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CSとES、どちらが大切なのか?
ドラッカーに学ぶ、強い組織の考え方
経営者の方から、よくこんな質問をいただきます。
「CS(顧客満足)とES(従業員満足)、どちらを大切にすればいいのでしょうか?」
「人材育成や組織づくりでは、どちらをより強調すべきなのでしょうか?」
とても真っ当な問いだと思います。
そして実は、多くの組織がこの問いの“考え方”を少し誤ったことで、少しずつ元気を失っていきます。
今日はこのテーマを、ドラッカーの視点も交えながら、できるだけ分かりやすく整理してみたいと思います。
まず結論から
CSもESも、どちらも大切。でも「順番」がある
最初に結論をお伝えします。
CS(顧客満足)もES(従業員満足)も、どちらも欠かせません。
ただし、経営者として最初に打ち出すべきなのはCSです。
これは、「顧客のほうが偉い」という話ではありません。
組織というものの性質を考えると、自然に導かれる結論なのです。
組織は、放っておくと内側を向いてしまう
ドラッカーは、組織についてこんなことを言っています。
組織は家族的な性質を持つ。
そして放っておくと、内部思考になる。
組織は人の集まりです。
人が集まれば、どうしても「内側の論理」が強くなります。
- このルールだから
- この書式じゃないと
- 前からこうしているから
気づかないうちに、「お客様から見てどうか」よりも
「自分たちがやりやすいか」が判断基準になっていく。
これは悪意ではありません。
むしろ、とても自然な現象です。
だからこそ、経営者が意識して軸を外に向け続ける必要があります。
内部思考は、顧客体験にそのまま表れる
内部思考は、理念やスローガンでは分かりません。
必ず、現場のちょっとした振る舞いに現れます。
例えば、あるコンビニで見かけた張り紙です。
当店のトイレは公衆トイレではありません。
最低限の買い物をしてからご利用ください
この一文を見たとき、どう感じるでしょうか。
私は正直、「もう来ないかな」と思いました。
お店側の事情は分かります。
でも、お客様は「歓迎されていない」と感じてしまう。
これが内部思考の怖さです。
ホテルで見かける、こんな張り紙も似た話です。
当ホテルは環境エコ推進のため、歯ブラシは用意していません
エコ自体は大切な取り組みです。
ただ、宿泊客はエコ活動のために泊まっているわけではありません。
顧客の目的を見失った「正しさ」は、
結果として顧客満足を下げてしまうことがあります。
ドラッカーの言葉が、ここで効いてくる
組織の内部にあるのはコストだけである。
利益は外部にしか存在しない。
組織の中で完結するものは、基本的にコストです。
価値や成果は、必ずお客様のところで生まれます。
だからこそ、経営者は
「顧客満足を軸に考える会社である」
という姿勢を、まず明確に示す必要があります。
ES(従業員満足)だけでは、なぜ足りないのか
ここで誤解してほしくないのですが、
私はESを軽視しているわけではありません。
従業員満足は、とても大切です。
不満だらけの職場で、良いサービスが生まれないのは当然です。
ただし、ESの多くは「衛生要因」と呼ばれるものです。
- 給与
- 待遇
- 働きやすさ
- 人間関係
これらが整っていなければ、仕事の質は下がります。
しかし、整ったからといって「やりがい」や「誇り」が自動的に生まれるわけではありません。
人は、誰かの役に立てたときに一番うれしい
では、モチベーションはどこから生まれるのでしょうか。
上司に褒められたとき。
社長に評価されたとき。
それも、もちろん嬉しい。
でも、多くの人が本当に心を動かされるのは、こんな瞬間ではないでしょうか。
あなたの会社に頼んでよかった
本当に助かりました
顧客からのこの一言が、人の心に火を灯します。
人は「誰かの役に立てた」と実感したとき、
仕事に誇りを感じる生き物だからです。
だから、モチベーションの源は顧客にあります。
顧客に集中し、良い仕事をする組織は、自然と強くなります。
ただし、今はCSだけでは足りない時代でもある
一方で、時代は大きく変わりました。
人口は減り、
人材は流動化し、
少し合わなければ転職するのが当たり前になっています。
だからこそ、ESの重要性も、以前よりずっと高まっています。
「ここで働き続けたい」
そう思ってもらえる環境を整えなければ、
顧客に価値を出し続けることはできません。
まとめ
CSとESは、自転車の両輪
顧客満足がなければ、企業は続きません。
従業員満足がなければ、人は続きません。
だから、CSもESも必要です。
これは自転車の両輪です。
ただし、組織は放っておくと内側を向きます。
だから経営者は、まず顧客満足を軸に据える。
そのうえで、従業員満足をしっかり整えていく。
この順番が、結果として「強い組織」をつくります。










