事業の伸び悩みを脱するドラッカーのイノベーション

【先日のメルマガから、事業停滞を抜け出すドラッカーのヒントについてご紹介させて頂きます。】

こんにちは、村瀬弘介です。

今回は、環境変化の中で事業が停滞してしまったとき、それをどう打破するのか。そのためのドラッカーの効果的なアプローチをご紹介します。

「以前は順調だったのに、ここ数年、どうにも売上が伸びない」。中小企業の経営者の方から、そんなご相談をよく頂きます。設備を新しくしても、値下げをしても、営業を増やしても、なぜか結果が変わらない。頑張っているのに手応えがない。もし今あなたがそういう状態にあるなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。

この記事でまとめたこと

事業の伸び悩みは「努力不足」ではない

まず、最初にお伝えしたいことがあります。

事業が伸び悩んでいるとき、多くの経営者は「自分の経営努力が足りないからだ」と自分を責めてしまいます。もっと働かなければ、もっと頑張らなければ、と。しかし、原因はそこではないことがほとんどです。

あなたは、次のようなことにお悩みではないですか。

●競合に埋もれる中で、売り上げが伸び悩んでいる。

●これまでの戦略では新しい結果を生み出せず、成長のための新たな打ち手が見つからない。

●社員も頑張ってくれているのに、なぜか数字だけがついてこない。

もしそうなら、まずは一度立ち止まって、ドラッカーの視点で「事業の本当の価値」を見直すことが効果的です。

なぜなら、競合ひしめく、変化の激しい現代において、売上低迷の一番の原因は、多くの場合、次の一点にあるからです。

【自社の商品の、本当に差別化された価値を、市場・顧客に明確に伝えきれていないこと】

商品そのものが劣っているのではありません。伝わっていないのです。あるいは、かつては伝わっていた価値が、環境の変化によって、いつのまにか顧客に響かなくなってしまっているのです。

実際、伸び悩みに陥っている会社の多くは、次のような状態にあります。品質には自信がある。長年の取引先もいる。社員も真面目に働いている。それなのに、新規のお客様が増えない。既存客の単価も上がらない。値下げでしのごうとすると利益が削られ、体力だけが奪われていく。この悪循環に入ると、経営者はますます「もっと売らなければ」と目の前の数字を追いかけ、事業を根本から見つめ直す時間が取れなくなります。しかし、伸び悩みから抜け出す入口は、実はその「立ち止まって見つめ直す」ことの中にあります。

ドラッカーが指摘した「停滞の本当の理由」

商品の本当の価値、事業のコンセプトを、環境変化に合わせてきっちりと見直すこと。その重要性について、ドラッカーはこう言っています。

「事業がうまくいかないのは、経営が下手だからではない。事業の前提となる環境が、これまでと変わってしまったからなのだ。」

この言葉は、伸び悩んでいる経営者にとって、とても救いになると同時に、鋭い指摘でもあります。

つまり、こういうことです。あなたが事業を始めたとき、あるいは事業が最も好調だったとき、その裏には必ず「前提」がありました。こういうお客様がいて、こういうニーズがあって、こういう競合状況で、こういう時代背景がある。その前提に合わせて、商品も、価格も、売り方も設計されていた。

ところが、時が経ち、その前提のほうが変わってしまう。顧客の年齢層が変わる。ライフスタイルが変わる。新しい競合が現れる。技術が変わる。それなのに、事業のほうは昔のままの前提で動き続けている。ここに、停滞のほとんどの原因があります。

事業の前提としていた環境が変わってしまったのに、その変化を捉えて【顧客にささる事業・商品・サービスの本質的な価値】を見いだせていない。これが、停滞の一番の問題なのです。

あなたの事業の「前提」は、まだ通用していますか

抽象的な話に聞こえるかもしれませんので、少し具体的にしましょう。自社の「前提」が今も通用しているかどうかは、次の問いで確かめられます。

・主要なお客様の年齢層や立場は、事業を始めた頃と同じですか。
・お客様が自社の商品を「どんな場面で」使っているか、正確に把握できていますか。
・数年前にはいなかった新しい競合や代替手段が、市場に現れていませんか。
・お客様が商品を選ぶときに重視する点は、以前と変わっていませんか。

これらのうち一つでも「以前とは変わった」と感じるものがあれば、事業の前提はすでにズレ始めています。売上が伸び悩んでいるのは、そのズレを放置したまま、昔のやり方を丁寧に続けているからにほかなりません。真面目な会社ほど、良かった頃のやり方を忠実に守ろうとするため、かえってズレに気づきにくいという面もあります。

では、何をすればいいのか

答えはシンプルです。

環境の変化に合わせて【事業コンセプトを再定義すること】。これに尽きます。

ここで大切なのは、「新しい商品を一から開発しなければならない」と思い込まないことです。多くの場合、あなたの会社が今持っている商品や技術、強みはそのままで、その意味づけと届け方を変えるだけで、事業は再び動き出します。ドラッカーが言うイノベーションとは、必ずしも発明のことではありません。すでに持っているものに、新しい価値を与えることも、立派なイノベーションなのです。

実際に、環境変化で窮地に立った事業が、事業・商品の再定義によってV字回復した事例を挙げてみましょう。

成功事例:事業コンセプトの再定義で、停滞を打破した企業たち

【1】シーブリーズ ── 海から、部活後の教室へ

かつて海での使用を主軸にしていたシーブリーズは、若者の海離れにより売上が低迷しました。

商品そのものは変わっていません。変わったのは「誰に、どんな場面で使ってもらうか」という定義です。ターゲットを女子高生に変更し、コンセプトを「部活後の汗ケア」に転換したのです。

その結果、顧客の圧倒的な支持を得て、見事、夏の定番デオドラントとしての地位を確立しました。海という前提が崩れたとき、商品を捨てるのではなく、使われる場面を再定義した。ここに学ぶべき点があります。

【2】ハイチオールC ── 二日酔いから、美白へ

二日酔い対策薬として、主に中高年男性向けに販売されていたハイチオールCは、競争激化により売上が停滞していました。

そこで、美白効果を前面に押し出し、ターゲットを女性に変更します。パッケージデザインもCMも刷新しました。成分そのものは大きく変えていません。「この商品が持っている価値のうち、今の市場に最も響くのはどれか」を捉え直したのです。

結果、売上は大幅に回復し、現在も成長商品として収益を生み続けています。

中小企業にこそ、この考え方が効く

「大企業の話でしょう」と思われたかもしれません。しかし、むしろ逆です。

大企業のように潤沢な開発予算や広告費を持たない中小企業だからこそ、「今あるものの価値を定義し直す」というやり方が、最も現実的で、最も効果が大きいのです。新しい設備投資も、大規模な採用も要りません。必要なのは、視点の転換です。

たとえば、下請け加工を続けてきた町工場が、その精密加工の技術を「試作専門」と定義し直して直接取引を増やした例。地元向けの菓子店が、素材と製法をそのままに「贈答・手土産」という文脈で売り出し客単価を上げた例。いずれも、新しいものを作ったのではなく、すでにある強みの意味を、今の市場に合わせて語り直しただけです。

事業の再定義に必要な「2つのステップ」

では、具体的にどう進めればいいのか。次の二つのステップで取り組んでみてください。

ステップ1:顧客視点で自社の価値を再発見する

自社の強みを、作り手の都合ではなく、改めて顧客の視点から考え直します。「自分たちが何を作っているか」ではなく、「顧客が本当は何を求めて自社を選んでいるのか」を掘り下げるのです。

実務としては、次のような問いを立ててみてください。

・今の主要なお客様は、なぜ他社ではなく自社を選んでいるのか。
・お客様が本当に解決したい悩みは何か。商品はそのどこに効いているのか。
・自社が「当たり前」だと思っている点で、実は顧客が高く評価していることは何か。

可能であれば、既存のお客様に直接聞いてみることをお勧めします。社内で議論して出てくる答えと、お客様が口にする答えは、驚くほど違うことがあります。その「ズレ」の中に、再定義のヒントが隠れています。

ステップ2:顧客にささる差別化されたコンセプトを再構築する

ステップ1で見つけた価値をもとに、他社にはない独自の強みを洗い出し、再定義します。そして、それを明確なメッセージにして市場に伝えます。

ここで大切なのは、「誰に」「どんな場面で」「どんな価値を」の三つをセットで言い切ることです。シーブリーズが「女子高生の、部活後の、汗ケア」と言い切ったように、対象と場面を絞り込むほど、メッセージは鋭くなり、顧客に深く刺さります。八方美人な訴求は、結局は誰にも届きません。

コンセプトが定まったら、商品説明、ホームページ、営業トーク、パッケージまで、すべての表現をその一つのコンセプトに揃えていきます。

二つのステップを、実際に回してみると

たとえば、業務用の清掃道具を長年つくってきた小さなメーカーがあったとします。価格競争に巻き込まれ、売上が頭打ちになっていました。

ステップ1で既存の取引先に「なぜ他社ではなくうちを使い続けているのか」を尋ねたところ、返ってきたのは「安いから」ではありませんでした。「現場の人が腰を痛めにくい」「短時間で終わる」という声だったのです。作り手は価格で選ばれていると思い込んでいましたが、顧客が本当に評価していたのは、作業者の負担を減らす設計でした。

そこでステップ2として、コンセプトを「安い清掃道具」から「現場の身体的負担を減らす清掃道具」へと再定義します。訴求先も、購買担当者から、労働環境の改善を課題に抱える現場責任者へと変えていく。このように、商品は一切変えなくても、価値の語り方と届け先を変えるだけで、価格競争から抜け出す道が見えてきます。

大切なのは、機能を足すことではなく、すでにある価値のうち「今の顧客に最も響くもの」を見つけて、そこに一点集中することです。

市場は変わる。だから、事業も語り直す

事業の低迷の最大の原因は、前提としていた経営環境に、自社が合わせられていないことにあります。

市場は変化したのに、自社は10年前のままでいる。それでは取り残されて当然です。これは、能力の問題でも、努力の問題でもありません。ただ、前提が変わったことに気づき、事業を語り直すという作業を、まだしていないだけなのです。

今、あなたが停滞に悩んでいたとしたら、必要なことは【事業を再定義し、現在の市場に刺さるものにすること】です。

そこで、

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詳しくは以下をご覧になってみて下さい。

ページの中で動画でも詳しく解説しています。

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ドラッカーの視点を使うことで、事業の停滞を打破し、再度、成長路線にシフトすることが可能になります。

実際に村瀬のセミナーを受けられたお客様の声はこちらです。

「近年、会社が同じステージに留まり、ステージアップが出来ずに試行錯誤していました。この状況を打破する為に、社長自身の成長が必要だと思い、ドラッカーコンサルティングを受講しました。

他社のドラッカーのコンサルティングは過去に何度も受講したことがあるのですが、どれも表面的な言葉を伝えるモノばかりでした。しかし、村瀬さんのセッションでは、今までのコンサルティングはなんだったんだろうか、と思う程、自分の中に落ちてくるモノが違いました。

村瀬さんの講義は、『ドラッカーの魂・真意』が社長としての魂に、ダイレクトに伝わって、事業アイデアが溢れてきます。セッションの後には、今後やりたい事・やるべき事が満載で、こうやって文章を書いている今もワクワクしています。

村瀬さんは『ドラッカーの申し子』みたいな人で、問題・課題に対して答えを出すのではなく、ドラッカーの視点からヒントを出してくれます。そのヒントに、社長が全力で考え、わが社の進むべき答えを導いていく形の講義です。本当に『魂』が伝わる講義です。毎回、真剣に聞く事ができました。

セッション後には、まず、社長としての私自身に、エンジンが掛かりました。会社にも展開し、今までとは違って、『社長の本気度』が社員に伝わっていると感じています。わが社にも『やっと変われる!』と兆しが見えてきました。また、わが社には、まだまだやれる事があると気が付けたのも、大きな収穫です。」

【株式会社横引シャッター  代表取締役 市川慎次郎 様】

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まとめ

事業の伸び悩みは、経営者の努力不足が原因ではありません。事業が立っていた「前提」、つまり顧客・市場・競合・時代背景が変わってしまったのに、事業のほうが昔のままでいることが、停滞の本当の理由です。

打開策は、環境の変化に合わせて事業コンセプトを再定義することです。新しい商品を一から作る必要はありません。シーブリーズやハイチオールCのように、今ある商品や強みの意味を、今の市場に合わせて語り直すこと。これがドラッカーの言うイノベーションであり、資源の限られた中小企業にこそ最も効く方法です。

進め方は二つ。第一に、顧客の視点で自社の本当の価値を再発見すること。第二に、その価値を「誰に・どんな場面で・どんな価値を」と言い切れる差別化されたコンセプトに再構築し、すべての表現をそこに揃えることです。

市場は変わり続けます。だからこそ、自社の価値も定期的に語り直す。その一歩が、伸び悩みを抜け出し、再び成長へ向かう転換点になります。

事業の伸び悩み・イノベーションで成長に関するよくある質問

事業が伸び悩む一番の原因は何ですか

多くの場合、商品や努力の問題ではなく、事業が前提としていた環境(顧客・市場・競合・時代背景)が変わってしまったことです。ドラッカーも「事業がうまくいかないのは経営が下手だからではなく、前提となる環境が変わってしまったからだ」と指摘しています。まずは前提のズレを疑うことが出発点になります。

ドラッカーの言うイノベーションとは、新商品を開発することですか

必ずしもそうではありません。イノベーションとは、すでに持っている商品・技術・強みに、新しい価値や意味を与えることも含みます。シーブリーズが商品を変えずに使う場面を「部活後の汗ケア」と再定義したのは、まさにこの意味でのイノベーションです。ゼロから発明する必要はありません。

中小企業でも事業の再定義はできますか

できます。むしろ中小企業にこそ向いた方法です。大規模な設備投資や広告費を必要とせず、今ある強みの意味を今の市場に合わせて語り直すだけで取り組めるからです。下請け加工の技術を「試作専門」と定義し直す、地元菓子を「贈答・手土産」の文脈で売り出すなど、視点の転換だけで成果につながった例は数多くあります。

事業を再定義するには、まず何から始めればいいですか

顧客視点で自社の価値を見つめ直すことから始めてください。「今のお客様はなぜ他社ではなく自社を選んでいるのか」「本当に解決したい悩みは何か」を掘り下げます。可能なら既存のお客様に直接聞くのがおすすめです。社内の想定と顧客の本音のズレの中に、再定義のヒントが隠れています。

再定義したコンセプトは、どう伝えれば顧客に刺さりますか

「誰に」「どんな場面で」「どんな価値を」の三つをセットで言い切ることです。対象と場面を絞り込むほどメッセージは鋭くなり、深く刺さります。コンセプトが定まったら、商品説明・ホームページ・営業トーク・パッケージまで、すべての表現を一つのコンセプトに揃えることが大切です。

お読み頂き、ありがとうございました。

村瀬弘介拝


■ブログ執筆者 日本一分かりやすく!情熱的にドラッカー経営の本質を伝える・ドラッカー専門の経営コンサルタント

日本リーダーシップ・オブ・マネジメント株式会社 代表取締役 村瀬 弘介
「ドラッカー教えてくれる 人を活かす 経営7つの原則」著者

大学卒業後、株式会社KUBOTAの人事教育部で全社の人材育成を担当。経営と起業家精神をより深く学ぶために日本経営道協会(コンサルタント)に転職。

小宮一慶氏の経営する株式会社小宮コンサルタンツに経営コンサルタントとして転籍し、本格的な経営コンサルティングを開始。マネジメントを学ぶ中で、【ドラッカーの人を活かす経営】との運命的な出会いを果たす。

人が活かされ、高い成果を上げる幸せな企業をつくることこそ自分の天命だと悟り、2017年独立。「高い理想と自己犠牲の精神で、人の魂の成長に貢献する」「リーダーの人格の向上に奉仕する」をコンセプトに、使命感を持って日々の業務にあたっている。

講師としても依頼が絶えず、全国の商工会議所、経営者団体など各種経済団体でのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」「ドラッカーが降りてきた」「マネジメントの真髄を見た」と熱狂的に支持する経営者が後を絶たない。

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