ドラッカー講師の村瀬弘介です。

我々のビジネスがいかなる時でも成長し続けたら理想ですが、経営はいつもうまくいくとは限りませんよね。

経営が、一時うまくいったと思ったら、次の年には、おどり場になったり、下降したり、社長には、一時の予断もゆるされません。社長が気を緩めた瞬間に組織はあっという間に衰退を始めていきます。

今回は、社長が気をつけるべき、衰退する会社の特長についてまとめました。

私は、コンサルティング・セミナーでお会いした1200社以上を見てきた上で、「衰退する会社」には共通する顕著な特徴があることがわかりました。

例えば、衰退する会社は、顧客志向がすたれ、生産性が追い、イノベーションがおきず。社員がやめ、資金面で底をつき、組織は死に至ります。

今回は、その衰退する会社の持つ特徴を、解説します。一つでもあてはまるものがあれば、要注意です。衰退する組織になることを免れ、あなたの組織の成長を持続させるヒントにしていただけましたら幸いです。

この記事でまとめたこと

【衰退する会社の特徴チェックリスト:マーケティング編】

■マーケティング面に現れる「衰退する会社」の特徴

・内部志向になり、顧客よりも上司の顔色を窺っている。

衰退する会社はほぼすべて、内部志向が横行しています。ビジネスの王様はお客様であり、お客様に支持されなければ組織は存在しえません。衰退する会社では、内部志向におちいり、お客様よりも社内のルール、上司の顔色を窺いながら仕事をする社員でいっぱいです。内部志向の組織は、市場からは、見放され、衰退から滅亡にかわってしまうのです。

・顧客志向が欠如して、顧客に対して粗野な態度、言動が見える。

衰退する会社は、顧客を重視しません。自己中心です。そのため、顧客を基本的に舐めています。それは顧客に対する敬称の略、裏で悪口を言う、協力会社を馬鹿にする等、周囲の利害関係者や顧客に現れます。次第にその気質は外部に明確に表れ、顧客、協力会社に見放され、衰退し、会社は死にいたります。

・新規顧客の獲得にばかり注力し、既存顧客の紹介・リピートが見えていない。

事業を永続させていく会社の特徴は、なじみのお客様、リピート顧客を大切に扱うことです。新規顧客の獲得にはリピートにくらべ7倍のコストがかかるのです。
衰退する会社は、新規顧客の獲得ばかりにいつも追われ、既存客をないがしろにしています。結果として、息切れして、組織は死にいたります。

・顧客への価値向上を気にすることなく売上ばかり追求している。

売り上げ至上主義で、顧客への愛顧、貢献がないがしろになっていることも衰退する会社の特徴です。事業の成功は、顧客をいかに満足させるか、つまり顧客への提供価値にかかっています。売り上げは顧客を満足させた価値に対する評価に過ぎません。

顧客への価値を追わずに売り上げ至上主義に走ると、顧客へのサービスの低下がおき、また会社内も殺伐として仕事があれます。「売り上げを追うな、(良い)仕事を追え。」 これが繁栄する会社の条件です。

・マーケターが社内に閉じこもり。顧客と面談していない。そのため、商品開発が市場と関係のない、会議室の中でなされている。

商品開発や顧客とのコミュニケーションを担当するマーケターが、顧客とあわずにデスクの上でだけ戦略を練っている会社、これこそが、衰退する会社の顕著な特徴です。市場とのコミュニケーションを忘れ、自社内部でのみ商品を企画しても、その商品がヒットするかどうかは、まるで博打のようなものです。

マーケターの定位置は、社内ではなく、市場・お客様のところです。積極的に市場に出て、顧客と市場のニーズを深く把握しないで行う会社は衰退から滅亡の危険を経験することになるのです。

・社長・役員・管理職が、会社の中にこもって外にでてこない。

こちらも先ほどと同じことが当てはまる、衰退する会社の顕著な特徴です。社長・幹部が顧客への表敬訪問、挨拶を忘れて、社内に閉じこもっていばっている。これでは、市場・顧客の変化に取り残されてしまいます。社長・役員・管理職といったリーダーの定位置は外、お客様のところです。市場・顧客を中止に据えない経営は、衰退する会社を生み、死にいたらせます。

・顧客とのコミュニケーションが不足している、結果として顧客を理解していない。

ビジネスは顧客とのコミュニケーションをマネジメントすることです。顧客と関係抜きに存在する会社はありません。そして、対象となる顧客は組織がいるのは組織の外部です。外にいる顧客に対しては、こちらから外部に出て、積極的にコミュニケーションを取らなければ、ビジネスのヒントを得られることはありません。

社内にとじこもり、頭の中だけで、経営の方向性を決めるのは、まるで妄想のようなものです。衰退する会社では、顧客とのコミュニケーションが圧倒的に不足しています。顧客から利益が得られているという厳然たる事実を、再確認し、いかにして顧客に学ぶか、を考え抜かない限り、組織は衰退を免れないこととなります。

・差別化できていない 昔は差別化できていた商品も、コモディティ化して、代替商品や価格競争に巻き込まれている。

ビジネスは相対競争です。顧客が市場で何かを購入しようとするときに、1社のみから購入することはありません。そのため、差別化して顧客に優先的に選ばれる必要があります。差別化とは他社より優先して選ばれる「違い」を作り出すことです。

また、競争市場では、今は差別化できていたとしても、ライバルがあっという間に逆転することがありえます。そのため、差別化は一度したら終わりでなく、常に歯を研ぎ、商品・サービスのレベルを向上させ、差別化を継続できるようにする必要があります。差別化できないと、コモディティ化をたどり、価格競争に巻き込まれることとなります。

差別化ができていないことは、市場に影響力を失うということです。このように、コモディティ化にまきこまれれば、しだいに逃げ場のなき価格競争に入り、衰退する会社へと変わります。結局は、差別化しない限り、市場で淘汰されることとなります。

さて、次はイノベーションの視点で、衰退する会社に現れる特長を見てみましょう。

【衰退する会社の特徴チェックリスト:イノベーション編】

■イノベーション面に現れる「衰退する会社」の特徴

・ことなかれ主義で、ここ数年新たな商品・サービスの開発が行われていない。

市場・顧客は変化してやみません。そのため組織は常にイノベーションを起こしていかなければいけません。しかし組織というものは一度できると変化を異様に嫌うようになります。

そのため、経営者は意図して、組織を外部に適応できるように、揺さぶりをかけていかなければなりません。また、今売れている商品もいつかは、必ず売れなくなります。そのために、未来を見越した商品開発がかかせないのです。しかし放っておいてはイノベーションは起きません。

スリーエムという会社では。毎年の売り上げの3割は、昨年度の新商品から得るというルールがあります。意図して明日の稼ぎ頭となる商品、サービスをつくらなければ、会社は衰退していきます。衰退する会社では、現状の商品に満足して、新たなイノベーションに取り組めていない場合がほとんどです。いずれは死にいたります。

・保守的な経営幹部が、あらたな事業アイデアをつぶしてしまっている。

ドラッカーは言います。「イノベーションの最大の敵は、これまでの成功体験である。」と。現在の事業に関する成功体験が、将来のイノベーションについての大きな壁となります。衰退する会社では、これまでの成功体験を語る経営幹部が、あらたなアイデアが出るたびにつぶしていきます。

新たなアイデアは、場合によっては既存のやり方の否定につながり、古くからやってきた幹部にとっては面白くない場合も多いのです。組織は時に自己否定をして、イノベーションを起こしていかなければ、衰退の道を免れることはできません。衰退する会社と、繁栄する会社の違いは、勇気を持って現状否定をでき、イノベーションを継続できるかにかかっているといっても過言ではありません。

・定期的期的に古くなった取り組みを断捨離する仕組がない。

ドラッカーは言います。
「組織は船と同じである。選定に古い牡蠣殻がいっぱいついたままでは、スピードを上げることはできない。」と。

組織では、常に新たな取り組みがなされています。書類にしても、はじめは少なかったものが、いつのまにかその仕事に関連する、重複作業が増えてしまい、無駄な作業をしているうちに、一日を終わってしまったなんてことも起きてきます。そのため組織は定期的に、古くなったものを捨てる断捨離作業が必要となります。

この作業をドラッカーは「体系的廃棄」と語っています。体系的な廃棄の仕組のない組織では、仕事にうもれ、非効率な作業・重複した作業も多く発生し、効率性は失われ、仕事のスピードもどんどん落ちてきます。経営から、スピードと生産性を失い、衰退する会社にならないために、定期的に廃棄を行っていきましょう。

次は生産性に現れる、衰退する会社の兆候についてお話していきましょう。

【衰退する会社の特徴チェックリスト:生産性編】

■生産性面に現れる「衰退する会社」の特徴

・社員が成果を意識せずにだらだらと働いている。

生産性を上げるためには、「成果」を意識して働かなければなりません。成果を意識して成果を上げることと、ただ単に動き回ることはことなります。組織は生産性を上げていかなければ、市場と顧客の期待に応え、サービスを提供し続けることはできません。

衰退する会社では、社員は成果を意識せず、なんとなく働いています。成果は意識して初めてあげることができます。経営者は、組織全体が成果を意識して、成果から働くようにしなければいけません。生産性の低さは、衰退する会社が持つ特徴の一つです。

・もう意味がなくなっている作業・書類などの棚卸がされていない。

組織の生産性が低い理由の一つに、無駄な仕事が多すぎるということがあります。過去には必要であったけれども今は必要のない書類、誰も発言しないため、本来は書類の回覧ですませることのできる会議等があります。このような仕事は意識して廃棄していかなければ、無駄な仕事が増えすぎて、メンバーは本来の成果に集中することができなくなります。

そのため、組織は常に仕事の棚卸をして、体系的に無駄を廃棄し、仕事の量を本来の重要な成果に集中させていく必要があります。仕事の棚卸がなされずに、成果につながるかわからない無駄な仕事が多いという状況は、衰退する会社が持つ特徴です。

・残業が当たり前の社風となり、社員が疲弊している。

労働時間を考える際には、ある仕事を行うのに、人は2時間与えられると2時間で、半日だと半日かけてやり遂げるという研究結果があります。これをパーキンソンの法則といいます。残業が当たり前の会社では、社員が残業を見越してだらだらと仕事をすることになり生産性が低くなります。

しかも帰宅の時間も遅れ、疲労も蓄積し、生産性はさらに低下することになるのです。衰退する会社は、仕事は定時に終わらなくて当然という、残業を固定化するムードがあります。少しでも仕事を切り上げて、さらに明日のために滋養するように社員の帰宅を促すこと。場合によっては残業禁止デー等とつくり強引にそこまでに終わらせなければいけないように仕事を構築することも重要になるのです。

・組織と生産性の指標を持っておらず、見直されることもない。

生産性を考える時には、成果の指標を定め、その目安に対して、比較検討することがなければいけません。漠然と仕事にとりかかって、なんとなく終わっていたのでは、仕事の生産性向上のためのフィードバックもできません。社長は、仕事事に生産性やゴールの指標を定め、社員が成果指標を意識しながら働くように仕組をつくる必要がありません。

衰退する会社は、なんとなく、経営されています。明確な数値目標などがなく、全体がなんとなくだらだら仕事にとりかかっているのです。これでは成果を上げることはできません。社長が明確な成果目標を定め、それに向かってはしってもらうからこそ、組織は成長し、衰退する会社にならずにすむのです。

衰退する会社では、社員さん一人ひとりのリーダーシップ面にもその兆候が現れます。
次はリーダーシップ面での衰退する会社の特長をみていきましょう。

【衰退する会社の特徴チェックリスト:リーダーシップ編】

■リーダーシップ面に現れる「衰退する組織」の特徴

・社員が言われた事しかやらず、自律性がない。

衰退する会社の社員には、基本的に自立性がありません。自律性やモチベーションが低いため、社員さんは基本的に上から言われたことをしぶしぶやっているのが現状です。

社員に自律性がないということは、業務の積極的改善や、顧客への提供価値の向上がなされないということです。このような状況では、組織はどんどん時代遅れになり、市場のニーズから離れていきます。結果としてこのような会社は衰退し、死に至るのです。

・社員に昇進意欲がない。

衰退する会社の社員は、成長意欲がありません。そのため、その組織の中で自己が成長し、さらに周囲の人や顧客に貢献しているイメージがつきません。彼らは今の仕事に決して満足しているわけではないのですが、何か新たなチャレンジをして変化を起こすことはもっと面倒臭いと思ってあきらめています。

そのため、上司部下の面談等でも、衰退する会社の社員は、将来どうなりたいかというビジョンを語ることができません。また会社も昇進するにあたって魅力的な条件を整えていないのが現状です。

組織は「人」でできています。人の成長が組織の成長です。結果として人が成長しようとしない会社は衰退し、死に至ります。

・社員にオーナー意識がなく、仕事を他人事にしている。

衰退する会社の社員は、仕事を自分ごととしてとらえていません。上からまかされた仕事をなんとなく他人事としてこなしています、そのため、成長意欲や、仕事への改善動機がうまれません。何か問題があったとしてもどこ吹く風です。

これに対して成長する会社では、社員一人ひとりが自分の仕事を自分ごととして責任と誇りをもって日々の改善に励んでいません。仕事を自分ごととして、責任と誇りをもって取り組めるかどうかは、衰退する会社になるか、成長する会社になるかの大きな分かれ目なのです。

・リーダーが正しいことをしていない。

衰退する会社では、「なすべきこと」がきちんとなされていません。あたりまえのことが、あたりまえに行われないのです。この一つの原因は、リーダーの姿勢にあります。

リーダーの発言と行動がかけはなれたものだったり、倫理規範がかけていたり、リーダーが組織に正しい規範をもたらしていない場合、組織文化が退廃し、ものごとがきちんとなされない、歪んだ組織になります。

リーダーが背を正し、言行一致で、正しい原理原則にそった経営を行うということは、企業文化を健全なものにして、組織が成長していく上で、不可欠の条件です。

リーダーが正しいことをしていない組織は、組織風土が乱れ、衰退する会社となり、死にいたります。

それでは、次はマネジメント面に現れる、衰退する会社の特長を見てみましょう・

【衰退する会社の特徴チェックリスト:マネジメント編】

■マネジメント面に現れる「衰退する組織」の特徴

・モチベーションが低く、優秀な人がどんどん離職していく。

衰退する会社では、社員さんは仕事に責任と働き甲斐をもっていません。モチベーションも低く、ただ食べるために働くと断言する社員さんも多いです。組織の衰退する特徴について、ドラッカーはこう言ってます。

「無能でやる気のない人がやめていくのは仕方がない。しかし、優秀でやる気のある社員がやめていくとしたら、それは組織衰退の特長である。」(現代の経営:ダイヤモンド社)

もしあなたの会社で、最近、優秀でやる気のあった人間がどんどんやめていくとしたら、それは組織衰退の兆候です。何も手を講じずに放っておけば、衰退する会社となり、最後は滅亡します。

・適正な人事評価制度がなく、頑張った人が評価されない。

ドラッカーは人事評価こそ、社員さんへの最大のマネジメントツールであると言います。どのような人が優遇されるかを方向づける人事評価は、どのような人に成長してほしいかという社長の意志の表れだからです。

人事評価で一番まずいのは、頑張った人も頑張ってない人も同じように評価されることです。これでは、公平性もありませんし、組織のためにさらに貢献しようという意欲もわきません。もちろん、人事評価制度に完全な公平性を持ちこむことはできません。しかし頑張った人が評価され、そうでない人にはさらに成長を促進するものになっていることは、成長する会社にかかせません。

衰退する会社では、一様、人事評価制度が曖昧です。基準もはっきりしていませんし、どのように頑張ることが求められるのかが明確ではありません。

社員を動機づけるためには、会社に即した頑張りをした人が適正に評価される、明確な人事評価をすることが欠かせません。

・教育制度 成長支援の仕組がない。

成長する会社の社員は、教育投資も惜しまれず、日々業務研鑽、マネジメントの知識の導入と、さらに高い市場価値を出すように準備されています。

しかし衰退する会社では、社員の成長が考えられておらず、また成長を視点する仕組もないことがほとんどです。そのような会社の社長は一様に言います。社員なんて教育する必要はない。研修なんて時間の無駄だと。しかし、組織は人でできています。人の成長が組織の成長なのです。

ドラッカーは言います。
「組織に優劣があるのではない。学んでいるかいないかの違いである。」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

組織の最大の資産は人です。成長する会社は、社員さんが学び、成長しているのです。事業を成長させるためには、社長は社員に教育投資を惜しんではならないのです。

・職場が殺伐としている。ハラスメント・不倫等・風紀が乱れている。

成長する会社の職場には、整然とした規律があり、社員もその中できびきびと働いています。ビジョナリーカンパニーの著者で有名はジム・コリンズは、成長する組織には、「自由と規律」が欠かせないと言っています。

社員に自主性をもって仕事をしてもらうための自由な裁量、そしてその自由さが混乱しない程度の厳しい規律によって組織は統率されるべきだというのです。

成長する会社の風土は、わきあいあいではありません。職場ではお互いにリスペクトし暖かい雰囲気が漂っていますが、相互の職務のプロとしてどのように成長し、顧客へのサービスが向上できるかという、いい意味での競争心があります。

成長する会社は、切磋琢磨の風土があるのです。これに対し、衰退する会社は、職場相互でのお互いへのリスペクト、仕事への規律、すべてが乱れています。それは仕事にでてきます。経営者は、自由と規律を意識しながら、職場風土をつくる必要があるのです。

・環境面の乱れ 5S・整理整頓が行われず、職場が乱れている。

職場の雑然としている、工場がちらかっている、このような現象は衰退する会社の最も顕著な特徴です。ちらかったままでよしとする風土は、気づきのない会社をつくります。誰もが顧客、働く仲間、利益、コストに無関心なまま、ますます職場風土は乱れていきます。

ものの乱れは心の乱れ、乱れた職場では、運気も低下しますし、あらゆるよくないことにつながるのです。

・職場にあいさつがない。笑顔がない。

日本電産の永守社長は、M&Aして買収した企業を立て直すプロです。しかし、そんな彼でも買うのをためらうような会社があります。それは、職場の整理ができていて、社員がきっちりとあいさつができているのに、業績が悪い会社です。

永守さんは職場の風土、挨拶の乱れが業績につながることを厳しく認識しているのです。逆にいうと自社の業績が伸び悩んでいる場合は、職場の環境整備、挨拶の徹底とした職場の規律を取り戻すことが、業績向上のカギとなります。

あいさつがない、お互いが無関心、人間として基本的なことができない職場風土は、衰退する会社を生みます。

・次世代を担う、後継者・経営チームができていない

ドラッカーは言います。「経営は一人ではできない。トップマネジメントチームをつくる必要がある。」と。(現代の経営:ダイヤモンド社)

中小企業の場合、創業者は天才的なマーケターであることがほとんどです。そうでなければ、事業を立ち上げ、継続することはできないからです。しかしそのようなカリスマのもとでは、次世代の経営をつくる経営チーム、マネジメント陣が育ってないことが多いのです。カリスマのある社長のもとでは、社長の言ったことをそのまま実行するイエスマンばかりが育ち、自分で考え、経営、マネジメントする人材になることができないのです。

トップが元気な時期はいいとしても、この状態は事業承継や事業の永続性といった点において大きな弊害をもたらします。創業経営者は、意識的に次世代の経営チーム、管理職を育てなければならないのです。

創業社長のいうことにイエスしかいわない幹部たちに承継された会社は、トップを失ったあと、方向性を見失い、衰退する会社となります。

・OJTの仕組がない。

衰退する会社では、社員を大切にし、その成長を支援する仕組みがありません。そのため、明確な教育マニュアルもOJTの仕組もなく、新人の命運は、その時についた上司の力量にまかされることとなります。

このような会社では、新人は自分のキャリアプランや将来のビジョンを描くこともできず、仕事、組織に対するモチベーションがあがることはありません。

人材と大切にする風土、教育制度の不在は、社員のモチベーションの低下、離職率を高め、結果として組織は衰退し、死にいたります。

・上司が部下の弱みばかり気にしている。

ドラッカーは言います。
「人が成果を上げるのは強みによってのみである。弱みはいくら強化しても、平凡になることさえ疑わしい。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

人に成果を上げてもらうためには、上司は部下の弱みではなく、強みにフォーカスすることがかかせません。弱みからでは、仕事の成果が生まれることはないのです。ドラッカーは続けて言います。「部下の弱みを見るものはリーダー失格である。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

部下の弱みを見るということは、成果がでないばかりか、部下を殺すということです。
人の弱みを見る会社では、結果として人は活かされず、高い成果を生むことはありません。
衰退する会社では、人材が大切にされていません。

その結果従業員は成果をあげず、ますます会社は衰退していくことになります。

・上司の上げる目標設定が低いものばかりになっている。

リーダー以上になる組織が成長することはありません。リーダーの限界が組織の限界です。
そのため、リーダーのあげる目標は高いものである必要があります。

ドラッカーは言います。「高い目標を設定できないものは、リーダーの資格がない。」

組織はリーダーの上げる目標以上に成長することはないのです。リーダーの上げる目標が低いと、組織は成長できず、卑しくなってしまいます。

衰退する会社では、社員さんが挑戦し、成長しようという気風がありません。結果として掲げる目標も、周囲から責められない程度に無難な、達成しやすいものになります。組織を成長させるためには、リーダーは高い目標を設定して、メンバーを鼓舞し、制約を超えさせる必要があるのです。

・社員が自己的に学んでいない 成長欲求がない。

衰退する会社では、社員自身の仕事のモチベーションも、また成長意欲も非常に低いです。成長してどうなりたいか、この仕事を通じて何を成し遂げたいかという個々人のキャリアプラン・将来ビジョンも見えていないためです。衰退する会社の社員はただ単にモチベーション低く日々の仕事をたんたんとこなしています。

しかし、組織は「人」でできています。人の成長こそ組織の成長です。会社が成長するためには、いかに社員の成長欲求に火をつけるか、自己の将来のビジョンを描かせて、動機づけるかが重要になります。

また、ドラッカーは言います。「組織が成長するのは、優秀な人を取るからではない。」
「文化と風土によって自己啓発を動機づけるから、組織は、強くなる。」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

組織を成長させるためには、組織に属している人が自然と学びたくなるように、自己啓発を奨励し、学ぶ組織・教える組織をつくる必要があります。

・マネジメントの仕組をつくるのではなく、一部の社員の有能さに依存している。

一部の社員の有能さのみにマネジメントを頼っているのも、衰退する会社になる危険をはらんでいます。アマゾンのジェフ・ベゾスは言います。「組織が成長するためには、社員の有能さにたよってはならない。仕組をつくらなければならない。」と。個々の社員の有能さに頼ると、ある人に頼むとこの仕事はなされるが、ある人では全くなされないといったことが起きます。

一部の社員の有能さのみに依存している会社は、この社員以上に組織が成長することはありません。誰がやってもある程度以上の成果を生むような仕組みをつくることが、成長する組織をつくる大切な条件なのです。

ドラッカーは言います。「凡人をして、非凡な働きをなさしめることが、強い組織の特長である。」(現代の経営)
組織の多くは平凡な人でできています。その平凡な人でも皆ある一定以上の成果を生む仕組を創ることが、成長する企業の経営者には求められています。

・次世代の経営チームが育っていない。

次世代の経営チームを育成することは、事業の永続性を確保する上でとても大切な問題です。衰退する会社では、創業者のカリスマにマネジメントを多く依存し、次世代を支える経営チームが育っていません。そのため、創業者やカリスマ経営者亡き後にマネジメント上の大きな後退と混乱が起きます。

ドラッカーも言います。
「社長と言う仕事は一人ではできない。社長の経営チームを育成して、チームによってマネジメントがなされるようにしなければならない。」と。(現代の経営:ダイヤモンド社)

衰退する会社になることを防ぐためには、事業がうまくいっている段階で、次世代の経営チームの育成に着手しなければならないのです。

・社長のビジョンが組織に伝わっていない。

社長のビジョンが現場の社員まで明確に伝わっていないということも、衰退する会社でよくみられる現象です。社長の思い描く方向性はありながら、現場のマネジメントまでその想いが伝わっていないため、社長の思うように経営が進むことがありません。

現場の社員からすると社長が何を考えているのかがわからないため、経営の方向性と現場がことなった判断、ミスを頻発することも多くなります。またビジョンによる統一感のない組織は全体としてのモチベーションも低くなり、高い成果を上げることがなく、衰退する会社に陥ってしまうこととなります。

持続的に高い成長を遂げる会社になるためには、社長の明確なビジョンが確立され、それが現場の社員にまで浸透し、全社としての方向性が一丸となっていることがかかせないのです。

・経営理念が絵にかいた餅になっていて、誰も覚えていない。

先ほどの、ビジョン同様、経営理念が浸透していない、実施にうつされていない会社も衰退する会社の顕著な特徴です。ビジョンを会社の将来進べき方向性だとすると、経営理念は会社の「存在意義」・使命といってもいいものです。

経営理念が浸透していない、つまり、自社の存在意義、あり方の共有されていない組織では、経営判断もばらばらになります。そのため、効果のある意思決定ができずぶれたまま経営が進むこととなります。全社的な一体館も損なわれ、高い成果につながることがありません。

また、組織の存在意義である経営理念は、社員さんにとってはたらきがいの源泉の一つです。経営理念が風化し、誰も言えないような組織では、組織にたいするエンゲージメントも下がり、離職率も高くなります。

・経営計画を立案していない。経営計画書にもとづいた経営がなされていない。

そもそも経営はしっかりとした経営計画書によってマネジメントすべきものです。社員の数が3名以上いる場合には、計画書をきっちりとつくりマネジメントしていかなければ、毎月の計画実施の振り返りや改善点も見えてきません。

振り返りし、改善することなしには、組織が成長し、高い目標を達成することは困難です。衰退する組織は社長のなんとなくたてたアイデアや漠然とした思い付きのプランによって運営されています。

メインとなる幹部を含め、経営計画書づくりに参加し、経営計画発表会によって全社員が経営計画を理解し、経営計画書に沿ったマネジメントをするからこそ、進捗確認と持続的な成長がなされるのです。

・管理職のマネジメント力が低く、経営計画が実行にうつされていない

経営計画はあれど、現場で全く実施レベルに落ちていないのも、衰退する会社の特長です。社長が作った経営計画書は作って終わりではありません。マネジメント層が経営計画書を理解して、現場でしっかり実行、改善のサイクルにうつされて、初めて成果を生むものです。

経営計画書をつくることだけで、成果は生まれるものではありません。現場のマネジメント層を育成し、また経営計画を実行させ、しつこくフォローし、達成にむけての流れをつくることが、持続的に成長をする会社をつくる上ではかかせません。

・定期的な若手の採用・人材の補充がなされていない。

定期的な採用がなされず、社員が高齢化の一途をたどっていたり、社員の年齢分布がデコボコになってしまっているのも、衰退する会社の特長です。技術やマネジメントはかならず、社員の年齢、役職とともに承継される必要がありますし、特定の技能のある年配社員がやめていまったら事業部存続の危機なんてこともないとは言えません。

組織の衰退を防ぎ、継続的に成長するためには、各年齢層、階層の人も、余裕をもって計画的に補充していく必要があります。人材の採用計画も将来の計画性をもって進めなければ、持続的成長は望めないのです。

■まとめ

いかがでしたか、今回は衰退する会社の特長について、マーケティング面・イノベーション面・生産性の面・リーダーシップ面・マネジメント面で注意する点を書き出してみました。

組織は永続的に成長し続けるわけではありません。どんな会社にもよい時、悪い時があります。

衰退する会社の持つ特徴を把握し、その兆候を見逃さず、改善・改革し、組織の成長につとめていきませんか?

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ブログ執筆者 ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

2002年、大学卒業後、株式会社KUBOTAの人事教育部で全社の人材育成を担当。2011年、経営と起業家精神をより深く学ぶために日本経営道協会(コンサルタント)に転職。

2013年、小宮一慶氏の経営する株式会社小宮コンサルタンツに経営コンサルタントとして転籍。本格的な経営コンサルティングを開始。マネジメントを学ぶ中で、【ドラッカーの人を活かす経営】との運命的な出会いを果たす。

人が活かされ、高い成果を上げる幸せな企業をつくることこそ自分の天命だと悟り、2017年独立。「高い理想と自己犠牲の精神で、人の魂の成長に貢献する」「リーダーの人格の向上に奉仕する」をコンセプトに、使命感を持って日々の業務にあたっている。

講師としても依頼が絶えず、全国の商工会議所、経営者団体など各種経済団体でのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」「ドラッカーが降りてきた」「マネジメントの真髄を見た」と熱狂的に支持する経営者が後を絶たない。

著書:『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則(産業能率大学出版部・Amazon【企業経営部門】第2位)』