「働きやすいのに辞める」若者たち──パープル企業が中小企業に突きつける静かな危機

時事テーマから読み解くドラッカーの問い

今日は、【エキスパートトピ/2025年1月15日】に掲載された
「パープル企業から若者が去る理由」を題材に、
組織づくりのヒントをドラッカーの視点から解説していきます。

『エキスパートトピ/2025年1月15日』の記事から:記事の要約

残業もなく人間関係も良好。一見「理想的」な職場でありながら、若者が離職していく企業が増えている。
こうした企業は「ゆるブラック」「パープル企業」と呼ばれ、20代の約7割が自社をそう感じているという。
背景には、終身雇用崩壊を前提に「キャリア安全性=市場価値」を重視する若者の価値観がある。
働きやすさだけでは不十分で、「成長の実感」「スキル獲得」が得られない職場は敬遠される。
企業側はパワハラ回避のあまり指導を避け、無菌室のような職場を生み出している。
解決策として、管理職教育、ストレッチ目標、1on1の重要性が指摘されている。

この記事が経営者に突きつけている問題

「働きやすいのに、人が辞める」。
これは、多くの中小企業経営者が直面している静かな危機です。

福利厚生も整え、残業も減らし、ハラスメントにも細心の注意を払っている。
それでも若手が定着しない。
経営者は「これ以上、何をすればいいのか分からない」と感じているかもしれません。

しかし、この記事が突きつけているメッセージは明確です。
人は守られるだけでは、成長できない。

ドラッカーはこう述べています。

「人は、貢献によって成長する」

働く人が「誰に、何を通じて、どんな価値を生んでいるのか」を実感できない組織では、
自分の成長を感じることができません。
パープル企業とは、言い換えれば成果と成長が見えない組織なのです。

ドラッカーの視点で再構成する本質的な課題

私の著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』では、繰り返し次のことをお伝えしています。

人を大切にするとは、甘やかすことではない。
人の可能性に責任を持つことである。

パープル企業に欠けているのは、この責任ある関わりです。

特に欠落しているのは、次の三つです。

  • 【ドラッカーの原則④】学習・成長する会社
  • 【ドラッカーの原則⑤】リーダーシップを確立する
  • 【ドラッカーの原則⑦】働く人を活かす会社

仕事がルーティン化し、挑戦がなく、失敗も許されない。
一見優しい環境は、ドラッカー的に言えば人の尊厳を奪っています。

なぜならドラッカーは、人間を成長する存在として捉えているからです。
成長の機会を奪うことは、人間の本質を否定することにほかなりません。

経営者への問いと、いま取るべき実践行動

ここで、経営者であるあなたに問いかけたい。

若手社員に、少し背伸びをする仕事を任せていますか。

上司は、部下の可能性に本気で期待しているでしょうか。

ドラッカーは言います。

成果を上げるために必要なのは、能力ではない。
責任を引き受ける覚悟である。

では、何から始めればよいのか。
私が勧める実践は、次の三つです。

一つ目。
目標を安全圏に置かないこと。
少し怖く、少し難しい、しかし意味のある目標を設定する。

二つ目。
1on1を管理ではなく、成長の場にすること。
進捗確認ではなく、何を学び、何に挑戦しているかを問う。

三つ目。
管理職に人を育てる責任を明確に持たせること。
嫌われない上司ではなく、人を伸ばす上司を評価する。

人を活かす経営が、成果と幸せを両立させる

パープル企業の問題は、働きやすさか働きがいか、という二択ではありません。
ドラッカーは、両立できると断言しています。

成果と人間性は、対立しない。

人を活かす経営とは、
挑戦を与え、成長を支援し、
その結果として高い成果を生み出す経営です。

あなたの会社は、人の可能性に本気で向き合っているでしょうか。

働く人が幸せで、同時に誇りを持って成果を語れる組織へ。
今こそ、ドラッカーの問いを、自社の経営に投げかけてみてください。

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