前回、経営者は売上、利益よりも顧客への価値向上へ組織を集中させる必要があると言いました。

私は、価値向上会議の開催をお薦めしています。

価値向上会議とは非常にシンプルな会議です。

月に一度、メンバーが集まり顧客への提供価値がどれだけ向上したかについて話し合います。

リーダーはこのように質問をして下さい。

「あなたのお客様への提供価値は、先月と比べてどれだけ向上しましたか?」

リーダーは正しい質問によって組織を正しい行動に質問させます。

顧客への提供価値について毎回質問し続けることで、メンバーは日々、顧客への提供価値について考えるようになります。

会議という形式のみならず。一週間に一回、2日に一回問いかけても素晴らしい質問です。

昨日と比べて、今日のあなたの顧客への提供価値はどのように向上しましたか?と

顧客からの視点で、顧客への提供価値の向上に弛まぬ努力を払う社員を「マーケター」と言います。

もし組織のメンバー全員が日々顧客への提供価値の向上に邁進したら、そして価値が無限に向上し続けていったとしたら、その組織はどれだけ強力でしょうか。

売上・利益は顧客への提供価値の裏返しです。

顧客への提供価値が上がっているのに、売上・利益が下がった企業はありません。

是非顧客への価値向上会議を開き、組織全体として集中してみて下さい。

日本のドラッカーと言われる一倉定先生は、以下のような至言を残しています。

「事業の業績が上がらないのは、お客様を忘れたことが原因である。」

そして、ドラッカーは言います。

経営の第一目標はマーケティングである。

マーケティングとは顧客からスタートすることである。

是非、全社をあげて、顧客からスタートし、顧客への提供価値の向上につとめていきましょう。

【動画】 顧客への価値向上に組織を集中させる。【ドラッカー・経営セミナー】

■現場のアクションプラン

【1】リーダーが「正しい質問」を毎回投げかける

「先月と比べて、お客様への提供価値はどれだけ上がったか」。この一つの問いを、会議のたびに、繰り返し投げる。人は問われたことを考えます。良い質問こそが、組織を良い行動へと動かします。

【2】問いかけの頻度を上げる

会議は月に一度でも、問いかけは毎日できます。「今日、お客様への価値はどう上がった?」を朝礼や声かけで。頻度が上がるほど、社員の頭の中に、お客様が住み着いていきます。

【3】答えを責めず、考え続けさせる

最初は「特にありません」という答えでもかまいません。責めずに、また明日問いかける。問い続けられることで、社員は自然とお客様のために工夫を探すようになります。

■成果につながる方法とそうでない方法

成果につながる方法 成果につながらない方法
正しい問いを繰り返し投げかける 指示・命令で動かそうとする
お客様への価値を問いの中心に置く 「なぜ数字が届かない」ばかりを問う
問いかけの頻度を高める 年に数回思い出したように問う
答えを責めず考え続けさせる 答えられないと叱って終わる
全員でお客様の視点を共有する お客様のことを一部の人に任せる

■経営者へのメッセージ

リーダーの仕事は、命令することだと思われがちです。けれど、本当に組織を動かすのは、命令ではなく、問いかけかもしれません。人は、命じられたことには渋々従いますが、問われたことは、自分の頭で考え始めるからです。

「先月より、お客様への価値はどれだけ上がったか」。この問いを、あなたが根気よく投げ続ける。それだけで、社員の目は少しずつお客様のほうを向いていきます。派手さはありませんが、これほど確かな組織づくりの方法を、私は他に知りません。

大切なのは、答えを急がないことです。最初は答えに詰まる社員もいるでしょう。それでいいのです。問われ続けるうちに、人は必ず考え始めます。今日答えられなくても、明日のために工夫を探すようになります。

一倉定先生の言葉のとおり、業績が上がらないのは、お客様を忘れたときです。ならば、忘れさせない一番の方法は、問い続けること。今日から、たった一つの問いを、あなたの口ぐせにしてみてください。

■参考にしたい価値向上と質問に関する名言

「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。」
── ピーター・ドラッカー『経営者の条件』

「企業の目的は顧客の創造である。」
── ピーター・ドラッカー『現代の経営』

「われわれの顧客は誰か。この問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、最も重要な問いである。」
── ピーター・ドラッカー『マネジメント』

「答えを教えるのではなく、考えさせることが人を育てる。」
── 松下幸之助

■クライアントの実践事例

私のお客様の、食品加工業F社(社員45名)の工場長さんは、朝礼で「今月の目標数量」を読み上げるのが日課でした。数字は伝わっても、社員の表情は変わらない。「言われたことはやるが、それ以上は動かない」と、こぼしておられました。

そこで私は、朝礼の締めに、たった一つの問いを足してみませんかと提案しました。「昨日と比べて、今日、お客様への価値をどう上げられるか」。命令ではなく、問いかけです。最初の一週間、社員はぽかんとしていたそうです。

ところが、工場長さんが毎朝あきらめずに問い続けたところ、少しずつ変化が現れました。ある社員が「箱詰めの向きを揃えたら、開けたお客様が見やすいと思う」と口にした。小さな一言でしたが、それをきっかけに、現場から工夫の声が上がるようになったのです。

半年後、F社ではクレームが目に見えて減り、取引先から「箱を開けた瞬間が違う」と褒められるようになりました。工場長さんは言います。「命令をやめて、問いかけに変えただけです」と。

■価値向上会議に関してよくある質問と実践へのアドバイス

Q. 問いかけても、社員から答えが返ってきません。

A. 最初はそれが普通です。大切なのは、責めずに問い続けること。今日答えられなくても、社員は「明日は何か答えたい」と考え始めます。答えの量ではなく、問い続ける粘りが人を変えます。

Q. 価値向上会議と、普段の業務会議はどう使い分ければよいですか。

A. 業務会議は「やること」を確認する場、価値向上会議は「お客様への価値」を考える場です。混ぜると価値の話が数字に飲み込まれます。短くても、価値だけを話す独立した時間を持ってください。

Q. リーダー自身が、良い問いを思いつけません。

A. 難しく考えなくて大丈夫です。「先月より、お客様への価値はどれだけ上がったか」。この一つを繰り返すだけで十分です。凝った質問より、同じ良い問いを投げ続けることのほうが、はるかに効きます。

Q. どれくらいの頻度で問いかけるのが良いのでしょうか。

A. 会議は月に一度でも、問いかけは毎日できます。むしろ頻度が高いほど効果的です。二日に一度、可能なら毎朝。頻度が上がるほど、社員の頭の中にお客様が住み着いていきます。

なぜ、今の管理職研修だけでは組織は変わらないのか

ここまでお伝えしてきた考え方や実践法は、確かに組織を変える力を持っています。ただ、正直に申し上げると、個人の工夫や一度きりの研修だけでは長続きしないことも多いのです。担当者が代われば元に戻り、忙しくなればまた元のやり方に引き戻される。そんな会社を、私は数多く見てきました。

変化の遅い時代は、決められたことを回す「管理する管理職」でよかった。しかし今、求められているのは、経営者と視点を合わせ、一丸となって組織に変化を生み出すチェンジリーダーです。生産性、部下育成、理念の浸透——管理職が抱える課題の根本を解くヒントは、すべてドラッカーにあります。だからこそ、普通の管理職研修ではなく、ドラッカーを学ぶ研修が必要なのです。

難解なドラッカー理論を、中小企業がすぐ実践できる「仕組み」に

とはいえ、ドラッカーは難解です。言葉を抽象的に学ぶだけの研修やセミナーは「難しいだけ」で終わり、中小企業の現場では使えないことがほとんどです。

そこで村瀬弘介は、ドラッカーの理論を、中小企業がそのまま実践できる形に体系化しました。それが「村瀬式・ドラッカー7つの原則」です。導入企業は257社以上、土台となる書籍(産業能率大学出版部)は7刷のロングセラーになっています。

「分かる」だけでなく「腹落ちする」研修

知識を詰め込むだけの研修とは違います。受講した社長・管理職の方が、その場で自社の課題に置き換え、「明日、これをやろう」と動き出す。情熱と感動を伴い、心から腹落ちする——それが村瀬式の研修です。これまでの受講実績は1,520名以上。「社長の魂に火がつく」と言っていただくことも少なくありません。

管理職が育てば、組織そのものが変わっていく

一人の管理職が変われば、チームが変わります。チームが変われば、次世代の幹部が育ちます。そして組織全体が、自ら成果を生み出す集団へと変わっていく。管理職研修・社員教育は、その変化の連鎖の起点です。


ドラッカー7つの原則研修

ドラッカーの原理原則を組織に導入し、成果に集中する強い組織をつくる。それが、村瀬式・ドラッカーの管理職研修です。対象は経営者・経営幹部・上級管理職・マネージャー。社長の判断軸づくり、経営チームの育成、管理職のリーダーシップ向上を、コンサルティングと研修を組み合わせて実現します。

貴社の管理職研修・人材育成の課題に合わせたご相談も承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。研修の詳細はこちらのページをご覧ください。

ブログ執筆者:ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

中小企業向けに、難解なドラッカー理論を「そのまま実践できる仕組み」へと体系化した「村瀬式・ドラッカー 人を活かす経営7つの原則」を提唱。導入企業257社以上、受講者1,520名以上。全国の商工会議所・経営者団体などでのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。著書『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則』(産業能率大学出版部)は7刷を重ねるロングセラー。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」と支持する経営者が後を絶たない。

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