「経営をうまくいかせるために、リーダーとして一番大切にすべきことはありますか?」
-コンサルティグで後継者の方から頂いたご質問です。
ドラッカーがリーダーに求めた条件は、「真摯であれ!」です。
リーダーは生来、真摯さを身に着けていなければならず、セミナー等で、後天的に身に着けることは不可能である、とドラッカーは言います。
ドラッカーが、日本の経営者の心を捉えて離さないのは、高潔な倫理観が根本にあります。
この記事でまとめたこと
リーダーの絶対条件である・真摯さ
真摯さ(しんしさ=integrity)とは何か?
真摯さとは、誠実・真剣である、また、武士道の五常の徳(仁・義・礼・知・信)のような、人間として根本になければならない、職務に向かう姿勢をいいます。
西洋では、「ノブリス・オブ・リージュ(高貴な者の義務)」という言葉があります。
貴族は、普段は遊び惚けていますが、領民はこれを許します。
その理由は、戦争が起きた時には国を守るために先頭に立ち、命を差し出して戦うという責務を負っているからです。
最近のヨーロッパの戦争でも、真っ先に戦闘機に乗って貴族が参戦し有名になりました。
ドラッカーは、経営者は高貴なる者である故に、職務への厳しい責務を負うこと。
職務の遂行において、人一倍の真摯さを持たなくてはならないと言うのです。
経営者はまず、人間としての真摯さを、日々自問し、リーダーの在り方を考えるべきです。寝る前に鏡の前で、「今日、自分は真摯であったか?」と問うのです。
人材登用の際にも、有能さよりも、その人間が真摯であるか、誠実であるかどうかが、最重要基準です。
真摯さに欠ける人間は、組織のモラル(文化)を破壊します。
経営を成功させるためには、ハウツーよりも、「人間としての正しい姿勢・在り方」の重要性をドラッカーは説くのです。
そのため、「経営の原理原則」と呼ばれます。
ドラッカーの経営学は、リーダーの魂をつけ、ビジネスの本当の意義を問う、実学です。
真摯にリーダーとして共に成長していきましょう。
ご質問・ご意見はお気軽にメール下さいね。
■現場のアクションプラン
【1】一日の終わりに「今日、自分は真摯であったか」と一つだけ振り返る
長い反省会は要りません。寝る前のわずかな時間で構わないのです。今日、自分は社員や取引先に対して誠実であったか。都合の悪いことから目をそらさなかったか。たった一つの問いを、毎日自分に向けてみる。この積み重ねが、リーダーの土台をつくります。
【2】人を選ぶとき「有能さ」より先に「誠実さ」を見る
能力の高い人ほど、真摯さを欠くと組織への害も大きくなります。昇進や採用を決める前に、その人が仲間に対して誠実か、陰で手を抜かないか、他人の成果を横取りしないかを、静かに観察してください。順番を、能力より人柄が先、に変えるだけで組織の空気は変わります。
【3】自分がやりたくないことを、部下に求めない
真摯さは、言葉ではなく後ろ姿で伝わります。約束を守る、非を認める、一番きつい場面で先頭に立つ。社長がそれをやって見せたとき、はじめて「うちの会社は正直でいい」という文化が育ちます。
■成果につながる方法とそうでない方法
| 成果につながる方法 | 成果につながらない方法 |
|---|---|
| 人柄・誠実さを昇進や採用の第一基準にする | 能力や実績だけで人を登用する |
| 自分に厳しく、責務を先頭で引き受ける | 部下にだけ厳しさを求め、自分は例外にする |
| 非を素直に認め、約束を守る | 言い訳を重ね、都合の悪い事実を隠す |
| 在り方・原理原則を土台に判断する | その場しのぎのハウツーだけに頼る |
| 後ろ姿で組織の文化を育てる | 言葉だけで理念を語り、行動が伴わない |
■経営者へのメッセージ
真摯さという言葉は、どこか堅苦しく、当たり前すぎて聞き流してしまいそうになります。けれど経営を長く見てきて、私はつくづく思うのです。最後に会社を支えるのは、社長という人間が、どれだけ誠実であったかなのだと。
技術や仕組みは、真似ることができます。けれど、社員が「この人についていきたい」と心から思うのは、社長の在り方に嘘がないときだけです。都合の悪いことにも正面から向き合い、自分に一番厳しくある。その姿を、社員は驚くほどよく見ています。
真摯さは、生まれ持った完璧さではありません。今日、自分は正直であったかと問い続ける、その姿勢そのものです。だから、遅すぎるということはありません。今日から始めれば、それで十分なのです。
一日の終わりに、静かに自分へ問うてみてください。その小さな習慣が、やがて組織全体の空気を変えていきます。焦らず、一歩ずつ、共に歩んでまいりましょう。
■参考にしたい真摯さに関する名言
「真摯さは学ぶことのできない資質である。仕事についたときに身につけていなければならない資質である。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』
「マネジャーにとって決定的に重要なものは、教えることのできない資質、天才的な才能ではなく真摯さである。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』
「信頼するということは、リーダーを好きになることではない。常に同意することでもない。リーダーの言うことが真意であると確信を持てることである。」
── ピーター・ドラッカー『プロフェッショナルの条件』
「君子は義に喩り、小人は利に喩る。」
── 孔子『論語』
■クライアントの実践事例
私がお願いしたのは、たった一つでした。「有能さではなく、誠実さを一番の基準にして、社長ご自身の態度を変えてみてください」ということです。まずは社長が、約束したことは必ず守り、自分の非は素直に認める。そのうえで、誰に対しても誠実に振る舞う若手を、はっきりと評価し、言葉にして認めていく。
半年ほど経った頃、E社の空気が明らかに変わってきました。誠実にやる者がきちんと報われると分かり、若手が生き生きと働き始めたのです。例のベテラン社員も、周囲の変化を感じ取ったのか、少しずつ態度が和らいでいったといいます。社長さんは、「能力より人柄を先に見る。それだけで、こんなに会社が変わるとは思わなかった」と、静かに笑っておられました。
■真摯さに関してよくある質問と実践へのアドバイス
Q. 真摯さは後天的に身につかないなら、今からでは遅いのでしょうか。
A. そうではありません。ドラッカーが「身につけられない」と言ったのは、テクニックのように一夜漬けで演じることはできない、という意味です。今日、自分は誠実だったかと問い続ける姿勢そのものが真摯さです。その問いを始めた瞬間から、あなたはもう真摯さの道を歩いています。
Q. 有能だけれど真摯さに欠ける社員を、どう扱えばいいですか。
A. 能力が高い人ほど、真摯さを欠いたときの害は大きくなります。まずは期待をはっきり伝え、行動を改める機会を与えてください。それでも組織の文化を壊し続けるなら、能力があっても中心的な役割からは外す判断が必要です。守るべきは、真面目に働く大多数の社員です。
Q. 自分が真摯かどうか、正直に判断する自信がありません。
A. 自分一人で完璧に判断するのは、誰にとっても難しいものです。だからこそ、寝る前に鏡の前で一日を振り返る習慣が効きます。加えて、信頼できる幹部や、時には外部の第三者に、率直な意見を求めてみてください。都合の悪い声にこそ耳を傾ける。その姿勢自体が、真摯さの表れです。
Q. 真摯さを重んじると、業績は後回しになりませんか。
A. 逆です。真摯さは業績と対立するものではなく、長く成果を出し続けるための土台です。誠実な会社にこそ、良い社員が集まり、良い取引先が残ります。目先の数字だけを追う経営は、どこかで信用を失い、必ず行き詰まります。急がば回れ、なのです。
なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか
ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。
変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。
難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に
とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。
そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。
「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修
知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。
管理職が育てば、組織そのものが変わっていく
一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。
ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。
貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。
ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介
中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。



