果として業績が上がり、その業績がまた人を幸せにする。この順番を取り違えないことが、離職を防ぐ土台になります。

社員がやめない会社をつくるために、人を活かす経営をいかに実現するかが、ドラッカー経営の真髄です。

それでは、社員がやめない会社の作り方を、具体的に解説していきます。

そもそもなぜ社員は辞めるのか

対策を考える前に、退職の本当の理由を押さえておきましょう。表向きの退職理由は「一身上の都合」「家庭の事情」であっても、本音の理由はたいてい別のところにあります。中小企業の現場で繰り返し見られるのは、次のようなものです。

自分の強みが活かされていない

得意なことではなく、苦手なことばかりを任される。頑張っても評価されるのは「できていない部分」ばかり。人は、自分の力が発揮できていないと感じたとき、静かに心が離れていきます。給料の不満よりも、この「活かされていない感覚」のほうが、退職の根深い原因になっていることが多いのです。

社長や上司との信頼関係が薄い

何を考えているのか分からない社長。話を聞いてくれない上司。方針がころころ変わる会社。人は、尊敬できない・信頼できない相手のもとでは長く働けません。とくに中小企業では、社長という人間そのものが、働き続ける理由にも辞める理由にもなります。

仕事の意味や貢献実感を持てない

自分の仕事が、誰の役に立っているのか分からない。言われたことをこなすだけで、成長している手応えがない。人は、意味を感じられない仕事には長く耐えられません。逆にいえば、貢献実感と成長実感がある職場からは、人はなかなか離れないのです。

これら三つの原因は、いずれも待遇の改善だけでは解決しません。共通しているのは、「人が活かされているかどうか」という一点です。だからこそ、離職対策の本丸は「人を活かす経営」になります。

人を活かすとは人の強みを活かすことである

まずは、人を活かすとはどういうことか、を理解しましょう。

人を活かしている会社とは、仕事によって自己実現と社会貢献ができ、やめずに働き続けたいと社員が感じられる会社のことです。

また、ドラッカーは「人を活かすとは人の強みを活かすことである」と言います。

経営者にとって人を活かすこととは、社員の強みを活かすことです。人にはそれぞれ、生まれ持った得意分野があります。数字に強い人、人に好かれる人、地道な作業を苦にしない人、新しいアイデアを次々に出す人。この強みを見つけ、その強みが発揮できる仕事に配置することが、経営者の最も重要な仕事のひとつです。

ドラッカーを学ぶことで、社員がやめない会社をつくることができます。

このように、人の強みを活かすという原理・原則を理解することは、経営者の使命ともいえます。

弱みを強化しても平凡になることさえ疑わしい

多くの経営者は、社員の弱みを平均レベルにすることに注目してしまいます。

しかし、社員の弱みを強化しても、平凡になることさえ疑わしいのです。

ビジネスでは、平凡はゼロ点と同じことです。凡庸な会社は選ばれません。

平凡な会社は、市場で生き残ることはできないのです。あらゆる社員の弱みをならして「そこそこできる集団」をつくっても、そこから突き抜けた成果は生まれません。顧客が選ぶのは、どこかに強烈な強みを持った会社だからです。

強みを活かすには、人の弱みを中和して、強みを爆発させることが大切です。

社員の弱みをチームで補い合って、強みに集中させてあげる経営をする必要があるのです。ひとりの弱みは、それを得意とする別のメンバーが埋める。そうやってチーム全体で弱みを消し、それぞれの強みだけを前面に出す。これが、中小企業のような少人数の組織だからこそ実現しやすい、人を活かす配置の考え方です。

人を活かすことに失敗する会社の具体例

人を活かせず、社員の強みを活かせないマネージャーの例をご紹介します。

よくある失敗は、「受験勉強の思考方法」で弱みを強化する社員教育を行ってしまうことです。

例えば、学生が英語のテストで70点、数学のテストで20点だった場合、ほとんどの人が赤点を防ぐために数学に力を入れますよね。学校教育では、これは正しい。全教科の合計点で評価されるからです。

しかし、会社で受験勉強の思考方法を行った場合、人を活かして社員がやめない会社は作れません。営業が得意で事務が苦手な社員に、延々と事務の改善指導をする。その間、本人の武器である営業力は伸びず、苦手な事務も大して伸びず、ただ自信だけが削られていきます。やがて「この会社では自分は評価されない」と感じ、辞めていく。会社は貴重な戦力を、自らの手で追い出してしまうのです。

経営者は、社員の弱点と強みを理解して、強みだけに集中できる環境を作ってあげることが重要です。

社員の強みを見つけて活かす実務ステップ

「強みを活かせ」と言われても、日々の業務のなかでどう進めればいいのか。中小企業ですぐに着手できる具体的な手順を示します。

ステップ1 社員一人ひとりの強みを書き出す

まず社長・上司が、社員全員について「この人の強みは何か」を紙に書き出します。過去に成果を出した仕事、本人が苦もなくこなしている作業、周囲から頼られている役割。ここから強みは見えてきます。判断に迷うときは、本人に「どんな仕事をしているときが一番充実しているか」を直接聞くのが早道です。

ステップ2 強みが活きる仕事に配置し直す

書き出した強みをもとに、担当業務を見直します。得意でない仕事を無理に続けさせていないか。強みを眠らせたまま放置していないか。すべてを一度に変える必要はありません。まずは一人、一つの業務から、強みが活きる配置へ動かしてみることです。

ステップ3 弱みはチームで補う仕組みをつくる

強みに集中させれば、必ず誰かの苦手な部分が空きます。そこを、それを得意とする別のメンバーや仕組みで埋めます。役割分担を明確にし、「あなたはここに集中していい」と言い切ってあげる。この一言が、社員の安心と定着につながります。

ステップ4 強みを発揮した成果をきちんと認める

強みが成果につながったら、その場で具体的に認めます。「よくやった」ではなく、「あなたの◯◯という強みが、この結果を生んだ」と伝える。人は、自分の強みが会社に貢献していると実感できたとき、その場所を離れたくなくなります。

社員の前で強みを活かすと宣言する

社員がやめない会社をつくるために、社長が行うべき具体的なアクションをご紹介します。

まず社長がやるべきことは、社員の前で強みを活かしていくと宣言することです。

具体的に、宣言すべき内容は以下の2つです。

1、社員の弱みに注目してしまっていた場合、その事実を認める。
2、これからは社員の強い部分を活かし、弱みはチームでカバーしていくことを宣言する。

社長が自らの過ちを認めることは、勇気のいることです。しかし、この率直さこそが、社員との信頼関係を一気に深めます。「この社長は本気で自分たちを活かそうとしている」と伝わったとき、社員の心は会社にとどまります。

社員の強みを活かすと社長が決意表明し、徹底的に実行することが、高い成果につながるのです。

まとめ

社員がやめない会社を作り上げるには、小手先の待遇改善ではなく、人を活かすことを至上の目的とするドラッカー経営が有効です。

本記事の要点を振り返ります。社員が辞める本当の理由は、強みが活かされていないこと、社長との信頼が薄いこと、貢献実感を持てないことにあります。だからこそ、対策の本丸は「人の強みを活かす経営」です。弱みを平均に近づけても平凡にしかならず、市場で選ばれる会社にはなりません。社員一人ひとりの強みを書き出し、その強みが活きる仕事に配置し、弱みはチームで補い、発揮した成果をきちんと認める。そして社長自身が、強みを活かすと社員の前で宣言し、徹底して実行する。

ぜひ、小手先の経営テクニックではなく、ドラッカー経営の原理・原則を理解し、実践してみてください。

あなたの会社が人を活かし、高い成果を上げる会社に進化することをお約束します。

社員が辞めない会社づくりに関するよくある質問

給料を上げれば社員は辞めなくなりますか

一時的な効果はあっても、根本的な解決にはなりません。退職の本音の理由の多くは、強みが活かされていない、貢献実感が持てない、社長を信頼できないといった点にあります。待遇はある水準を超えると、それ以上上げても定着への効果は薄れます。まずは、社員が自分の強みを発揮できているかを見直すことが先決です。

中小企業でも人を活かす経営は実現できますか

むしろ中小企業のほうが実現しやすいといえます。社員一人ひとりの顔と強みが見え、社長の意思が組織のすみずみまで届きやすいからです。少人数だからこそ、弱みをチームで補い合い、それぞれの強みに集中させる配置が組みやすいのです。大企業のような複雑な制度は必要ありません。

社員の強みがうまく見つけられないときはどうすればいいですか

本人に直接聞くのが最も早い方法です。「どんな仕事をしているときが一番充実するか」「周囲からよく頼まれることは何か」を尋ねてみてください。過去に成果を出した仕事や、苦もなくこなしている作業のなかにも強みは隠れています。社長一人で判断せず、複数の視点で見ることも有効です。

強みを活かすと、苦手な業務は誰がやるのですか

それを得意とする別のメンバーや、仕組み・外部の力で補います。全員が全業務をそこそここなす体制ではなく、各自が強みに集中し、互いの弱みを埋め合う体制をつくるのです。役割分担を明確にすることで、一人あたりの生産性はむしろ高まります。

効果が出るまでにどれくらいかかりますか

社員の表情や職場の空気は、社長が本気で「強みを活かす」と宣言し、実際に配置を変えた段階から変わり始めます。数字としての定着率や業績への反映には時間がかかりますが、まず一人、一つの業務から着手し、成果を認めることを積み重ねれば、変化は着実に広がっていきます。

社員がやめない・人を活かす会社の作り方【社員が辞める会社を防ぐ・組織づくり・マネジメント】については、以下の動画でも解説しています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし、自社の経営や組織にドラッカーをどう活かせばよいか、少しでもお悩みでしたら、ここから先もぜひ読んでみてください。ドラッカーに関心をお持ちの経営者・管理職の方への、補足のご案内です。

なぜ、一般的な管理職研修では組織が変わらないのか

ここまでの「強みを見る視点への切り替え」は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。

変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。

根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない

生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。

とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。

中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則

そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。

いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること

マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。

観点 一般的な管理職研修 村瀬式ドラッカー7つの原則研修
育てる人材 組織を管理する管理職 組織に変化を生むチェンジリーダー
分かりやすさ ドラッカーは難解で実践しにくい 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化
定着 一過性で終わりがち すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着
伝え方 知識を頭で理解させる 情熱を込め、心から腹落ちさせる
実績 導入257社以上/受講1,520名以上

情熱が、組織に火をつける

多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。

これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的な管理職研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。


ドラッカー7つの原則研修

「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の管理職研修や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。


著者:村瀬 弘介(むらせ こうすけ)/経営コンサルタント・著者

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した
「村瀬式ドラッカー・人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。
著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。
熱血の講義で、組織に火をつけ、管理職をチェンジリーダーに進化させる研修に定評がある。