管理職・幹部が育たない悩みを解決するドラッカー式リーダー育成

この記事でまとめたこと

管理職・幹部が育たない――中小企業の「次世代リーダーの育て方」を、ドラッカーで解く

管理職が育たない、幹部が育たない、右腕がいつまでも育たない。その最大の原因は、社員の能力不足ではありません。会社の側が「役割」と「成長の機会」を渡していないこと、これが急所です。今いる社員のなかから変革を担うリーダーを育てるには、才能を探すのではなく、育つ条件を整えること。本稿では、ドラッカーが示した育成の原理と、257社の現場で実際に成果が出た村瀬式の進め方を、経営者の視点でお伝えします。

「うちには人材がいない」――その嘆きは、たいてい間違っている

「変化に強い組織をつくりたい」「次世代リーダーに、変革を担わせたい」。
多くの経営者が、そう願っています。
しかし同時に、こうも嘆くのです。

「うちには、変革を起こせる人材がいない」

私は数多くの中小企業を見てきましたが、この見方はほとんどの場合、間違っています。人材がいないのではありません。育つ場を、経営者が用意できていないだけなのです。

ドラッカーは、変革を担う人材を「天才」や「特別な人格」とは定義しませんでした。
彼はそれをチェンジリーダーと呼び、
その条件と育成の原理を、極めて現実的に示しています。誰にでも、育つ道がある。まずはそこから始めましょう。

通説――「幹部が育たないのは、器がないから」は本当か

管理職や幹部が育たないと相談を受けたとき、世間ではこう説明されます。いわく、優秀な人材が採れていない。いわく、本人にリーダーの器がない。いわく、権限委譲を進めて失敗させながら育てればいい。

どれも一理あります。しかし、これを鵜呑みにして「では優秀な人を採ろう」「もっと任せよう」と動いた中小企業の多くが、かえってつまずきます。なぜか。

なぜ中小企業では、通説どおりにやるとつまずくのか

理由は、はっきりしています。大企業の育成論を、そのまま中小企業に持ち込んでしまうからです。中小企業には、体系だった研修制度も、たっぷりの育成予算も、失敗を吸収する組織の厚みもありません。ここに、落とし穴が三つあります。

一つ目。「優秀な人を採れば解決する」という発想。中途で優秀な人を採ってきても、今いる社員との関係が壊れ、かえって組織がぎくしゃくすることは珍しくありません。中小企業の本当の力は、今この瞬間、目の前にいる社員と幹部のなかにあります。

二つ目。「任せて失敗させれば育つ」という乱暴さ。役割も判断基準も渡さないまま「あとは任せた」と丸投げすれば、幹部は何が正解かを推測しながら動くしかありません。中小企業では、一度の大きな失敗が会社の屋台骨を揺らします。任せることと、放り出すことは違うのです。

三つ目。そして最も根深いのが、社長自身が手放せていない、という問題です。責任者を置いても権限が渡らず、結局すべてが社長の判断待ちで止まる。「右腕がいない」という実感の正体は、たいていここにあります。人に任せる自信がない。人を信じる自信がない。そう言い換えることもできます。

管理職が育たない、幹部が育たない。その根っこは、本人の資質ではなく、会社の側にある「役割の不在」「基準の不在」「機会の不在」なのです。

本当のツボは、才能ではなく「条件」を整えること

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい急所です。ドラッカーは『明日を支配するもの』の中で、次のように述べています。

「変化を脅威ではなく、機会として体系的に利用できる者が、チェンジリーダーである」

注目してほしいのは、チェンジリーダーとは
「変化を起こす特別な人」ではない、という点です。変化を偶然に任せず、意味づけし、活用できる存在。ドラッカーはそれを、人格や性格ではなく、条件(conditions)で語りました。条件であるということは、整えれば誰でも近づける、ということです。

その条件は、大きく三つに集約できます。

条件① 変化を「外部環境」から見る視座があるか

ドラッカーは一貫して、こう語ります。

「変化は、常に組織の外で起こる」

顧客、技術、価値観、人口構造。変化を察知できる人材は、組織の内側ではなく、外側を見ています。社内調整がうまい人、資料づくりが速い人を「幹部向き」と誤解してはいけません。内向きの優秀さと、外向きの洞察は、まったくの別物です。

条件② 変化を「使命」と結びつけて語れるか

変化は、必ず不安を生みます。だからこそリーダーには、「我々は誰のために存在しているのか」「この変化は顧客にどんな価値をもたらすのか」という問いを提示する役割があります。意味づけのない変革は、必ず現場の抵抗を生みます。使命と結びついた変化だけが、人を動かすのです。

条件③ 変化を「小さな実験」として進められるか

ドラッカーは、変革を革命とは呼びません。小さく試し、学び、修正し、成功を拡張する。チェンジリーダーとは、失敗を避ける人ではなく、失敗を管理できる人です。中小企業だからこそ、この「小さく試す」やり方が、身の丈に合っています。

では、この三つの条件を、今いる社員のなかにどう芽吹かせるのか。ここから先が、机上の理論と現場の実践が分かれるところです。もし「自社の場合はどこから手をつけるべきか」を具体的に相談したい方は、費用のかからない無料セミナー・入門講座のご案内はこちらから、まず気軽に触れてみてください。

急所を解くのが、村瀬式「ドラッカーの7つの原則」

ここからは、私自身が257社、延べ1,520名の管理職・幹部と向き合ってきた現場からの話です。ドラッカーの条件論は正しい。しかし、それを中小企業の日常に落とし込むには、もう一段の工夫がいります。私はそれを、ドラッカーの経営理論に、陽明学・論語・禅の人間学と、ジャズのような即興の感性を掛け合わせた「炎のドラッカー」の視点、そして村瀬式「7つの原則」としてまとめてきました。理屈だけでは人は動かない。人の尊厳と情熱に火をつけて、はじめて幹部は育ち始めます。

現場で効いてきた育成の勘どころを、三つに絞ってお伝えします。

勘どころ①「答え」ではなく「問い」を与える

優秀な人ほど、正解を求めます。しかし、変革に正解はありません。

  • この事業は、誰のどんな痛みを救っているのか
  • 10年後、この仕事は残っていると思うか

問いに耐える経験が、幹部の視座を引き上げていきます。実際、ある製造業では、朝礼で社長がこの二つの問いを投げ続けただけで、半年後には課長が自分の言葉で事業を語り始めました。教えるのをやめて、問うことから始めたのです。

勘どころ②「成果の定義」を変えさせる

数字だけを追わせている限り、人は守りに入ります。

「成果とは、組織の外にある」

顧客の変化、社会への貢献。成果の定義が変わった瞬間、人は変革者へと近づいていきます。売上目標の手前に「どの顧客の何を変えるか」を置く。ただそれだけで、管理職の目線が上がります。

勘どころ③「小さな変化」を任せ、責任を持たせる

いきなり全社変革を任せる必要はありません。

  • 新しい顧客への挑戦
  • 小規模な業務改革
  • 社内プロジェクトの責任者

変化を任され、結果を引き受ける経験が、人を育てていきます。ここで大事なのは、任せる範囲と判断基準を、経営者がはっきり言葉にしてから渡すこと。基準のある委譲は人を育て、基準のない丸投げは人を潰します。この差が、右腕が育つ会社と育たない会社を分けています。

この三つを、自社の実情に合わせて設計し、幹部一人ひとりの持ち味に火をつけていくのが、村瀬式のドラッカー研修です。中小企業に特化し、今いる社員・幹部で成果を出すことに絞っている点が、大企業向けの一般的な研修との決定的な違いです。育成の全体像は、ドラッカー研修のご案内ページと、ドラッカー理論による人材育成のページで詳しくご覧いただけます。

最後に――変革とは、人間の成長である

ドラッカーを学び続けて、私は確信しています。変革の正体は、人格の成長です。

だからこそ、チェンジリーダー育成とは、人を使う技術ではなく、人の尊厳を信じ、成長の機会を与える行為なのだと思います。

もしあなたが、次世代リーダーを育てたい、組織を変化に強くしたいと願うなら、まず、こんな問いを自分に投げかけてみてください。

「私は、変化を通じて人を育てているだろうか?」

それこそが、ドラッカーが経営者に突きつけた、最も本質的な問いなのです。まずは費用のかからない無料セミナーで、あるいは炎のドラッカーのセミナーで、この問いの続きを一緒に考えていきましょう。

まとめ

  • 管理職・幹部・右腕が育たない原因は、本人の器ではなく、会社側の「役割・基準・機会の不在」にある。
  • 大企業の育成論をそのまま中小企業に持ち込むとつまずく。優秀な人の採用・丸投げの委譲・社長が手放せないこと、この三つが落とし穴。
  • ドラッカーは、リーダーを才能ではなく「条件」で語った。外を見る視座・使命と結ぶ言葉・小さく試す姿勢を整えれば、今いる社員から育つ。
  • 問いを与える、成果の定義を変える、基準つきで小さく任せる。この三つが現場で効く。村瀬式「7つの原則」は、それを中小企業の日常に落とし込む方法である。

よくあるご質問

Q. うちの会社には優秀な人材がいません。それでも管理職や幹部は育ちますか。

はい。育ちます。私が257社で見てきた限り、「人材がいない」のではなく「育つ役割と機会が渡されていない」ケースがほとんどです。今いる社員のなかに、必ず芽はあります。村瀬式は、今いる人で成果を出すことに特化しています。

Q. 権限委譲して失敗させれば育つ、とよく聞きます。それではダメなのですか。

「基準を示したうえでの委譲」なら育ちます。しかし、役割も判断基準も渡さない丸投げは、中小企業では致命傷になりかねません。任せる範囲と判断のよりどころを言葉にしてから渡すこと。ここが分かれ目です。

Q. 研修を一度受ければ、幹部は育つのでしょうか。

研修だけでは育ちません。問いを与え、成果の定義を変え、小さな変化を任せる。この日常の積み重ねがあって、はじめて研修が生きます。だからこそ、私は単発の座学ではなく、現場の実践とセットでご支援しています。

Q. 次世代リーダーや後継者の育成も相談できますか。

できます。次世代リーダー・後継者の育成は、変革を担う人を育てることと本質は同じです。経営視点・意思決定力・使命感を、段階的な実践のなかで育てていきます。まずは無料相談からで結構です。

Q. 村瀬式「ドラッカーの7つの原則」とは何ですか。

ドラッカーの経営理論を土台に、陽明学・論語・禅などの人間学と、現場で人の情熱に火をつける実践知を掛け合わせ、中小企業がすぐ使える形に整えた七つの原則です。著書は7刷を重ね、私はドラッカー学会の会員として理論の正統性にも責任を持っています。

明日からやる3つのこと

  1. 幹部候補一人に、「あなたの仕事は、どの顧客の何を変えているか」を今週中に問いかける。答えを教えず、考えさせる。
  2. その候補に任せる小さな変化を一つ決め、任せる範囲と判断基準を紙に一枚で書き出してから渡す。丸投げにしない。
  3. 次の会議で、売上目標を語る前に「この数字の先にいる顧客はどう変わるか」を最初の議題にする。成果の定義を、外に向け直す。

【ドラッカー理論による人材育成・研修についてはこちらのページからご覧ください】