顧客の課題から考え抜けば、新サービスが生まれる。

「顧客が本当に解決したい課題は何か?」

を考え抜けば、顧客への新サービスを開発できます。

ある製薬会社は、顧客である末期の癌患者を調べました。

すると、患者が本当に購入しているのは薬ではなく、伸びた寿命(家族と過ごす時間)だと分かりました。

患者は薬という商品を通じて、家族と過ごす時間の延長権を買っていたのです。

その結果、患者のために行うべきは、家族(の心)のケアという、患者のみならず家族を含んだ、患者支援のトータルサポートに進化しました。

家族の不安を解消するために、家族向けの薬剤の説明会を行い、より広い活動で、患者と家族に貢献しています。

顧客が本当に価値とするもの、解決したいことを深く考えたときに、マーケティングは、より深く顧客の心に迫り、顧客さえも気づいていない解決すべき課題を明らかにします。

そして、解決する手段としての新サービスの開発が可能になります。

マーケティングの格言に、「一番魚釣りのうまい漁師は、一番魚のことを理解している」という、ものがあります。

マーケティングの最大の課題は、顧客に迫り、深く理解することです。

ドラッカーも、「消費者が求めているもののなかで、今の商品やサービスで満たされていないものについて、それが何であるかを問わなければならない」と顧客と顧客の課題を理解することの重要性を強調します。

ビジネスにおいての主人公は顧客です。

顧客を一番理解できた企業がビジネスを制するのです。

今回のポイント

顧客が本当に解決したい問題を考え抜き、自社がさらに貢献できることは何か? を考え抜けば、新商品・サービスが生まれる。

■現場のアクションプラン

【1】「うちが売っているもの」ではなく「お客様が解決したいこと」で書き直す

商品名を紙の左に書き、その右に「このお客様は本当は何を解決したくて、これを買っているのか」を書き出す。売っているつもりの物と、買われているものの間には、たいていズレがあります。そのズレの中に、次のサービスの芽があります。

【2】買ってくれたお客様に「本当はどうなりたかったか」を一つ聞く

「なぜ買ってくださったのですか」ではなく、「これで、どんな困りごとが片づきましたか」と聞いてみる。答えの中に、商品そのものより深い、本当の欲求が現れます。

【3】満たしきれていない部分を一つ、無料でもいいから足してみる

製薬会社が薬に「家族へのケア」を足したように、今の商品の周りで、お客様がまだ困っている部分を一つ補ってあげる。それが評判を呼び、やがて新しい商いになっていきます。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
お客様が解決したい課題から発想する 自社が売りたい商品から発想する
現場でお客様に直接聞いて確かめる 社内の会議室で想像だけで決める
商品の前後にある「本当の困りごと」まで見る 商品そのものの性能だけを磨く
満たされていない欲求を機会と捉える 今売れている物だけを守り続ける
顧客理解を全社で共有する 気づきを担当者一人の頭に留める

■経営者へのメッセージ

新しいサービスというと、どこか特別な才能やひらめきが要るように感じられるかもしれません。けれど、この製薬会社の話にひらめきはありません。あるのは、目の前のお客様を、もう一段深く見ようとした姿勢だけです。

薬を売っていると思っていた会社が、実は「家族と過ごす時間」を売っていたと気づいた。その気づきの一歩が、まったく新しい支援の形を生みました。答えは、いつも会社の外、お客様のところにあります。

あなたの会社にも、まだ言葉になっていないお客様の願いが、きっと眠っています。それを聞き取り、一つずつ形にしていく。派手ではありませんが、これほど確かな成長の道はありません。

焦らなくて大丈夫です。まず一人のお客様に、本当はどうなりたかったのかを尋ねるところから。そこから、次の商いが静かに始まります。

■参考にしたい顧客理解に関する名言

「顧客に対して、われわれの製品は何ができるかを問うてはならない。顧客が片づけたい仕事は何かを問わなければならない。」
── ピーター・ドラッカー『創造する経営者』

「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。マーケティングとイノベーションである。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「われわれの顧客は誰か。この問いこそ、企業の使命を定めるうえで最初に問うべき問いである。」
── ピーター・ドラッカー『経営者に贈る5つの質問』

「商売とは、感謝の集まりである。」
── 松下幸之助

■クライアントの実践事例

私のお客様の、住宅リフォームE社(社員18名)の社長さんは、「工事の腕には自信があるのに、なぜか大手に負ける」と悩んでおられました。同じ工事、同じ価格でも、お客様が最後に選ぶのは知名度のある会社。「もう値段を下げるしかないのか」と、かなり弱気になっておられたのを覚えています。

そこで私がお願いしたのは、契約が取れなかったお客様に、断られた理由をそっと聞いてみることでした。すると意外な答えが返ってきたのです。「工事の良し悪しは素人には分からない。だから、工事中に家族がどれだけ不安にならずに済むかで選んだ」と。お客様が本当に買いたかったのは、きれいな仕上がりだけでなく、「工事の間、安心して暮らせること」だったのです。

E社の社長さんは、工事の腕を宣伝するのをやめ、代わりに「毎日の作業予定を前の晩にお伝えする」「一日の終わりに必ず現場を掃除して報告する」という、ごく小さな約束を始めました。特別な費用はかかっていません。

半年後、E社では紹介による受注が目に見えて増えていきました。「工事が丁寧なだけでなく、気持ちが休まる会社だった」と、お客様が次のお客様を連れてきてくれるようになったのです。変えたのは工事の中身ではなく、お客様が本当に解決したかった「不安」に目を向けたこと、その一点でした。

■顧客理解に関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. お客様に「本当はどうなりたいか」なんて聞いても、うまく答えてもらえません。

A. いきなり核心を聞くと、お客様も答えに困ります。まずは「これで、どんなことが楽になりましたか」と、過去の変化を具体的に尋ねてみてください。人は、これからの願いは言葉にしにくくても、済んだ困りごとは語りやすいものです。その語りの中に、本当の欲求が必ず顔を出します。

Q. うちのような小さな会社に、新サービスを生む余裕なんてありません。

A. 新サービスといっても、まったくの新事業を起こす話ではありません。今ある商品の周りで、お客様がまだ少し困っている部分を一つ補うだけでいいのです。むしろ小さな会社ほど、お客様と直接話せる分、大手より深く課題をつかめます。それは何よりの強みです。

Q. お客様の要望を全部かなえていたら、きりがないのでは。

A. おっしゃる通りです。すべてに応える必要はありません。大切なのは、多くのお客様が共通して抱えている「満たされていない一つ」を見つけることです。製薬会社も、あらゆる要望に応えたのではなく、「家族の不安」という一点に絞りました。一点集中が、かえって強い差別化になります。

Q. 顧客理解は、営業担当だけがやればいいことですか。

A. いいえ、全社で取り組むべきことです。製造や事務の人こそ、お客様の困りごとを別の角度から見ています。営業がつかんだ気づきを社内で共有し、みんなで「お客様は本当は何を求めているか」を考える。その積み重ねが、会社全体の力になっていきます。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

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「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

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管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

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ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

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