
最終更新:2026年11月
ある後継社長が、面談の終わりぎわに、ぽつりとこう言いました。
「数字のことは、顧問税理士に相談できます。
でも、次の柱をどうするか。
方針を決めて、幹部と一緒に動かすところを、
一緒に考えてくれる相手がいないんです」
あなたにも、覚えがないでしょうか。
「決算や資金のことは聞ける。けれど、進む方向そのものを、誰と相談すればいいのか」。
後継社長の多くが、ここで立ち止まります。
相談できる人はいる。けれど、一緒に決めてくれる人がいない。
この点について、ドラッカーはこう言っています。
「マネジメントとは、人に関わることである。その機能は、人が共同して成果をあげられるようにすることである。」
― P.F.ドラッカー『マネジメント』(上田惇生訳・ダイヤモンド社)
経営とは、社長が一人で正解を出すことではありません。
人が共同して成果をあげられるようにすることです。
だとすれば、相談相手に求めるものも変わってきます。
今回は、後継社長が相談相手を選ぶとき、何を確かめればよいのかを解説します。
この記事でまとめたこと
相談相手は、三つの役割に分かれている
まず、整理しておきます。
社長を支える相手は、大きく三つの役割に分かれます。
一つは、数字を見る人。
顧問税理士や会計士です。決算、納税、資金繰り。ここは欠かせません。
二つは、仕組みをつくる人。
社会保険労務士や、業務の専門家です。制度や手続きを整えます。
三つは、方向を決める人。
何を選び、なぜ今それをやるのか。そこを一緒に考える相手です。
後継社長がいちばん欲しくて、いちばん見つけにくいのが、この三つ目です。
多くの社長は、一つ目と二つ目で手を打っています。
けれど三つ目が空いたまま、一人で抱えています。
税理士に方針を聞いても、答えが返らない理由
「それなら、信頼している税理士に聞けばいい」。
そう思うかもしれません。
でも、やってみると、しっくりこない。
これは、相手が悪いのではありません。役割が違うのです。
数字を見る人は、起きたことを正確に写します。
過去を映す鏡です。それは、とても大事な仕事です。
ただ、方向を決める仕事は、まだ数字になっていない未来を扱います。
来期、どの顧客に何を試すか。次の柱に、いつ踏み出すか。
こうした判断は、過去の数字の中には答えがありません。
鏡に、まだ無い景色は映らないのです。
だから、方針づくりには、別の役割の相手が要ります。
過去を正しく読む人と、未来を一緒に描く人。
この二つを、同じ相手に求めてはいけません。
では、方向を決める相手に、何を確かめるか
ここが本題です。
肩書きや知名度では選べません。
私は、後継社長に、次の三つを確かめてほしいと伝えています。
一、答えを渡す人か、問いを立てる人か。
(「こうしなさい」と指示する人より、「御社の顧客は誰ですか」と問い続ける人を選ぶ)
二、社長室で終わる人か、現場まで降りる人か。
(きれいな計画で終わらず、幹部会議まで入り、誰が何を試すかを決める人か)
三、流行りを語る人か、原理原則に立つ人か。
(新しい手法を次々売る人より、変わらない原則で判断を支える人か)
この三つが、方向を決める相手を見分ける物差しです。
特に大事なのは、一つ目です。
答えをくれる人は、楽です。けれど、会社は育ちません。
社長自身が答えにたどり着く力を、残してくれる人を選んでください。
「指示する相手」と「伴走する相手」は、こう違う
| 観点 | 指示する相手 | 伴走する相手 |
|---|---|---|
| 渡すもの | 答え・正解 | 問い・判断の物差し |
| 関わる場 | 社長との面談だけ | 社長面談+幹部会議 |
| よりどころ | 最新の流行り | 変わらない原理原則 |
| 去ったあと | 社長が動けなくなる | 社長と幹部が自分で決められる |
右の列の相手なら、関わりが終わっても会社に力が残ります。
よい相談相手とは、やがて要らなくなる相手です。
これが、ドラッカーの言う「人が共同して成果をあげられるようにする」ということだと、私は思います。
もう一つ、確かめてほしい問い
相手を選ぶとき、ドラッカーのもう一つの言葉が助けになります。
「何によって憶えられたいか。」
― P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』(上田惇生訳・ダイヤモンド社)
相談相手に、一度この問いをぶつけてみてください。
「あなたは、関わった会社に何を残したいですか」。
その答えに、相手の仕事観がそのまま出ます。
契約を売りたいのか、会社を強くしたいのか。
短い問いですが、よく見えます。
初回の相談に、何を持っていくとよいか
いざ相談するとなると、構えてしまう方がいます。
立派な資料を用意しなければ、と。
その必要はありません。
持っていくとよいのは、まとまっていない悩みです。
たとえば、こんな一言で十分です。
「主力の受注が、少しずつ細ってきました。
次の柱を考えたい。でも何から手をつければいいか、分かりません。
幹部にどう話せばいいのかも、見えていません」
これで、話は始まります。
整った答えを持ってくる必要はありません。
整っていないからこそ、一緒に整理するのです。
原理原則に立ち返ることが、いちばんの近道
ここまで読んで、お気づきかもしれません。
相談相手を選ぶ物差しの奥に、一本の筋が通っています。
流行りの手法ではなく、変わらない原理原則に立つこと。
ドラッカーの「人を活かす経営7つの原則」は、どれも新しい話ではありません。
顧客から考える。人の強みを活かす。成果に焦点を合わせる。
当たり前に聞こえます。
けれど、この当たり前を、自社の判断に一つひとつ当てはめ続けられる社長は、多くありません。
そこを支えるのが、方向を決める相手の役割です。
ただ、一人で原則を当てはめると、堂々巡りになる
正直に申し上げます。
原理原則は、本で読めます。
けれど、それを自社の受注、社員の配置、来月の会議に翻訳するところで、必ず詰まります。
自社のことは当たり前になりすぎて、見えないからです。
考えても、同じところをぐるぐる回る。
これは、力不足ではありません。問いを立て続ける相手が、要るのです。
私の仕事は、そこにあります。
ドラッカーの原理原則を、御社の判断に翻訳します。
社長が自分の答えにたどり着くまで、問いを重ねます。
月1回の社長面談で、「何を選び、なぜ今か」を言葉にします。
約2時間の幹部会議で、誰がどの顧客に何を試すかまで決めます。
同じ課題を、社長室と現場の両方で扱う。
ここが、私のやり方です。
御社の次の柱について、数字ではなく「進む方向」を一緒に考える相手は、今いるでしょうか。
いないとしたら、来月の判断は、誰と確かめますか。
私は、月1回の社長面談と、約2時間の幹部会議で伴走します。
社長が「何を選び、なぜ今か」を言葉にし、幹部と「誰が何を試し、何を見て次を判断するか」まで具体化します。
無料相談では、ドラッカーの「人を活かす経営7つの原則」による経営診断で、御社の現状と優先して取り組む課題を一緒に整理します。
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