← マーケティングを成功させる ドラッカーの名言12選|顧客創造の本質

このページでは、経営の神様ピーター・F・ドラッカーの名言を、マネジメント・成果(生産性)・リーダーシップ・イノベーション・マーケティングの5つのテーマ別に、合計60個まとめました。すべての名言に出典と、現場での活かし方の解説を添えています。
「ドラッカーの名言をまとめて読みたい」「経営や管理職の指針になる言葉を探している」という方は、まずこの一本を読めば全体像がつかめます。気になるテーマから読んでいただいても構いませんし、上から順に読めば、ドラッカー経営の骨格が自然と見えてくる構成にしています。
中小企業の経営者の方、組織を預かる管理職の方、人材育成に携わる方へ。ドラッカーの言葉は、いつの時代も、あなたの経営に大きなヒントを与えてくれるはずです。
この記事でまとめたこと
ドラッカーとは何者か ―「現代経営学の父」の人間中心の経営観
名言に入る前に、ドラッカーという人物を簡単にご紹介します。
ピーター・F・ドラッカー(1909〜2005年)は、オーストリア・ウィーンに生まれ、のちにアメリカで活躍した経営思想家です。「マネジメント」という概念を体系づけたことから、「現代経営学の父」「マネジメントの発明者」とも呼ばれています。近年では、小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(いわゆる「もしドラ」)をきっかけに、経営者以外にも広く知られるようになりました。
代表的な著作に『マネジメント』『経営者の条件』『創造する経営者』『イノベーションと企業家精神』『現代の経営』などがあります。本記事で紹介する名言も、これらの著作から引用しています。
ドラッカーの経営観の根っこにあるのは、「人間の尊厳」です。組織とは、人が強みを発揮し、社会に貢献するための道具である。人をコストや管理の対象としてではなく、最大の資源として捉える。この人間中心の視点が、あらゆる名言を貫いています。
まず押さえたい ドラッカーの有名な名言10選(英語原文つき)
テーマ別の解説に入る前に、ドラッカーの名言のなかでも特に有名で、短く覚えやすいものを10個、英語の原文とあわせて挙げておきます。会議での引用や、社内の理念づくりの言葉として使いやすいものを選びました。まずここでドラッカー思想の全体像を、ひとことずつつかんでください。
- 「マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しいことを行うことである」
Management is doing things right; leadership is doing the right things.
効率(正しくやる)と有効性(正しいことをやる)を切り分けた、ドラッカーを代表する一節です。 - 「事業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である」
There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.
売上や利益ではなく、顧客をつくることこそ事業の目的だと言い切った言葉です。 - 「何か新しいことを始めたいなら、まず何か古いことをやめなければならない」
If you want something new, you have to stop doing something old.
体系的廃棄。新しい挑戦の前に、まず捨てる勇気を説いています。 - 「測定できないものは、改善できない」
If you can’t measure it, you can’t improve it.
感覚ではなく事実と数字でマネジメントせよ、という原則です。 - 「およそ行う必要のないことを、効率的に行うことほど無駄なことはない」
There is nothing so useless as doing efficiently that which should not be done at all.
そもそもやるべきかを問う。ムダな仕事を速くしても意味はありません。 - 「コミュニケーションで最も大切なのは、語られなかったことに耳を傾けることである」
The most important thing in communication is hearing what isn’t said.
言葉の裏にある本音を聴く。人を活かすリーダーの基本姿勢です。 - 「未来を予測する最善の方法は、それを自らつくり出すことである」
The best way to predict the future is to create it.
変化を待つのではなく、自ら変化を起こすチェンジリーダーの心構えです。 - 「文化は戦略を朝食に食べてしまう」
Culture eats strategy for breakfast.
どれほど優れた戦略も、組織の文化・風土には勝てないという警句です。 - 「計画は、直ちに具体的な仕事に落とし込まれない限り、単なる善意にすぎない」
Plans are only good intentions unless they immediately degenerate into hard work.
計画そのものより、実行に移すことに価値があるという教えです。 - 「知識労働者は、自らをマネジメントしなければならない」
Knowledge workers have to manage themselves.
これからの働き手は、上司ではなく自分で自分を方向づける存在だと説いた言葉です。
なお、英語の原文表記は英語圏で広く引用されている形に沿ったものです。日本語訳はダイヤモンド社版の各邦訳を踏まえつつ、意味が伝わるように整えています。
この記事の読み方 ― 「炎のドラッカー」が中小企業の現場目線で解説します
名言集はネット上にあふれています。ただ、その多くは大企業を前提とした抽象論の引用であったり、英語の格言をただ並べただけであったりします。この記事が違うのは、解説のすべてを、中小企業の経営コンサルティングの現場から書いている点です。
私、村瀬弘介は、ドラッカーの難解な理論を、中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化した「人を活かす経営 7つの原則」を提唱しています。おかげさまで導入企業は257社以上、研修の受講者は延べ1,520名以上、著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねています。ドラッカー学会の会員として、原著の読み込みも続けています。
もともと私はジャズの音楽家で、そのあと経営の世界に入りました。譜面どおりに弾くのではなく、その場の空気で音を生み出すジャズの感性。そして、知識ではなく生き方として学問を捉える陽明学・論語・禅といった東洋の人間学。この二つを、ドラッカーの経営理論と一つに融合させて伝えているのが、私の講義の特徴です。受講された社長さんから「社長魂に火がついた」「魂からの感動があった」と言っていただくことが多く、いつしか「炎のドラッカー」と呼ばれるようになりました。
だからこの記事の各名言には、教科書的な意味だけでなく、「では、今いる社員だけで最大の成果を上げるには、明日から何をすればいいのか」という、中小企業の現場に立った実践のヒントを必ず添えています。大企業のように潤沢な人材や資金があるわけではない。その前提で、目の前の一人ひとりの強みをどう活かすか。そこにこだわって読み解いていきます。ここから先は、5つのテーマに分けて、一つずつ深く見ていきましょう。
【経営・マネジメントの本質が分かる ドラッカーの名言12選】
■1 マネジメントとは、人のことである
マネジメントとは、人にかかわるものである。
その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、
強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。
ドラッカーの経営の本質にあるものは、人間の尊厳です。人がいかに幸せになれるか、自らの強みを用いて世の中に貢献する創造的な存在に成長できるかを説く、人間学的な要素もあります。私は陽明学や論語の「人を観る」眼と、この一節が根っこでつながっていると感じています。
中小企業の現場では、この言葉はとりわけ重く響きます。大企業のように、合わない人を配置転換したり、外から優秀な人を採用したりする余裕は、なかなかありません。だからこそ、今いる社員の強みを結びつけ、弱みを互いに補い合わせて成果を出すという発想が、そのまま生き残りの条件になります。私が257社の現場で見てきたのも、この一点をやり切った会社だけが伸びていく、という事実でした。
強みだけが結びつき、弱みが無きものとされる組織を作り上げることは、経営者にとっての重要課題です。
■2 人が成果を上げるのは、強みによってのみである
人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。
弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。
強みに集中し、卓越した成果をあげよ。
ドラッカーの経営では、人の強み、組織の強みにフォーカスします。マネジメントを実践し高い成果を上げる企業が多いのは、メンバーや自社の強みに集中するからです。
強みに集中するからこそ、組織も個人も高い成果を上げるのです。
■3 強みは、当然にできるものだから気づかない
知っている仕事はやさしい。そのため、自らの知識や能力には
特別の意味はなく、誰もがもっているに違いないと錯覚する。
逆に、自らに難しいもの、不得手なものが大きく見える。
ほとんどの人は自分の強みを知らない、弱みさえ知らないとドラッカーは言います。個人の強みは、当然としてできてしまうがゆえに、自分では気づきにくいものなのです。
メンバーの強みは、組織が意識して発見する必要があります。お互いの強みを理解し、相互に活かし合える関係を創ることが、成果を上げるコツです。
■4 他社との比較で、自社の強みを見つけ出す
他社はうまくできなかったが、わが社はさしたる苦労なしにできたものは
何かを問わなければならない。同時に、他社はさしたる苦労なしにできたが、
わが社はうまくできなかったものは何かを問わなければならない。
競争環境の中でライバルに勝つためには、自社の強み・弱みを厳しく見つめ直す必要があります。強みに集中し、高い成果を上げることがドラッカー経営の本質です。
競合他社数社と比較し、顧客に提供する価値の観点から、自社の強みと弱みを分析する必要があります。
■5 成功するには、一点の強みに集中して卓越する
多くの領域において卓越することはできない。しかし成功するには、
多くの領域において並み以上でなければならない。いくつかの領域において
有能でなければならない。一つの領域において卓越しなければならない。
ドラッカー経営では、集中するからこそ高い成果が生まれます。集中するためには、何にでも取り組むのではなく、一つの領域に焦点を絞る必要があります。
自社の強みがあり、卓越した成果を生める領域を定め、その強みをライバルが到達できないレベルにまで磨き上げる必要があるのです。
■6 組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと
人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。
問題を起こす。人とは費用であり、脅威である。
しかし人はこれらのことゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり
能力のゆえである。
組織の目的は人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。
人を最大の資源として扱い、その強みを爆発させ、チームで弱みを中和することがマネジメントの本質です。メンバーの美点(強み)のみを見て、悪い点を昇華させていくことが、ドラッカーの人間中心の経営の最大のコンセプトであるといっても過言ではありません。
あなたの組織では、人の強みが活かされているでしょうか。人を活かすとは、人の強みを活かすということなのです。
■7 凡人が非凡な働きをできる組織こそ、目指すべき組織である
組織の優秀さとは、凡人をして非凡な働きをなさしめることにある。
この世の中に、キラリと光る天才のような人はまれで、組織のほとんどの人は普通の人です。この普通の人をいかに生かし、組織の中で非凡な(卓越した)仕事をしてもらえるかが重要です。
凡人に卓越した仕事をしてもらうためには、その強みのみに集中でき、弱みは補い合って無きものとする組織を実現することが大切になります。
■8 人こそが、最大の資源である
マネジメントのほとんどがあらゆる資源のうち、人が最も活用されず
能力も開発されていないことを知っている。
だが、現実には、人のマネジメントに関するアプローチのほとんどが、
人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。
組織でもっとも大切な資源は、働いている「人」です。人の成長は無限で、人は最大の伸びしろを持っています。人の成長こそ、組織の成長です。
組織の目的は、人のエネルギーを爆発させ、卓越した成果を上げてもらうことにあります。人の能力を高め、マネジメント能力を開発する取り組みこそ、組織の成長に結びつくものです。
■9 メンバーが相互に人間として尊敬される組織風土を築く
仕事の上の人間関係は、尊敬に基礎をおかなければならない。
これに対し心理的支配は、根本において人をばかにしている。
マネジメント(管理職)のみが健康で、他のものはすべて弱いとする。
心理的支配とは、アメとムチで人の心をコントロールできるとする考え方です。ドラッカーは、人はもともと創造的で成長を望む存在であると考えます。
人の心はアメとムチのようなまやかしの仕組みでコントロールするものではなく、相互に敬意を持って成長を期待する関係こそ、健全な組織といえるのです。
■10 部分の和よりも、全体の総和で大きな成果を生む
マネージャーの役割は、部分の和よりも大きな全体、すなわち投入した
資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造することである。
オーケストラの指揮者のように、リーダーの行動、ビジョン、指導力を通じて各メンバーを統合し、創造的なものとして活かすことである。
組織の成果に責任を持つのがマネージャーです。1+1=2ではなく、メンバーが強みを活かし合い、弱みをカバーし合うことで相乗効果を発揮し、さらに高い成果を生み出せるようにすることが、マネージャーの役割です。
そのためには、どこに進むのかというリーダーのビジョンが不可欠になります。
■11 マネジメントとは権力ではない、人を活かす責任である
マネジメントはもともと権力をもたない。責任を持つだけである。
その責任を果たすために権限を必要とし、現実に権限を持つ。
それ以上のなにものももたない。
人をマネジメントするということは、人を統制・管理する権力を持つことではありません。人の持つ強み・創造性を発揮させ、社会の利益につなげる責任を持つということです。
マネジメントとは、人を活かす責任、そして組織に高い成果を上げる責任を持つものなのです。
■12 部下の弱みを見る者は、マネージャー失格である
部下の弱みに目をむけることは、間違っているばかりか無責任である。
上司たるものは、組織に対して、部下一人ひとりの強みを可能なかぎり活かす責任がある。
そしてそれ以上に、部下に対して、彼らの強みを最大限に生かす責任がある。
マネージャーとは、組織の高い成果に責任を持つものです。組織に成果を生むためには、メンバーの強みを活かし、強み同士が結びつく組織を創る必要があります。
部下の弱みばかりに注目し、弱みをいくら克服しても、平均・平凡な成果しか上げられません。卓越した成果を上げるためには、メンバーの強みを見る必要があるのです。
【仕事の成果が大きく上がる ドラッカーの名言12選】
■1 成果を上げることは、身につけられる技術である
成果をあげることは一つの習慣である。実践的な能力の積み重ねである。
実践的な能力は、習得することができる。それは単純である。
あきれるほどに単純である。
ドラッカーは、成果を上げられない人はいない、すべての人が成果を上げることができると言います。成果を上げられるか、そうでないかは、成果を上げる技術を持っているか、持っていないかの違いなのです。
成果を上げるために、ドラッカーは5つの大原則(成果の定義・強み・貢献・時間・集中)を定義しており、それは誰にでも習得することができるのです。
この「習得できる技術」という考え方こそ、私が中小企業向けに体系化した「人を活かす経営7つの原則」の出発点です。才能のある人を待つのではなく、今いる社員が成果を上げる技術を身につけられる仕組みを、会社の中につくる。特別な人材がいなくても勝てる会社になる。そこを狙って組み立てています。研修の具体的な進め方は経営者・管理職向けセミナーのご案内もあわせてご覧ください。
■2 自分に多くを期待する者が、高い成果をあげる
自分に少ししか求めなければ成長しない。
多くを求めるならば、何も達成しないものと同じ努力で巨人に成長する。
成功者の多くは、自分へのセルフイメージ(自尊心・期待度)が高いことが知られています。自分がいかほどのものか、大きな期待を持って仕事に取り組むときに、最大の成長と成果が得られます。
■3 成果を上げる者は、アウトプット思考である
仕事を生産的なものにするには、成果すなわち仕事のアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識などインプットからスタートしてはならない。
技能・情報・知識は道具にすぎない。
成果とはアウトプット、その人からどれだけのものが生み出されたかということです。学生と社会人の違いは、学生が学ぶこと中心、つまりインプット志向なのに対し、社会人はアウトプット志向であるということです。
高い成果を上げる人は、皆アウトプットを強く意識して仕事をしています。
■4 成果を上げる者は、問題志向ではなく機会志向である
問題の解決によって得られるものは、通常の状態に戻すことだけである。
せいぜい、成果を上げる能力に対する妨げを取り除くだけである。
成果そのものは、機会の開拓によってのみ得ることができる。
問題は解決しても、これまでと同じ状態に戻るだけです。成果・利益は、事業機会を追求することによって得られます。
問題解決型のリーダーになってはいけません。成果を上げるリーダーは、機会志向なのです。
■5 成果を上げる者は、強みに集中する
不得手なことの改善にあまり時間を使ってはならない。
自らの強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする。
成果は、その人の持つ強みから生み出されます。弱みはいくら強化しても、平凡なレベルの仕事にしかなりません。
ドラッカーは、強みを活かし、卓越した成果を生み出すことを強調します。
■6 自分の強みを知るには、振り返り分析を行う
何かをすることに決めたら、何を期待するかを書き留める。
9か月後、1年後に結果と照合する。私自身これを50年間続けている。
そのたびに驚かされる。誰もが驚かされる。こうして自らの強みが明らかになる。
自らについて知りうることのうち、この強みこそ最も重要である。
強みというものは、自分にはあまりにも当然にできてしまうため、気づかないものであるとドラッカーは言います。そのため、定期的なフィードバック分析で、自分の強みを明確に把握する必要があります。
強みが分かってこそ、強みに集中し、成果を上げることができます。
■7 得意な仕事のやり方で、成果を上げる
仕事上の個性は、仕事につくはるか前に形成されている。
仕事のやりかたは、強みや弱みと同じように与件である。
修正できても変更はできない。ちょうど強みを発揮できる仕事で成果をあげるように、
人は得意なやり方で仕事の成果をあげる。
誰もが同じような働き方で成果が出るわけではありません。自分にとって得意な仕事のやり方を見つけ、そのやり方で、人が生み出せない卓越した成果を生み出していくことこそ、仕事の醍醐味です。
■8 貢献を意識したとき、初めて成果は上がる
貢献に焦点をあわせることによって、自らの専門分野だけでなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。
成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。
自分中心の仕事では、成果を生みません。成果とは外部にあらわれるものであり、組織・お客様への貢献です。貢献の意識を持たない人が、成果を生み出すことはありません。
成果を上げるためには、貢献の意識、つまり何が求められているかという観点から仕事を進めなければいけません。
■9 使命を意識する者が、成長できる
今日でも私は「何によって人に覚えられたいか」を自らに問い続ける。
これは自らの成長を促す問である。なぜならば、自らを異なる人物、そうなりうる人物として見るよう仕向けてくれるからである。
使命観を持って、自分に多くを期待する者が、最大の成長を遂げます。使命観を定義するためには、自分が亡くなったとき、墓石に何と書かれたいかを考えます。
「〇〇の人、ここに眠る」というフレーズに当てはめて、自らの使命を定義してみてください。
■10 上司の強みを、マネジメントせよ
上司をいかにマネジメントするか。実のところ答えはかなり簡単である。
上司の強みを活かすことである。
上司をマネジメントするということは、上司と信頼関係を築くことである。
そのためには、上司の側が、部下が自分の強みに合わせて仕事をし、弱みや限界に
対して防御策を講じてくれるという信頼をもてなければならない。
人が成果を上げるのは、強みによってのみです。上司・部下の関係も、お互いの強みを見出し、強みから卓越した働きをしてもらう配慮が必要です。
強みを中心にするマネジメントこそ、ドラッカーの経営が高い成果を上げられる理由です。
■11 部下の弱みを見る者は、マネージャー失格である
部下の弱みに目を向けることは、間違っているばかりか無責任である。
上司たるものは、組織に対して、部下一人ひとりの強みを可能なかぎり活かす責任がある。
部下に対して、彼らの強みを最大限に生かす責任がある。
上司は、部下を活かす責任を負っています。人を活かすとは、マネジメントにおいて、その人の強みを爆発させ、弱みを中和し補ってあげることで、卓越した成果を生んでもらうことです。
部下の弱みばかりを見ることは、部下を活かせないばかりか、成果も生まれない、最悪の結果を招きます。
■12 成果をあげる最大の条件は、時間である
成果を上げるものは、仕事からスタートしない。時間からスタートする。
計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。
次に、時間を管理すべく、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。
そして最後に得られた自由な時間を大きくまとめる。
ビジネスにおいて、万人に平等に与えられた資源が時間です。過去の時間を記録することは、自分の行動の結果を記録し、改善するためにとても効果的です。
その仕事が成果を生む行動だったのか、生産的な行動に時間を使えているか。定期的に記録し、改善を図ることで、より多くの成果を生み出すことができます。
【リーダーシップを高める ドラッカーの名言12選】
■1 リーダーに求められるのは、人格である
人のマネジメントにかかわる能力、たとえば議長役や面接の能力を学ぶことはできる。
管理体制、昇進制度、報酬制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。
だがそれだけでは十分ではない。スキルの向上や仕事の理解では補うことのできない根本的な資質が必要である。真摯さである。
真摯さとは、人間として誠実で、信頼できるという意味です。ドラッカーは、仕事の能力の高さよりも、まずリーダーが人間として信頼できる人間かどうかを重視しました。
真摯さだけは、リーダーが生来もっていなければならず、後天的に身につけることはできないとしたのです。ドラッカー経営の根本には、人間の幸せがあります。私はこの「真摯さ(integrity)」を、陽明学でいう「知行合一」、論語でいう「徳」と重ね合わせて講義しています。知っていることと、やっていることが一致している人。それが、社員が本気でついていくリーダーです。
中小企業では、社長や幹部の人柄が、そのまま組織の文化になります。大企業なら制度が人をある程度カバーしますが、規模の小さい会社ほど、リーダーの在り方が良くも悪くも全社に伝わります。だからこそ、私は研修で技術より先に、この真摯さを、情熱を込めて腹落ちするまでお伝えしています。リーダーに人としての正しい在り方を求める、それこそが真摯さです。
■2 その人の下で働かせたいと思うかが、判断基準である
組織のリーダーを選ぶには何をみなければならないか。真摯さである。
重要なことは、わが子をその人の下で働かせたいと思うかである。その人が成功すれば若い人が見習う。だから私はわが子がその人のようになってほしいかを考える。
真摯さとは、人間としての誠実さ、よりシンプルに言えば、家族や子供をその人の下で働かせ、その人のようになってもらいたいと思えるかということです。真摯さの無い人をリーダーにすると、組織文化の根底が破壊されます。
有能さではなく、人間として正しい人、誠実な人、信頼できる人が指揮をとる。それがドラッカーの経営です。
■3 リーダーは私情にとらわれず、公正でなくてはならない
CEOは客観的かつ公正でなければならない。超越した存在でなければならず、
好き嫌いどころか、仕事のやり方さえ気にしてはならない。唯一の規律は成果と人物である。
交友とは両立しない。社内に友人を持ち、仕事以外の話をするのでは公正たりえない。
リーダーシップの根底にあるのは、真摯さ、誠実さ、正しさ、公正さ、高潔であることです。少し厳しい言い方ですが、リーダーはその高潔さ・公正さを保つために、メンバーの一部をひいきしないよう、どこにも属さない中立した存在である必要があります。
そのためには、メンバーに人間として敬意を表しつつも、特定の深い付き合いは避けなければなりません。水のような透明さをもって、すべての人に淡く接する必要があります。
■4 リーダーは、メンバーの強みのみを見なくてはいけない
部下の弱みに目を向けることは、間違っているばかりか無責任である。
上司たるものは、組織に対して、部下一人ひとりの強みを可能なかぎり活かす責任がある。
そしてそれ以上に、部下に対して、彼らの強みを最大限に生かす責任がある。
人が成果を上げるのは、強みによってのみです。弱みは強化しても、平凡になれるかどうかも疑わしいものです。リーダーはメンバーを活かし、組織に高い成果を上げる責任を負います。
そのためには、メンバーの持つ弱みではなく、強みを把握し、強みから卓越した成果を上げる存在になってもらう必要があるのです。
■5 リーダーは、人の強みを活かすものである
成果を上げるためには、リーダーは人がもつ最大の強みに焦点を合わせ、その強みの発揮の妨げとならない限り、弱みは関係ないものとして無視しなくてはならない。
重要なことは人を変えることではない。人のもつあらゆる強み、活力、意欲を動員し、そうすることによって全体の能力を増大させることである。
人が成果をあげるのは強みによってのみです。弱みはいくら強化しても、平凡なレベルにさえ到達できないことがあります。リーダーシップとは、人を活かし、組織に高い成果を上げる責任のことです。
その責任を果たすためには、リーダーはメンバーの強みを明確に把握し、強みをもとにした人事を組み、強みから卓越した成果を上げてもらう必要があります。ドラッカー経営は、強みに集中するからこそ、大きな成果が出るのです。
■6 リーダーの役割とは、使命を確立することである
効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。
リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持することである。
メンバーは、リーダーの持つミッション・ビジョンについてきます。ミッションとは組織の存在意義、何のためにこの組織は存在するのかという目的であり、ビジョンとは組織の未来像です。リーダーは、組織のミッション・ビジョンを明確に提示する必要があります。
特にビジョンとは、1年後・3年後・5年後の未来に映し出されたテレビ映像の画面だと思ってください。あなたが組織をどう変えるのか、どのような未来像がメンバーに待っているのか。そのありありとした風景をチームに提示し、チームを鼓舞していくのです。
ビジョン無きリーダーは退屈です。偉大な仕事を成し遂げることはできません。
■7 リーダーは壮大なビジョンを描き、個人の徳を社会の利益にする
社会にとってよいことを企業にとってよいことにするためには、懸命な仕事、優れたマネジメント、高度の責任感、大きなビジョンが必要である。
マネジメントが社会のリーダー的存在であるためには、この原則を行動の原理とし、意識として遵守し、現実に実行していかなければならない。
なぜならば、優れた社会、徳のある社会、永続する社会は、私人の徳を社会の福利の基盤としたときに、実現されるからである。
ドラッカーの経営において、組織とは、個人の強みを社会にとって生産的なものに変える道具にすぎません。リーダーは、個人の強みを発揮させ、高い成果を上げて社会に貢献することについて、メンバーを鼓舞する壮大なビジョンを提示できなければなりません。
リーダーとして、明確なビジョンを提示する必要があるのです。
■8 リーダーシップとは、人の視座を高めることである
重要なのはカリスマ性ではない。リーダーシップとは人を惹きつけることではない。
惹きつけるだけでは扇動者にすぎない。友達をつくり、影響を与えることでもない。
それでは人気取りにすぎない。
リーダーシップとは、人のビジョンを高め、成果の基準を高め、人格を高めることである。
リーダー以上になる組織はありません。リーダーシップの限界が、組織の限界です。リーダーとは、組織の中で一番高い視座をもつものです。山で言えば、山頂にいるのがリーダーです。
リーダーの志・視座は、高くあらねばいけません。その視座をもってメンバーの視座を高め、チームに制約を超えさせ、偉大な仕事を為さしめるのです。
■9 リーダーは、正当性をもたなければならない
いかなる権力も、正当でないかぎり永続しない。いかなる社会といえども、一人ひとりの成員を組み入れない限り機能しない。われわれには二つの道しかない。
社会として機能する産業社会を構築するか、自由が無秩序や圧政のうちに消失するのを座視するかのどちらかである。
ドラッカーの思想の根底にあるのは、人間として何が正しいかという正当性です。リーダーとは、正しいことを為すものなのです。
人の強みを活かし、高い成果を上げて社会に貢献するという正当性、個人の強みを社会にとって有益なものに転換するという組織の正当性をもたなければ、組織には存在意義がないことになります。
■10 リーダーシップとは、正しい意思決定のことである
やがて妥協が必要になるからこそ、何が受け入れられやすいかではなく、何が正しいかを考えなければならない。そもそも、何が正しいかを知らずして、正しい妥協と間違った妥協を見分けることはできない。
その結果、間違った妥協をしてしまう。
経営・マネジメントとは、意思決定のことです。意思決定の根本にあるのは、誰が正しいかではなく、何が人として正しいかということです。妥協から意思決定に入ってはなりません。
最終的に妥協することになったとしても、リーダーはその正当性・正しさを徹底して熟慮しなければなりません。
■11 これからのリーダーは、変化を活かすチェンジリーダーになれ
今日のような乱気流の時代にあっては、変化が常態である。変化はリスクに満ち、悪戦苦闘を強いられる。
だが、変化の先頭に立たない限り、生き残ることはできない。変化を脅威ではなく、チャンスとして捉えるリーダーでなくてはならない。
マネジメント・経営とは、変化にいかに適応するかということです。変化をマネジメントするためには、変化の先頭に立ち、自らも変化を推進するエネルギーにならなければなりません。
自ら変革を先導するリーダーを、チェンジリーダーといいます。経営リーダーは、変革の先頭に立つチェンジリーダーでなくてはいけないのです。
■12 責任とは、外部に対するものであると同時に、内部に対するものである
リーダーの責任とは、外部に対するものであって、かつ内部に対するものである。
外部に対しては成果に対する責任を持つことであり、内部に対しては成果を上げるために全力を傾けることである。
働く者としての責任とは、成果をあげることに責任をおうだけでなく、成果を上げる上で必要なすべてを行い、それらの成果に全力を傾けることである。
組織の成果は、市場・顧客という外部にあります。リーダーは、組織が外部志向になるよう常に意識しなければいけません。また内部に関しては、強みを見出し、強みを外部の成果に結びつけられるような布陣をする必要があります。
リーダーの役割は、変転する市場と顧客に合わせて、社内を常に作り変えていくことです。
【イノベーションを起こす ドラッカーの名言12選】
■1 未来をつくるためには、勇気が必要である
未来に何かを起こすには、勇気を必要とする。努力を必要とする。信念を必要とする。
その場しのぎの仕事に身をまかせていたのでは、未来はつくれない。
未来にかかわるビジョンのうち必ず失敗するものは、確実なもの、リスクのないもの、
失敗しようのないものである。
経営とは、人・モノ・お金を、未来という不確実なものに対して投資していくことです。経営自体がリスクを伴う行為であり、経営からリスクを取り除くことはできません。できることは、イノベーションの機会を十分に考察し、正しいリスクをより多くとっていくことです。
同様に、イノベーションも未来に対しての行動です。詳細な分析・検討をした後は、最後は経営者の勇気の問題になります。
ドラッカーは言います。「イノベーションとは、畢竟、勇気のことである」と。
■2 イノベーションと起業家精神を、日常としなければならない
今やイノベーションと起業家精神が、組織、経済、社会における生命活動とならなければならない。
あらゆる組織がイノベーションと起業家精神をもって、正常にして継続的な日々の活動としなければいけない。
市場・経済は、絶えず変わり続けています。組織の中だけが変わらないことは許されません。組織が変わらないとしたら、それは組織が停滞しているということです。
組織は、顧客を理解するというマーケティング活動とともに、常に市場・顧客に合わせて自己を変革し続けるというイノベーション活動を行う必要があります。
またイノベーション活動とともに、ゼロからビジネスを立ち上げ、市場に挑戦し続けるという起業家精神は、ドラッカーが経営で最も大切にしたものです。
■3 組織は、みずからがチェンジ・エージェントとならねばならない
組織が生き残り成功するには、自らがチェンジ・エージェント、すなわち変革機関とならなければならない。
変化をマネジメントする最善の方法は、自ら変化をつくり出すことである。
チェンジ・エージェントたるための要点は、組織全体の姿勢を変えることである。
全員が、変化を脅威でなくチャンスとしてとらえることである。
変化してやまない顧客・市場に対応するためには、変化を後追いするのではなく、自らが変化の先頭に立つチェンジリーダーとならねばなりません。
変化の中に、事業機会が生まれます。組織の全メンバーが、変化を脅威でなく機会としてとらえる変革リーダーに進化する必要があります。そのためには、イノベーションの原理を組織として取り入れ、学ぶ必要があります。
■4 イノベーションでは、まず廃棄からスタートせよ
イノベーションに優れた企業は、古いもの、陳腐化したもの、もはや生産的でないものを
組織的に廃棄する仕組みをつくっている。
優れた企業は、ほぼ3年ごとにすべての製品・プロセス・技術・サービス・市場を死刑の
裁判にかける。この製品やサービスを手がけていなかったらなお始めるかと問い、答えがノーであるならば、検討しようとは言わずに、どう手をひくべきかを問う。
イノベーションを起こすためには、まず組織の中で旧弊化したもの、陳腐化したものを廃棄する必要があります。陳腐化したものを廃棄して初めて、新たなことを行う空間が生まれます。
組織の仕事は、常に増大する傾向にあります。定期的に廃棄する会議(廃棄会議)を開き、一定量を常に捨てる仕組み、すなわち体系的廃棄の仕組みを導入する必要があります。
■5 既存の事業とイノベーションの違いとは
既存の事業について発すべき問いは「この活動は必要か。なくてもすむか」である。答えが必要であるならば、次に発すべき問いは「必要最低限の支援はどれだけか」である。
これに対し、イノベーションについて発すべき第一の問いは「これは正しい機会か」である。
第二の問いは「注ぎ込むことのできる最大限の優れた人材と資源はどれだけあるか」である。
イノベーションの第一目標は、廃棄、すなわち古くなったものを捨てることです。そしてできた新たな余裕に、イノベーションを起こしていきます。またイノベーションには最優秀な人材を登用せよ、とドラッカーは言います。
事業の未来をつくる最大の機会となるイノベーションには、最優秀な人材を登用し、トップを目指すからこそ、困難なイノベーションも成し遂げられ、新たな機会を増幅することができるのです。
■6 イノベーションには、最優秀な人材を割り当てよ
第一級の人材は、最も大きな機会、最も大きな見返りのある領域に割り当てなければならない。そして第一級の機会に対しては、卓越した才能と実績をもつ人材を割り当てなければならない。
イノベーションの機会には、最優秀人材を登用していきます。ドラッカーはこの人材配置に、強制人材配置法を定義しています。
一番の機会と一番優秀な人を並べていき、強制的にイノベーションを担当してもらう制度です。御社では、イノベーション担当に最優秀な人材を抜擢しているでしょうか。
■7 イノベーション・新事業は、既存事業から独立させる
新事業は、既存の事業から分離して組織しなければならない。起業家的な新事業を既存の組織に行わせるならば、失敗は目に見えている。
イノベーションは時に、既存事業と対立することがあります。新商品の売上は、既存商品の売上を喰い合うというカニバリズムを生じさせます。
そのため、既存事業とともに担当させたのであれば、イノベーション活動が滞ってしまいます。イノベーションを進めるためには、最優秀な人材を社長直轄で、独立部門として担当させる必要があります。
■8 製品・市場・流通チャネルの3領域に、イノベーションを起こせる
いかなる企業にも、3種類のイノベーションがある。製品とサービスにおけるイノベーション、市場、消費者の行動や価値観におけるイノベーション、製品を市場にもっていくまでの流通におけるイノベーションである。
イノベーションの起きる3つの領域は、製品・市場(顧客)・流通です。この中でも流通のイノベーション、特にITを利用した流通イノベーションの変化には、企業は敏感になる必要があります。
アマゾンができた当初、多くの書店が「本をネットで買う人はいない」と笑いましたが、あっという間に本屋や出版取次が淘汰されてしまったのは、周知のとおりです。流通のイノベーションと、それが自社に与える変化については、特に深く考察してください。
■9 予期せぬ成功に注意し、事業機会を追求せよ
予期せぬ成功は、体系的に探究しなければならない。まず行うべきは、予期せぬ成功が必ず目にとまる仕組み、注意を引く仕組みをつくることである。
マネジメントが手にし検討すべき情報のなかに、適切に位置づけることである。
予期せぬ成功に注目せよ、とドラッカーは強調します。予期せぬ成功や、これまでになかった問い合わせは、企業が気づいていない、すでにある市場・事業機会の存在を教えてくれます。
以前、私の経営者セミナーに、大学3年生の参加が増えたことがありました。予期せぬ成功、変なお客様は徹底して分析するというドラッカーのやり方で、大学生に質問したところ、経営の神様ドラッカーを学ぶと就活に有利になると思って来られたとのことでした。
就活生のためのドラッカーセミナーという、私が気づいていない、すでにある市場の存在を教えてくれたのです。予期せぬ成功、変な問い合わせは、全社で情報共有し、情報が上がってくる仕組みとする必要があります。
■10 問題よりも機会に注目し、機会を検討する仕組みを創る
ちょっとした工夫でよい、問題を列挙したこれまでの月例報告の第一ページの前に、新しい第一ページを加える。
売上にせよ利益にせよ、予想以上に成果のあがったことを列挙する。そして問題の検討に投じていたのと同じだけの時間を、新しい機会の検討に割く。
利益・売上を創り出すのは機会です。問題はいくら解決しても、これまでと同じ風景が戻るにすぎません。リーダーは、会議や経営方針発表会などで、問題を羅列する代わりに、まず事業機会にメンバーの視点を向ける必要があります。問題よりも機会を見る姿勢こそが、新たな事業機会・売上・利益を生み出します。
会議の冒頭・書類の冒頭に、機会についてのページを加える必要があります。
■11 すでに起きた変化を捉え、利用する
一般的にはイノベーションが変化をつくり出すと考えられている。しかしそうであることは稀である。
成功するイノベーションは、すでに起こった変化を利用する。変化そのものと、それが知覚され、受容されるまでのタイムラグを利用する。
未来は予測することができません。ドラッカーは言います。「まだ市場に影響が表れていない、社会が気づいていない、すでに起きた未来(変化)を活用せよ」と。
すでに起きた変化が市場に大きな影響を表すまでの間に、事業化し、事業機会をつくり出すことが、イノベーションの最も確実な戦略になります。
■12 人口構造の変化を、利用せよ
人口構造の変化そのものは、予測が不可能かもしれない。しかし、すでに起こった人口構造の変化が現実の社会に影響をもたらすには、リードタイムがある。予測可能なリードタイムがある。
経営戦略において、人口構造を考えている企業は多くありません。しかし、たとえば今、子供が年間90万人ほどしか生まれていないとしたら、20年後の労働人口がそれ以上に増えることはありません。このように、人口構造は未来に必ず影響を及ぼす、すでにわかっている未来です。
人口構造の影響を捉え、事業機会や採用・雇用戦略に取り入れることは、経営戦略の立案にあたって必ず行わなければなりません。それは、必ず影響を及ぼす確実な未来だからです。
【マーケティングを成功させる ドラッカーの名言12選】
■1 事業の目的は、顧客を創造することである(顧客創造の経営)
企業の目的は、それぞれ企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。
したがって、事業の目的として有効な定義は一つしかない。顧客の創造である。
組織は、単独では存在し得ません。売上・利益は、顧客のいる組織の外にあります。組織の中にあるものは、コスト・努力のみです。組織は、外部への貢献をもって初めて存在することができるのです。
ドラッカーの経営では、市場・顧客への価値を創造していくこと、すなわち顧客創造の経営をもって、組織は社会へ貢献していきます。
■2 事業にとって最重要なのは、顧客にとっての価値である
企業が自ら生み出していると考えるものが、重要なのではない。
顧客が買っていると考えるもの、価値を考えるものが重要である。
それらのものが、事業が何であり、何を生み出すかを規定し、事業が成功するか否かを決定する。
事業とは、顧客が価値と考えているものに、自社の強みを使って貢献していくことです。顧客の価値に対する貢献なしには、組織が存在することはできません。
顧客の側から見た価値を追求し、自社の強みをマッチさせていくことが重要になります。
■3 顧客を想像してはならない、顧客に直接聴かなければならない
顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。したがって顧客に聴き、顧客を見、顧客の行動を理解して初めて、顧客とは誰であり、何を行い、いかに買い、何を期待し、何に価値を見いだしているかを知ることができる。
事業の最高のコンサルタントは、お客様です。事業を良くしようとするときに、最良のアドバイスをくれるのは顧客なのです。顧客を真摯に観察し、聴き、顧客の価値を向上していくことこそが、事業を改善していく最大のポイントです。
マーケティングを一言で言えば、顧客を理解し抜くこと、顧客が価値とするものを理解し抜くことです。
■4 競合相手は、同業種にとどまらない
顧客が買うものは満足であるという事実から、あらゆる製品とサービスが突然、まったく異なる生産、流通、販売のされ方をしている他産業の製品やサービスと競争関係におかれる。
マクドナルドの競合は、ロッテリアやモスバーガーだけではありません。顧客が打ち合わせをしたい場合であれば、喫茶店やファミレスも競合と言えます。競合は、同業種にとどまりません。
顧客の価値から考え抜いたとき、競合とは、顧客が御社を使わないとしたら出てくる代替案のすべてだといえます。
■5 不合理な顧客はいない
顧客は合理的である。不合理であると考えるのは危険である。顧客の合理性がメーカーの合理性と同じであると考えたり、同じでなければならないと考えると同じように危険である。
一見不合理に見えても顧客の利益になっているものに代えて、メーカーが合理的と考えるものを押し付けようとするならば、必ず顧客を失う。
顧客は常に、自分にとって利益になるように合理的な行動をします。もし顧客との取引で、顧客が不合理な、企業には理解できない行動をしているとしたら、その行動は、企業が気づいていない顧客にとっての真実を教えてくれるのです。
■6 非顧客に、注目せよ
最も重要な情報は、顧客ではなくノンカスタマー(非顧客)についてのものである。
変化が起こるのは、ノンカスタマーの世界においてである。
いかなる事業にあろうとも、責任ある立場の者は、多くの時間を社外で過ごさなければならない。
非顧客を知ることは至難である。だが外に出て非顧客を知ることだけが、知識の幅を広げる唯一の鍵である。
既存顧客を見ているだけでは没落する、とドラッカーは言います。昔、デパートは既存顧客の中年女性だけを見て手厚くサービスをしていたために、その中年女性が働きに出るようになり、デパートの開店時間に行けなくなって、大きく売上を落としました。そのとき、パルコやルミネなどが、その時点での非顧客であった女子高生・女子大生などに焦点をあて、売上を回復させました。
企業は現顧客だけではなく、非顧客(現在、御社のサービスを利用してもいいのに、なぜか利用していないお客様)を常に見ていく必要があるのです。
■7 マーケティングとは、経営全体のことである
マーケティングは、販売よりもはるかに大きな活動である。
それは専門家されるべき活動ではなく、全事業にかかわる活動である。
マーケティングとは、顧客の視点から見た、顧客への価値を高める企業活動のすべてをいいます。それは、事業全体といってもいいものです。また、全社を上げて活動する必要のあるものです。
マーケティングという言葉の定義を組織全体が理解し、組織を上げて実践していく必要があります。
■8 マーケティングの究極の目的は、セールスを不要にすることである
販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん。補い合う部分さえない。
何らかの販売は必要である。だがマーケティングの理想は、販売を不要にすることである。
マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
販売とは、自社視点でモノを顧客に売り込む行為です。これに対してマーケティングとは、顧客を理解し、顧客の視点から見て、売れる仕組みをつくり、価値を向上していく取り組みをいいます。
両者の視点は、まったく逆なのです。顧客を理解し抜くというマーケティングの仕組みができたときには、顧客のほうから買ってくれるようになります。したがって、販売にかかるエネルギーは非常に軽いものになります。
■9 マーケティングとは、顧客からスタートすることである
マーケティングは、顧客から出発する。すなわち人間、現実、欲求、価値から出発する。
「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。
マーケティングとは、顧客を理解し抜くこと、そして事業のすべてを顧客の視点で捉えることです。
自社が売りたい製品からではなく、顧客の課題・悩みからアプローチしたときに、顧客にとって真に価値のある製品・サービスが見えてくる。それこそが、マーケティングの本質です。
■10 顧客が価値とするものが、最重要である
最もむずかしい問題を解決しなければならない。それは、「顧客にとって価値のあるものとは何か」「顧客は何を求めて製品を買うのか」という問題に解答を見出すことである。
ドリルを買う顧客は、ドリルが欲しいのではなく、壁に穴を空けてカレンダーをかけたいのかもしれません。この場合、壁に穴を空けなくてもカレンダーを貼れるものがあれば、顧客の課題は解決します。
顧客が買うものは製品ではなく、製品を通して得ることのできる便益(ベネフィット)です。組織が顧客に対するサービスを考えるときには、顧客が本当に買っているものは何かを考え抜く必要があります。
■11 製品やサービスを一番知っているのは、企業ではなく顧客である
最大の危険は、製品やサービスが何であり、何であるべきかであり、いかに買われ、
いかに使われるかについて、顧客以上に知っていると過信することにある。
予期せぬ成功を不快とせず、機会として見なければならない。
事業の目的は顧客を変えることではない。顧客を満足させることにある。
設立まもないベンチャーに特有の病が、市場志向の欠如である。
顧客が、製品をメーカーの定めた使い方以外に役立てている場合があります。顧客は製品が欲しいのではなく、顧客にとっての課題を解決するために製品を使うからです。予期せぬ使い方、予期せぬ顧客からの問い合わせは、組織が注目して取り入れる必要があります。
それは、企業が気づいていない市場の真実、市場の機会を教えてくれるからです。市場が価値とするものへ、自社の強みをもって貢献することこそ、ビジネスの本質です。
■12 商品よりも、顧客に関心を持つのがマーケティングである
多くの企業が、自社の商品とサービスには多大な関心を持っている。
しかし顧客に関心を持っている企業は、あまりにも少ない。(コトラーの言葉)
自社の製品ばかり売りつけてくる営業マンと、顧客に興味を持って、顧客の課題解決に真剣に悩む営業マン。どちらが顧客に支持されるでしょうか。
顧客が選ぶのは、自社の商品・サービスの視点ばかりで勧めてくる営業マンではなく、顧客の悩み・課題から解決策を提案してくれるマーケターなのです。マーケティングとは、自社視点ではなく、顧客視点でスタートすることなのです。
まとめ ― ドラッカーの名言は、すべて「人を活かす経営」でつながっている
本記事では、ドラッカーの名言を5つのテーマ別に、合計60個まとめて解説しました。最後に、全体の要点を振り返っておきましょう。
- マネジメント ― マネジメントとは権力ではなく、人を活かす責任である。人の強みを爆発させ、弱みを中和し、凡人が非凡な働きをできる組織をつくる。
- 成果(生産性) ― 成果は才能ではなく、身につけられる技術であり習慣である。強みに集中し、貢献を意識し、時間を管理することで、誰でも成果を上げられる。
- リーダーシップ ― リーダーに求められる根本の資質は、真摯さである。使命を確立し、人の視座を高め、変化の先頭に立つチェンジリーダーとなる。
- イノベーション ― まず古いものを廃棄し、予期せぬ成功やすでに起きた変化を機会として捉える。イノベーションには最優秀の人材を割り当てる。
- マーケティング ― 事業の目的は顧客の創造である。自社視点ではなく顧客視点からスタートし、顧客が価値とするものを理解し抜く。
5つのテーマは、バラバラに見えて、実は一本の背骨でつながっています。それは「人を活かす経営」という考え方です。組織は人でできており、人が強みを発揮して初めて、成果もイノベーションもマーケティングも動き出します。そしてその人を活かす要となるのが、真摯さを備えたリーダー、すなわち経営者であり管理職です。
気になった名言があれば、まずは一つ、明日からの経営や現場のマネジメントに取り入れてみてください。ドラッカーの言葉は、読むためではなく、実践するためにあります。
ドラッカーの名言に関するよくある質問(FAQ)
Q1. ドラッカーの名言は、どのテーマから読むのがおすすめですか?
ご自身が今いちばん悩んでいるテーマから読むのがおすすめです。組織運営に迷っているなら「マネジメント」、自分や部下の生産性を上げたいなら「成果」、部下の育て方に悩むなら「リーダーシップ」、新しい事業や変化への対応なら「イノベーション」、売上や顧客の課題なら「マーケティング」から。どのテーマも独立して読めるよう、各12個ずつ整理しています。
Q2. これらの名言の出典(どの本の言葉か)は分かりますか?
はい。本記事では、すべての名言に出典となる書籍名を明記しています。主な出典は『マネジメント』『経営者の条件』『創造する経営者』『イノベーションと企業家精神』『現代の経営』『明日を支配するもの』などです。各名言のすぐ下にある出典リンクから、書籍を確認いただけます。
Q3. ドラッカーの名言は、中小企業にも役立ちますか?
役立ちます。ドラッカーの原理原則は、企業の規模を問わず通用するものです。むしろ、一人ひとりの役割が大きい中小企業だからこそ、「人の強みを活かす」「顧客からスタートする」といった考え方が、そのまま成果に直結します。大切なのは、名言を知識として知ることではなく、自社の現場で実践できる形に落とし込むことです。
Q4. 「マネジメント」と「リーダーシップ」の名言は、何が違うのですか?
ざっくり言えば、マネジメントは「人の強みを成果に結びつける仕組み・責任」に関する言葉が中心で、リーダーシップは「その人自身の在り方(真摯さ)や、組織の使命・ビジョンの確立」に関する言葉が中心です。ドラッカーにおいて両者は対立するものではなく、真摯さを備えたリーダーが、人を活かすマネジメントを実践する、という一つの流れとしてつながっています。
Q5. 名言を学んだあと、経営や現場で最初に何をすればよいですか?
まずは「強みに注目する」ことから始めるのがおすすめです。自分自身や部下について、弱みではなく強みを一つ書き出してみる。そして、その強みが最も活きる仕事は何かを考えてみる。ドラッカーの多くの名言は、この「強みへの集中」という一点に集約されていきます。小さな一歩ですが、ここから組織の景色は少しずつ変わっていきます。
Q6. ドラッカーの名言は、英語の原文でも知りたいのですが?
本記事の冒頭「まず押さえたい ドラッカーの有名な名言10選」で、代表的な名言を英語の原文とあわせて紹介しています。「Management is doing things right; leadership is doing the right things.」のように、短く覚えやすいものを中心に選びました。会議での引用や、経営理念・行動指針の言葉づくりにもお使いいただけます。
Q7. 中小企業ですが、名言をどう実際の経営に落とし込めばよいですか?
名言はあくまで入り口です。大切なのは、自社の規模や状況に合わせて「仕組み」に変えることです。私(村瀬)は、難解なドラッカー理論を、中小企業がそのまま現場で使える「人を活かす経営7つの原則」という形に体系化してきました。大企業のように人も資金も潤沢ではない中小企業だからこそ、今いる社員の強みを結びつけ、最大の成果を出す。導入企業257社以上、受講者延べ1,520名以上の現場で磨いてきた実践知です。もし自社への落とし込みでお悩みでしたら、セミナー・研修のご案内もご覧ください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
もし、自社の経営や組織にドラッカーをどう活かせばよいか、少しでもお悩みでしたら、ここから先もぜひ読んでみてください。ドラッカーに関心をお持ちの経営者・管理職の方への、補足のご案内です。
なぜ、一般的なドラッカーの学び方では組織が変わらないのか
ここまでの「強みを見る視点への切り替え」は、今日からでも実践できます。
ただ、正直にお伝えすると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは、なかなか続きません。
これも、多くの経営者が同じ壁にぶつかるところなんです。
変化のゆるやかだった時代なら、管理職は決められたことを「管理」するだけで十分でした。
けれど、変化の速い今は違います。求められているのは、
経営者であるあなたと視点を合わせ、現場を一丸にして、自ら組織に変化を生み出す「チェンジリーダー」です。
「管理」の技術だけでは、組織は根っこから変わりません。
根本の答えはドラッカーにある。でも“普通のドラッカー”では実践できない
生産性、部下育成、理念の浸透、組織の元気――。
こうした悩みの根っこを解くヒントは、実はそのすべてが、ドラッカーの原理原則の中にあります。
だからこそ、目先の技術を教える一般的な研修ではなく、ドラッカーの本質を学ぶ研修が必要なのです。
とはいえ、ここで多くの方がつまずきます。ドラッカーの原著は、分厚くて、正直とても難しい。
言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは、「難しかった」で終わってしまい、
中小企業の現場ではそのまま使えないのです。
中小企業が“すぐ実践できる”村瀬式ドラッカー7つの原則
そこで私は、この難しいドラッカーの理論を、
中小企業がそのまま現場で使える形に絞り込んで体系化しました。
それが「人を活かす経営 7つの原則」です。おかげさまで257社以上に導入いただき、
産業能率大学出版部から出した書籍も7刷を重ねています。
いちばんの特長は、一度きりの研修で終わらせず、すぐに実践でき、
「仕組み」として組織に定着すること。
マーケティング、イノベーション、成果、学習、リーダーシップ、使命、人を活かすマネジメント。
この7つを順に根づかせていくと、管理職の一人ひとりが、自然とチェンジリーダーへと育っていきます。
| 観点 | 一般的な管理職研修 | 村瀬式ドラッカー7つの原則研修 |
|---|---|---|
| 育てる人材 | 組織を管理する管理職 | 組織に変化を生むチェンジリーダー |
| 分かりやすさ | ドラッカーは難解で実践しにくい | 中小企業が実践できる、一番わかりやすい形に体系化 |
| 定着 | 一過性で終わりがち | すぐ実践でき、仕組みとして組織に定着 |
| 伝え方 | 知識を頭で理解させる | 情熱を込め、心から腹落ちさせる |
| 実績 | ― | 導入257社以上/受講1,520名以上 |
情熱が、組織に火をつける
多くの研修は、知識を頭で理解させて終わります。
でも私は、ドラッカーが込めた情熱そのままに、心から「腹落ち」していただくことを、何より大切にしています。
その熱量は、YouTubeの講義動画を見ていただければ、きっと伝わるはずです。
これまで受講された社長さんや管理職の方から、
「社長魂に火がついた」「他のセミナーにはない、魂からの感動があった」といった声を、数えきれないほどいただいてきました。
理屈で終わらせない。心を動かす。だからこそ、研修のあとに行動が変わり、組織に火がつくのです。
学びが実践に変われば、組織そのものが変わっていく
一人の管理職が変われば、そのチームが変わります。チームが変われば、次の幹部候補が育つ。
そうやって、組織全体が確実に変わっていきます。
これが、一般的なドラッカー研修と、村瀬式ドラッカー「7つの原則」研修との、決定的な違いです。
「まずは本を読んでから」という経営者の方も、たくさんいらっしゃいます。
産業能率大学出版部『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(7刷)も、どうぞ手に取ってみてください。
そのうえで、貴社の経営や組織づくりのお悩みに合わせたご相談も、いつでもお受けしています。
大丈夫です。一緒に、その一歩を考えていきましょう。まずはお気軽にお問い合わせください。















