経営理念を高速で浸透させる方法

経営理念や行動指針を定めている企業は多いものの、
「掲げてはいるが、実際の行動には結びついていない」
そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。

理念を掲げることと、
理念が社員の行動を動かしている状態との間には、
大きな隔たりがあります。

では、どうすれば経営理念は“使えるもの”になるのか。
その鍵は、理念を高速で回し続ける仕組みにあります。

理念浸透の鍵は「1週間で回す」こと

理念浸透のために非常に効果的なのが、
経営理念を1週間単位で回し続ける仕組みです。

あるベンチャー企業では、10個の行動指針を設定し、
それを冊子にまとめ、まず社長自らが丁寧に説明しました。

理念を「決める」ことはゴールではありません。
そこがスタート地点です。

週3回・15分の理念浸透ミーティング

この企業では、理念を浸透させるために
次のようなシンプルな仕組みを導入しました。

  • 月曜日:今週実践する行動を決める
  • 水曜日:進捗を振り返る
  • 金曜日:1週間の実践を総括する

いずれも15分程度
3〜4人の小さなチームに分かれて行います。

月曜日には、10個の行動指針の中から
「今週、自分たちは何を実践するのか」を話し合い、宣言します。

水曜日には途中経過を確認し、
金曜日には「何ができたのか」「どこが難しかったのか」を振り返る。

このサイクルを、毎週、ぐるぐると回し続けるのです。

小さなPDCAを高速で回す

この取り組みの本質は、
理念に基づく行動のPDCAを高速で回すことにあります。

経営が強い会社ほど、意思決定と改善のスピードが速い。
特にベンチャー企業は、このPDCAの回転が非常に早いのです。

理念も同じです。
抽象的な言葉のままでは、行動は変わりません。

理念は「翻訳」して初めて腹落ちする

たとえば「顧客思考で行動する」という言葉ひとつ取っても、
総務、営業、現場担当では意味合いがまったく異なります。

一人ひとりの仕事に即して翻訳されなければ、理念は機能しないのです。

ドラッカーは「仕事に具体化せよ」と語っています。
理念を、自分の仕事の中でどう実行するのか。
そこまで落とし込んで、初めて行動に変わります。

この翻訳作業をチームで行う場こそが、
理念浸透ミーティングの本質です。

しつこさこそが理念を文化に変える

理念浸透において、もう一つ欠かせないのが
社長が語り続けることです。

松下幸之助氏は、経営理念を定めた後、
2年間にわたり、ほぼ毎日朝礼で理念を語り続けたと言われています。

また、松下電器の役員であった高橋新太郎氏は、
同じ話を何度も繰り返すことから
「テープレコーダー」と呼ばれていました。

しかし、それこそが重要だったのです。

社長があれほど繰り返し語るということは、
それほど大事なことなのだ
と、社員は徐々に腹落ちしていきます。

理念が「ある会社」と「使える会社」は違う

理念を掲げているだけの会社と、
理念を使って仕事をしている会社は、まったく別物です。

理念や行動指針は、
壁に貼って眺めるためのものではありません。

日々の仕事の判断基準として使われてこそ、意味を持ちます

そのためには、
小さな単位で、しつこく、高速でPDCAを回し続けること。

そして、社長自身が語り続けること。

この二つが揃ったとき、
経営理念は組織の中で“生きた力”として機能し始めます。

理念を「掲げるもの」から、
成果を生み出す道具へ。

そこに、組織が一段階進化するヒントがあります。