■マーケティングカンパニーの実践事例

【事例1】 マーケティング部を最上位機関にしたA社

マーケティングは、顧客に関する全てのことです。

事業にとって何よりも大切なのは顧客です。

企業内のどのような部門も顧客に関係のない人は存在しません。

クライアント様のA社は、「全社員が顧客への価値向上に邁進するマーケターになる。マーケティングカンパニーを創る」というコンセプトにインスピレーションを受け、ある施策を実施しました。

「そうだ!何より重要なのがマーケティングなのだ。

わが社の、全部門で、マーケティングをすすめる、マーケティングカンパニー(顧客価値向上に燃える会社)に進化するぞ。

人事・総務・製造・営業・ロジスティックスの全部門を統括する上位部門としてマーケティング部を置こう。」

A社では、社長直轄で、マーケティング部を置き、傘下に全部門を展開しました。

各部門は、マーケティング部営業課・マーケティング部ロジスティックス課・マーケティング部人事部課といった具合です。

事業活動全てを「顧客視点から捉え、」マーケティングを推進したのです。

【ポイント】

モノ余りの現代、ビジネスの主導権は顧客が持つ。

顧客の視点になり切って、顧客をいかに深く理解できるかが、ビジネスの成功を決める。マーケティングが全てである。

■現場のアクションプラン

【1】どの部門も「その仕事の先にいるお客様」を言葉にする

経理も総務も製造も、直接お客様に会わない部門ほど、顧客が見えなくなります。「あなたの仕事は、最終的にどんなお客様の役に立っているか」を一人ひとりに書き出してもらう。全社員が顧客とつながっている実感が、マーケティングの土台になります。

【2】社内会議の判断基準を「お客様にとってどうか」に統一する

社内の都合や部門の縄張りで物事を決めていないか。何かを決めるとき、必ず「これはお客様のためになるか」を最初に問う。この一言を会議の合言葉にするだけで、判断の質が変わります。

【3】お客様の生の声を、全部門が聞く場をつくる

営業だけが顧客の声を握っている会社は、顧客視点が全社に広がりません。クレームも感謝の言葉も、製造や事務の人にも共有する。お客様の顔が見えると、仕事の意味が変わります。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
全部門が顧客視点で仕事を捉える 営業だけの仕事だと考える
お客様のためになるかで判断する 社内の都合や部門の縄張りで決める
顧客の生の声を全社で共有する 現場の声が経営に届かない
顧客を深く理解しようと努める お客様の気持ちを社内で想像で決める
売ることより価値を届けることを考える 売ることばかりに気を取られる

■経営者へのメッセージ

マーケティングと聞くと、広告や販売促進の技術だと思われがちです。けれど、ドラッカーの言うマーケティングは、もっと根っこの話です。会社の全部門が、お客様のほうを向いて仕事をする。それだけのことなのです。

A社の社長さんがやったのは、部署の名前を変えることそのものではありません。「わが社の仕事は、すべてお客様の価値のためにある」という考え方を、目に見える形にしたということです。名前を通じて、社員の意識を顧客へ向けた。ここに本質があります。

大がかりな組織改革をすぐに真似る必要はありません。まずは、社内の誰もが「自分の仕事の先にいるお客様」を思い浮かべられるようにする。そこから始めてみてください。

モノがあふれ、どこで何を買ってもそう変わらない時代です。だからこそ、お客様を深く理解し、心から喜んでもらえる会社が選ばれます。その原点に立ち返ろうとしているあなたの会社は、きっと強くなっていきます。

■参考にしたいマーケティングに関する名言

「企業の目的は、顧客の創造である。したがって企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』

「事業とは何かを決めるのは顧客である。顧客だけが、財やサービスを買うことによって、経済的資源を富に変える。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「お客様に喜んでいただくことが、商売の基本である。」
── 松下幸之助

■クライアントの実践事例

私のお客様の、食品製造業D社(社員45名)の社長さんは、「うちは営業が売ってきてくれるから、製造は良いものを作ればいい」という考えで長年やってこられました。悪いことではありません。ただ、製造も事務も、お客様の顔がまったく見えていなかったのです。

そこで、月に一度、お客様から届いた声を全社員で読む時間をつくっていただきました。感謝のはがきも、厳しいご意見も、そのまま。最初は「作業の手が止まる」と現場から不満も出たそうです。それでも続けてもらいました。

半年ほどで、製造の担当者から「あのお客様が喜んでくれるなら、ここをこう変えたい」という改善の声が自然に出るようになりました。事務の人も、電話の応対が変わった。誰かに言われたからではなく、自分ごととしてお客様を思うようになったのです。

社長さんは「組織図は何も変えていない。ただ、みんながお客様のほうを向くようになっただけです」とおっしゃいました。マーケティングカンパニーとは、部署の名前ではなく、全社員の心の向きなのだと、私も実感した事例でした。

■マーケティングに関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. うちのような小さな会社に、マーケティングは必要でしょうか。

A. 会社の規模は関係ありません。むしろ小さな会社ほど、お客様一人ひとりの顔が見えるので有利です。大切なのは、お客様を深く理解し、喜んでいただくこと。それはどんな会社でも、今日から始められます。

Q. A社のように組織を大きく変えないといけませんか。

A. いいえ、真似るべきは仕組みではなく考え方です。全社員がお客様のほうを向く。それが伝われば、組織図はそのままで構いません。まずは会議で「お客様にとってどうか」を最初に問うことから始めてください。

Q. 製造や事務の社員に、顧客視点をどう持たせればよいですか。

A. お客様の生の声に触れる機会をつくることです。感謝の言葉も、クレームも、直接会わない部門にこそ共有する。お客様の顔が見えた瞬間、人は自分の仕事の意味を見つけ、自然と顧客のほうを向き始めます。

Q. 顧客の気持ちは、社内で話し合えば分かりますか。

A. ドラッカーは「社内で顧客について想像することの大抵は妄想だ」と厳しく言いました。分からないことは、お客様に直接聞くのが一番です。売れた瞬間に「なぜ当社を選んでくださったのですか」と尋ねる。そこに答えがあります。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。

難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に

とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。

そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。

「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。


ドラッカー7つの原則研修

ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。

貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。

ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。

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